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神様のパズル
カテゴリ: 機本伸司 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第百七回
機本伸司の『神様のパズル』
第三回小松左京賞受賞作

就職も決まらず、下手したら留年までありうる僕がゼミの担当教授から頼まれたのは、不登校の天才少女、穂瑞沙羅華をゼミに参加させることだった。
僕は沙羅華に会ってみるも、けんもほろろに断られる。
しかし、「宇宙を作ることはできるのか?」という疑問を叩きつけると、彼女はゼミに出てきた。
それはそのままゼミのテーマとなり、僕は沙羅華と二人で、宇宙が作れることを立証しなければならなくなったのだ。

物語は、僕、綿さんこと綿貫基一の日記という形で進められるが、基本的にはただの一人称だと思ってもらえばいい。
日記という形式を取る必要は特にないようにも思う。

挿絵などはないが、表紙からするとライトノベルに分類されるのだろうか。
だが内容はしっかりSFしている。
青春SFといったところか。
青春物は大好物だ。
大学生のゼミや、天才少女穂瑞沙羅華と落ちこぼれ学生の僕との対話という形をとることで、知識のない素人も、不自然さのない説明で、物理のことについて、なんとなくわかったような気になれるのもいい。
あくまでわかったような気に、だが。

沙羅華の人物造形がいい。
彼女は精子バンクを利用して作られた天才児で、四歳で微積分を理解し、九歳でこの物語で重要となる研究施設“むげん”の基礎理論クロストロン方式を発案した。
そして今は16歳にして飛び級で大学の四回生だ。
超ド級の天才少女である。
性格はクールで無愛想。
男のような、しかも時代がかった話し方をする。
元々そんな性格だったのか元来は違ったのかは今一つ分からない。
天才少女を演じていたとの言もあったから、元々芯の部分はそうだったのかもしれない。
だが、思春期の少女らしい脆さも併せ持つことがだんだんとわかっていく。
そしてそれは天才ゆえの脆さでもある。
その辺りのアンバランスに揺れ動く感じがいい。

ストーリーは、僕と沙羅華の対話が中心となり進んでいく。
二人で宇宙の作り方を考えていく訳だが、実際は沙羅華が考えたことを僕に説明する、といった具合だ。
それを繰り返して、二人はとうとう現実に実現可能な宇宙の作り方を発見する。
そして沙羅華の暴走が始まる。

宇宙とは何かという問いは自分とは何かという問いにつながる。
また当然自分とは何かという問いは宇宙とは何かという問いにつながる。
突き詰めて考えればこの二つは話すことのできない問題だったのだ。
沙羅華は“彼”に聞きたかったのだ。
自分の生まれてきた意味を。
突き詰めればそんなものはないということになってしまい、また誰もが一度は思い、答えられないその意味を。
そんなこと考えてもしょうがないと思い人もいるだろう。
考え続ける人もいるだろう。
考えもしない人は、かなり少ないのではないか。
自分なりの結論を出す人もいるだろう。
ちなみに私は自分なりの結論を出した。
生まれてきたことに意味などない。
だから人生とは自己満足に過ぎない、と。
けして悲観的に考えている訳ではない。
楽しみも悲しみも誰かを愛することも憎むことも全て自己満足だ。
でも、それでいいんだと思う。
生命は自分というフィルターを通してしかものを見ることはできないのだから。

話がそれた。
沙羅華は本気だったのだろうか。
多分そうだろう。
だが止めてほしいという思いもどこかにあったのではないか。
現に僕の説得には少し心が動いていたようだった。
母親と相理さえしゃしゃり出てこなければ、どうなったかわからなかったのではないか。

沙羅華の父親については予想はついていた。
だが矛盾がある。
彼は有能かもしれないが特に大きな業績を残している訳でもないだろう。
何故そんな彼の遺伝子を選んだのか。
少しこの辺はご都合主義的なところを感じる。

最後の沙羅華の変化にはびっくりだが、沙羅華にとっては良かったことなのだろう。
その年代でしか体験できないことはある。
沙羅華はそれをすっ飛ばしてきてしまっていた。
それが彼女のアンバランスさにつながっていたのだろう。

さて、結論だが、面白かった。
少し近未来が舞台なのでどこまでが現在の事実でどこからが作者の創作なのかは私にはわからないが、宇宙蘊蓄なども楽しめた。
クライマックスには引きこまれたし、SF小説としても青春小説としても良作なのではないだろうか。
ただ最後のまとめ方が少し微妙な感じがした。
とっ散らかされた感じというか。
もうちょっときれいにまとめられたのではないかと思った。

余談だが、相理が沙羅華に手を出したのは恐らく三年前。
沙羅華は十三歳(!)だ。
善人面してとんだ危険人物ではないか相理は。


評価:A


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(2006/05)
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Edit / 2011.03.07 / Comment: 2 / TrackBack: 0 / PageTop↑
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2008 11/13(木)開設

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