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ふちなしのかがみ
カテゴリ: 辻村深月 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

 あーあ、先輩。言っちゃった。


第百七十二回
辻村深月の『ふちなしのかがみ』
青春物で知られる辻村深月のホラー短編集である。
辻村深月といえば、この度、直木賞を受賞した。
喜ばしいことである。

「踊り場の花子」
日直の仕事のため、職員室で仕事をしていた相川は、教育実習で世話をしたチサ子から、学校に忘れ物をしたという電話を受ける。
やけに早くやってきたチサ子は、何故かこの学校の七不思議、『階段の花子さん』の話を始める。

話のオチ自体は結構早い段階から何となく読めていたのだが、それでも最後は「ん?」となった。
でもすぐにさゆりが花子さんに欲しいものをあげていることに思い至った。
というか本人がそう言っている。
つまりは、改めて真実を言わせることで「最初の発言」を嘘に確定させたということか。
この短編集で一番好きかもしれない。

「ブランコをこぐ足」
ブランコで起こった凄惨な事故。
その被害者は、「キューピットさん」の儀式を行っていた。

「キューピットさん」とはいわゆる「コックリさん」のような降霊術である。
遊びでやっていたら本当に霊が来てしまったというのは、ホラーにありがちではあるが、短い中でよく料理されている。
また最後で、「え?」となった。
使用した十円玉を使うというのはコックリさんの正しいやり方だとどこかで聞いた覚えがあるのだがその辺がよくわからなかった。
買ったガムを一人で食べなかったからいけなかったのか。
キューピットさんはまた違うのか。
話の結末から前者っぽい。

「おとうさん、したいがあるよ」
つつじは、掃除に訪れた祖父母の家で大量の死体を発見する。
それらを人知れず処分することにしたつつじとその両親だが……。

これは前の二作に輪をかけて分からなかった。
結局全部妄想ってことでいいのか?
でもこのわからなさもホラーな感じで嫌いではない。
他のジャンルでやられると嫌だが。

「ふちなしのかがみ」
表題作。
鏡に自分の将来の姿が映るというおまじない。
香奈子はそこに想い人に良く似た自分の娘の姿を見た。

いやあこれは後味が悪い。
そして騙された。
やはり辻村深月はミステリー作家だなあ。
ホラーを書きながらも骨組みはミステリーだ。
収録されているほかの作品も基本はそうだ。

「八月の天変地異」
シンジはキョウスケと友達であるせいで、クラスの輪から外されていた。
それが嫌だったシンジは架空の友達「ゆうちゃん」を捏造する。
しかしシンジがピンチに陥ったとき、ゆうちゃんは本当に現れた。

これはホラーというよりもファンタジーかな。
この作品だけ毛色が違う。
切なく、物悲しい。
何となく乙一っぽいなと感じた。
ああ、でもいいなあ。
好きだなあ、この感じ。


全体を通して、ミステリーの枠組みでホラーを書いた、という感じだ。
はっきりしない部分も残るが、それもホラーならではだ。
ただやっぱり辻村深月は長編向きかなと感じた。
短編がつまらないわけではけしてないのだが。
やはりある程度の長さがないとあの最後のカタルシスは味わえない。
とはいえ、良質の短編集であった。


評価:B


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(2012/06/22)
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Edit / 2012.08.02 / Comment: 4 / TrackBack: 1 / PageTop↑
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Author:gaker
福井晴敏と本多孝好が好きです。大好きです。
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2008 11/13(木)開設

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