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失はれる物語
カテゴリ: 乙一 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

「ボクはパンツくんだ! ヨロシク!」


第五十回。
乙一の『失はれる物語』
全八篇の短編集。
全体的に儚く優しい感じで、白乙一、黒乙一の分類で言えば、白乙一よりの作品が多いように思う。

「Calling You」

友達のいないリョウが、頭の中に作り出した携帯電話にある日突然シンヤという少年から電話がかかってくる。
二人は仲良くなり、直接会うことになったのだが……。

まず設定が凄い。
頭の中に作り出した携帯で会話するというのは、ちょっと普通では思いつかない設定だ。
こういう斬新な設定をぽんぽん出してくる乙一は凄いな~と思う。

もう一人の頭の中の携帯の持ち主の原田さんの正体もね、すごくいい。
ベタといえばベタだが、でもこれ以外の正体はないだろう。

「失はれる物語」

表題作。
交通事故により、右腕の触感以外の全ての五感を失った主人公。
わずかに動く人差し指だけしか他人とコミュニケーションをとる手段はない。

これも凄い。
考えただけでもぞっとしない。
見えない、聞こえない、臭いも味も触感もわからない。
外界と完全に遮断されているのだ。
これは本当に怖い。

最後の余韻も素晴らしい。
優しくて、綺麗で、そして哀しい。

「傷」

クラスメイトを殴ったことで特別学級に入ることになった主人公。
そこに転校していたアサトは他人の傷を自分に移し、またそれを他人に自由に移せる力を持っていた。

少し黒乙一よりだろうか。
虐待を受ける子ども、周りに溶け込めない子どもは乙一が好んで扱うテーマだ。

シホのことはかなり心に来た。
乙一はこういう「本当に酷いこと」を描くのが上手い。
しかもさらっと出してくるから質が悪い。
でも救いのある最後でよかった。

「手を握る泥棒の物語」

旅館の壁に穴を開けて、中の物を盗もうとした主人公だが、誤って女の手首を掴んでしまったのだが……。

この設定も凄いと思う。
膠着状態なのだが、どこか間が抜けてる。
また最後がいいんだわ。
かなりお気に入り。

「しあわせは子猫のかたち」

前の住人が殺された家で一人暮らしをすることになった主人公だが、家の中には自分以外の人間の影が……。

こういう風なあらすじなら、幽霊物のホラーだと思うだろうが、そんなことはない。
ものすごくほのぼのしている。
主人公と雪村のやり取り(やり取りというほどのことはしていないが)が微笑ましい。
というか雪村の行動が、か。
大岡越前と落語が好きで、写真が趣味の女子大生。
渋すぎる。
また、恐怖の書置きの『わたしもラーメン食べたかったよう』のくだりの可愛らしさはただ事ではない。
ただ、それでも死んだ人間と生きた人間は決して触れ合うことはできない。
切ない。

ミステリー仕立てではあるが、別に意外な犯人というわけでもない。
むしろ子猫のくだりがびっくりだ。

これも終わり方がいいな~。
こう、何と言うか、凄いほろ苦い気持ちというか、そんな感じになる。

「ボクの賢いパンツくん」

「しあわせは子猫のかたち」の次にこれを持ってくるとは。
笑わざるをえない。
完全に脱帽である。

「マリアの指」

一人の女性が電車に轢かれて死んだ。
恭介はひょんなことからその指を手に入れる。

これもまた、重いな。
ミステリーとなっているが、犯人は完全にわからなかった。
不覚。

「ウソカノ」

安藤夏という彼女がいると嘘をついてしまい、嘘に嘘を重ねるうちに、頭の中で、安藤夏はリアリティを増し、会話ができるほどになっていった。

バカけた題材だし、落ち着いて考えれば、ちょっと危ない奴でしかないのだが、それを大真面目に正面から書いたら、これがなかなかどうして、切ないじゃないか。


総じて、締め方の上手い作品が多い。
これは乙一の特徴だろう。

いじめだとか、周りとなじめないだとかいうのは乙一本人の経験だろうか。
何と言うかある種病的なものを感じる。
だが、そこがまた魅力でもある。



評価:AA



失はれる物語 (角川文庫)失はれる物語 (角川文庫)
(2006/06)
乙一

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Edit / 2009.03.11 / Comment: 3 / TrackBack: 3 / PageTop↑
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Author:gaker
福井晴敏と本多孝好が好きです。大好きです。
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2008 11/13(木)開設

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