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らせん
カテゴリ: 鈴木光司 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第四十七回。
鈴木光司の『らせん』

いや、これは凄い。
度肝を抜かれた。
第五章以降の衝撃はかなりのものだった。
いや、不覚にも名前が出るまで全く気付かなかったな~。
裏で手を引く人物の存在に。

いやほんとに凄いわこれは。
解説でも言われているようにこの『リング』シリーズはホラーという括りだけで語られるべきものではない。
SFでもあり、ミステリーでもある。
強いて分類するならばSFが一番近いだろう。
こういうとホラーの皮を被ったSFを書く小林泰三を思い出すが、鈴木光司は特にSFに拘りがあるわけではないらしい。
というか、ジャンルに対しての拘りを持っていないようだ。
面白い「小説」を書くのが目的なのだろう。

以下ネタバレ。

物語は前作の最後で命を落とした竜司の解剖から始まる。
今回の主人公となるのは竜司の大学時代の友人でもある、監察医の安藤で、彼が竜司を解剖することとなる。

前作の主人公、浅川とその家族についてものちにに明らかになる。
何と浅川の妻子は死んでいた。
前作の引きから考えれば、浅川は妻の両親にテープをダビングして見せただろうから、妻子は助かっているはずだ。
間に合わなかったのか、あるいは妻が両親にダビングしたテープを見せる事を拒んだのか。
しかし、妻の両親も死んでいることが明らかになり、浅川の妻子はダビングして他人に見せたにもかかわらず、助からなかったことがわかる。

まさかダビングして他人に見せるというかの有名な貞子の呪いを回避する方法が、通じなくなるとは思っていなかった。
そしてこうなると、なぜ浅川だけが死ななかったのか、ということが問題となってくる。
また、竜司の遺品からビデオを見つけて見てしまった、高野舞が失踪し、この二つの謎を追うのが物語の筋となる。

まず、荒唐無稽な内容にリアリティを持たせているのがいい。
もちろんここで言うリアリティ、つまりフィクションに求められるリアリティというのは、実際にありうるということではなく、「ありそうに思える」ということだ。
その点でこの小説は、呪いという超常現象に論理的な裏づけを与えることに成功している。
山村貞子という稀代の超能力者と、根絶の危機に晒された天然痘ウィルスが交わったことによって、呪いが誕生したのだ。

そして、まさか竜司が裏で糸を引いていたとは。
いや、全く気付かなかった。
不覚だ。
竜司のメッセージは安藤に真実を伝えるため、と信じて疑わなかった。
『リング』の感想で竜司は情緒不安定と書いたが、とんだ勘違いだ。
奴はそんなものじゃなく、山村貞子のパートナーとして選ばれた、恐ろしく冷静な狂気の持ち主だ。
惜しむらくは『リング』において十分な伏線が張られていなかったことだ。
と、ついさっきまで思っていたのだが、よくよく考えてみると、あった。
この台詞だ。

「でかい声出すなって。オレが怖がってないもんだから、不満なのかい? いいか、浅川、前にも話した通り、オレはもし見れることなら、世界の終わりを見たいと思っている人間だ。この世の仕組み、つまり、始まりと終わりの謎、極大と極小の謎を解き明かしてくれる奴がいたら、命と引き換えでもそいつから知識を引き出そうとするだろうな。お前はオレのことを活字にしたんだ。覚えているはずだぜ」



脱帽だ。
伏線もしっかりと張られていた。
しかもよく考えてみたら竜司の心理描写はほとんどない。
竜司にとって浅川の持ち込んだ呪いのビデオは渡りに舟だったのだろう。
いやこれは考えすぎか。
竜司が貞子と協力関係を結んだのは死後のことか?
そして、恋人の命と引き換えに山村貞子を現世に蘇らせた。
いや、高野舞が貞子の写し身であったのだから、竜司を育てたのもまた貞子か?
いやしかし、舞の心理描写はあるしな~。
やっぱり違うか。

また、今作で始めて貞子が登場するわけだが、それは貞子と聞いて誰もが思い浮かべる、映画版の奇怪な動きでテレビ画面から這い出てくる化け物ではない。
初登場時こそおぞましい雰囲気を漂わせているが、外見は美しい女だ。
となると、映画版の『リング』は前作とは全く別物と考えるのいいだろう。
貞子はあんなわかりやすい化け物ではない。
もっと理性的で、静かな狂気をもっている。
そこにあるのも恨みなどというありふれた感情ではなく、増殖に対する欲求。
人類とは別種の生物としての生存本能だといった方がいい。
まあ、映画も商業作品としては成功だったのは間違いないだろうし、面白いのは面白かったのだけど。
やはりわかりやすい恐怖の方が一般ウケはするのかな。

そうそう、作中作『リング』の小説化、映画化、というメタ的な展開もよかった。
まさか自分の読んでいるこの本は?
と一瞬でも思ってしまう。

いやー、続きが気になるな~。
全世界が貞子になるってのはぞっとしないな(笑)

最後に題名について深読み。
『リング』は閉じた世界。
つまり完全な両性具有で一人での生殖が可能な貞子。
『らせん』は変化しながら続いていく世界、。
進化するリングウィルスか、侵食されていく世界か、あるいは遺伝子構造か。
となると『ループ』は?
同じことの繰り返しの意だろうが……、多分この後の展開に深く関わっているのだろう。

いまさらすぎる感想だけど、本当に面白かった。
『ループ』と『バースデー』も早く読もう。



評価:AA



らせん (角川ホラー文庫)らせん (角川ホラー文庫)
(1997/11)
鈴木 光司

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Edit / 2009.02.27 / Comment: 4 / TrackBack: 1 / PageTop↑
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2008 11/13(木)開設

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