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夜は短し歩けよ乙女
カテゴリ: 森見登美彦 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

社長さんに言われました。「君、いったいどれくらい飲むの」
私はむんと胸を張ります。「そこにお酒のあるかぎり」


第六十二回。
森見登美彦の『夜は短し歩けよ乙女』
山本周五郎賞受賞作品。

今週は森見登美彦フェアだ(笑)
『太陽の塔』も読み直したし。

小説を読む、ということは現実逃避だ、と私は思う。
言い方を変えれば、現実とは違う物語の世界に浸るということだ。
まあ、読んだ結果何物かを得ることもあるだろうが、それは結果論だろう。
何かを得るために小説を読む、なんてのは無粋というものだろう。
何かのために読むのではなく、読むこと自体が目的なのだ。
異論反論はあるだろうが、あくまで私の考え、ということで。

さて、そういう意味でいえば、この作品は最上級の現実逃避を提供してくれた。
読み終えたのは就寝前の時間だったのだが、何故自分が翌日出勤しなければならないのかが心底わからなくなっていた(笑)
この上質の物語を読み終わってしまったことが悲しすぎて、今すぐ京都に行き、先輩になって黒髪の乙女を追いかけまわしたい。
もしくは黒髪の乙女になって鯉のぬいぐるみを背負って、むんと胸を張ってずんずんと歩きたい。
それが無理ならせめてもう一度大学生をやり直したい。
と、まあそんな感じだった。

前置きが長くなったが、つまり一言でいえば、『夜は短し歩けよ乙女』は無茶苦茶面白い小説だ、ということだ。

内容についていえば、冴えない大学生の先輩が、可憐な黒髪の乙女(不思議ちゃん)に恋をして追い回す、という、まあいつもの森見登美彦だ。
ただ、一つ相違点がある。
今作の語り手は先輩と黒髪の乙女の二人であるということだ。
と、言うよりむしろ乙女サイドの方が多い。
これは画期的なことである。
今までの森見作品では、黒髪の乙女の心情が描写されることはなかった。
あくまでもてない男視線の、理解不可能な生物として描写されていたのだ。
そして、その内面は……、あ~もうちくしょう!! 可愛いな!!

その代償として、森見作品の特徴である、ほとばしる男汁はほとんどない。
半分以上を乙女の内面が占めているのだから当然だが、今作の先輩はなんというかキャラが薄い。
物語の冒頭でも述べられているように、主役は完全に黒髪の乙女だ。
上記の引用の通り、異常なまでに酒好きだ。
その酒好き度合いは、クラブの先輩の結婚式の最中に、料理の蝸牛の殻をみて「お酒飲みたい」と熱烈に思ったから、二次会をばっくれて一人で夜の街に繰り出すほどだ。
そして知り合って親父に乳を好き放題に揉まれるという深刻なセクハラに合うが大して動じていない。
はっきり言ってただのあほである。

「ねえ君、なにか悩みごとでもあるんじゃないの。そうだろう」
 私にはとっさに言い返す言葉もありません。なぜなら悩みがないからです。


とまあ、こんな感じだ。
でも可愛い。
言い出したらきりがないので、あとは実際に読んでいただくのが手っ取り早いのであるが、本当に可愛いのである。やばいのである。

ちなみに『四畳半神話体系』でも登場した、樋口さんと羽貫さんも登場する。
ということは『四畳半~』の世界とつながっていて、この世界の先輩はつまり『四畳半~』の「私」で、パラレルワールドの一つか。
あるいは別人か。

 その日、お恥ずかしいことですが、私はワクワクしてしまって、午前六時に起きました。
 先輩から電話があり、李白さんの快気祝いへ行く前に、喫茶店で珈琲を飲もうと誘われたのです。これはもしや、世に言う「デート」というものではりませんか? そうなのです。そして私はそういう行事に誘われたのは初めてのことなのです。これは一大事。


なんだよこれもう。
先輩が羨ましすぎる。
いーなー。

ちなみに羽海野チカの「かいせつにかえて」も秀逸である。
いや本当に「甘酸っぱく」「いとしい」お話なのだ。



評価:AAA



夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)
(2008/12/25)
森見 登美彦

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Edit / 2009.08.02 / Comment: 6 / TrackBack: 0 / PageTop↑
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Author:gaker
福井晴敏と本多孝好が好きです。大好きです。
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2008 11/13(木)開設

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