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海の底
カテゴリ: 有川浩 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

「……そんでも、あの子が死んで艦長が助かったらよかったって思う俺は、ひどいか」


第百十五回
有川浩の『海の底』

読んだのは随分以前だが、今回読みなおしたくなって再読した。

桜祭りで開放された米軍横須賀基地を突如、赤い巨大な甲殻類の群れが襲った。
それらは基地を蹂躙し、人間を食べていた。
海上自衛官の実習幹部である夏木と冬原は逃げ遅れた子供たちとともに潜水艦「きりしお」に立てこもった。
その際に「きりしお」の艦長が犠牲となる。
そして、どこか歪んだ子どもたちと二人の長い篭城生活が始まる。
一方陸上では、「警備の神様」と呼ばれる明石の指揮の元、機動隊が甲殻類、通称レガリスを食い止めていた。
自衛隊の戦力があればレガリスの掃討は容易だが、自衛隊は災害出動しか認められていないため武器を使うことができない。
そんな中、米軍の市街地爆撃というタイムリミットが刻々と迫る。

再読だが、いやあ、面白かった。
陸上での息詰まる駆け引き。
「きりしお」内での夏木と望の中学生みたいな不器用な恋。
この人は本当に恋愛を書くのが上手い。
それでも今作は自衛隊三部作の中では一番恋愛要素が薄い作品だろう。
それでこれなんだから参ってしまう。
夏木の不器用さにこっちがやきもきする。

陸上での主人公であるところの明石だが。
彼は始めから事態が警察の対処能力を越えていることを理解し、いかに自衛隊にバトンを渡すかを考えて行動する。
そして今回の事態の責任者である、烏丸参事官だ。
彼は明石の有能さを一目で見抜き、自分の右腕に据えて作戦の遂行に当たった。
考えるところは明石と同じ、いかに自衛隊を動かすか、である。
そして、機動隊はそのために、敗走のための敗走を強いられる。
事態がもはや警察の手に負えないことを知らしめるためである。
この辺りのやり取りはかなり熱い。

「これが機動隊への最後の命令となる」
 烏丸が初手から吹いた。
「死んでこい」

「恥をかくために恥をかけ、無体な命令であることは承知の上だ。しかし横須賀を守るために、日本を国辱から救うために必要な恥だ。早急に自衛隊の投入を決定させるためには官邸に警察の完全な敗北を見せつけるしかない」

そう言って機動隊長たちに頭を下げる烏丸。
熱い展開ではないか。
そして機動隊は潰走し、自衛隊の出動となる。
それまで長い間レガリスに圧倒されていただけあって、自衛隊が圧倒的火力でレガリスを蹴散らすシーンは爽快だ。

さて、陸上のことばかり言ってきたが、物語のほとんどは「きりしお」内で進む。
子どもたちが歪んでいると書いたが、実際に歪んでいるのは圭介だけで、その歪みが伝搬している言うのが正しいだろう。
このマザコン圭介がまた小憎らしく描かれていて、読んでいてイライラさせられる。
圭介が、トラブルメイカーとなって色々と問題を引き起こすのだが、それもまたイライラものだ。
大体好きな子に意地悪していいのは小学生までだろう。
中三にもなって、それもあれだけ悪質なのはすごい。
マザコン恐るべしである。

「初めてになりましたよね?」

夏木と望の別れと再会のシーンはベタだがいい。
むしろベタだからこそいい。
締め方も余韻があっていい。

収録されている番外編は、夏木と冬原の悪ノリを、作者が悪ノリして書いたようなそんな内容だ。
短いが結構面白い。

いやあ面白かった。
読み返したいと思える作品というのは少ない。
『海の底』はその数少ない作品の一つだ。


評価:AA+


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(2009/04/25)
有川 浩

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Edit / 2011.04.17 / Comment: 2 / TrackBack: 0 / PageTop↑
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Author:gaker
福井晴敏と本多孝好が好きです。大好きです。
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2008 11/13(木)開設

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