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小説・震災後
カテゴリ: 福井晴敏 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

人間はいつだって"結果"を生きているのではなく、"過程"を生きているのだから


第百五十三回
福井晴敏の『小説・震災後』

2011年3月11日、日本を震撼させた未曾有の大地震、東日本大震災。
それを境に多くの人の人生が変わったように、平凡なサラリーマンであった野田圭介の人生もまた、変わった。
傷ついた心、原発事故、震災後の日本人の姿、そして未来。
祖父・父・息子の三代を通してそれらを描き出す。

まず野田と言う名字に引っかかる。
私は確かにこの名前を知っている。
福井晴敏ファンなら思い当たる人物がいるであろう。
無論、今の首相ではない。
さらに、もう一人嬉しい人物が出てくる。
成る程、やはり福井晴敏は一貫して一つの繋がった世界を描いてるのだな。
ファンからしたらこういうのはやっぱり嬉しい。
しかしふと思ったのだが、『Op.ローズダスト』の事件はどうなっているのか。
確かお台場が凄いことになったはずだが、作中では特に触れられていない。
ローズダストの年代設定はいつだったか。

他の福井作品を読んでおくと野田の父親の台詞の持つ重みが違ってくる。
ああ、あの事を言っているのだな、とか、台詞の裏に隠された意味がわかって、また以前の作品を読み返したくなる。

「脱原発」という言葉に、どこか違和感というか、無責任さのようなものを感じていた。
だって原発を全部止めたら、電力が足りないのだろう?
ただでさえ不況なのに企業の活動を制限してまで節電してしまっては不景気に拍車がかかるではないか。
代替として語られる、クリーンなエネルギーとやらはまだ実用の段階には達していない。
今作を読んで、これらのもやもやした気持ちに少し整理がついた。
そうだ、「脱原発」という言葉は、「反戦」という言葉によく似ている。
どこか上滑りする綺麗事。
そう、「あの戦争」が残したのが、戦争は悲惨だという馬鹿でも分かる教訓だけではないはずであるように、原発事故から我々が学ぶべきは、原発は危険だという馬鹿でも分かる事実だけではないはずだ。

節電、エコ、脱原発。念仏みたいに唱えてりゃ、それで未来への責任を果たせるなんてことは金輪際ありません。

しかし、野田の父親は「脱原発」と「反戦」を同じ棚においてはならないと言う。
「脱原発」はいずれ為されなければならないことだ。
ただそれは今すぐではなく、「未来」の話だ。

相変わらず根底を流れるテーマはぶれない。
そして人物に血を通わせるのがやはり上手い。
PTA会長の描き方が良いと思う。
この手の人物は、ただのヒステリックなおばさんとして描かれることが多い。
今作でも途中までそうだったのだが、いやあ、福井晴敏はきちんと一人の人間として描くのだな。

許されないのは、不可能な綺麗事を可能だと信じる人間ではなく、不可能だと薄々気付いていながら綺麗事だけを唱える人間だ。

色々と心を揺さぶられる作品だ。
福井作品のテーマが収斂されていると言って良いだろう。
大量破壊兵器も特殊工作員も出てこない。
それでも、これは紛れもなく福井晴敏の作品だと言える。
是非、多くの人に読んでいただきたい。
この国で生きている人間全員が、無関係ではありえないのだから。
あ、でもその前に既存の作品を読んだ方が物語の深みが増すので、そうする事をお勧めする。
いやもちろん単体で完成された作品ではあるのだが。


評価:AA+


小説・震災後 (小学館文庫)小説・震災後 (小学館文庫)
(2012/03/06)
福井 晴敏

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Edit / 2012.03.19 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
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gaker

Author:gaker
福井晴敏と本多孝好が好きです。大好きです。
もう家に本を置く場所がありません。

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2008 11/13(木)開設

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