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クレィドゥ・ザ・スカイ
カテゴリ: 森博嗣 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第九十二回
森博嗣の『クレィドゥ・ザ・スカイ』

『スカイ・クロラ』シリーズ第五弾
今作の語り手「僕」が誰かははっきりと明言されていない。
その点が今までと違うところだ。
ひどい不時着をした後に病院から抜け出し、フーコを頼ったことから、クリタ・ジンロウではないかと最初読者は思うであろうが、次第にどうも違和感が出てくる。
そしてそれは終盤の杣中の言葉で決定的なものとなる。
杣中は「僕」のことを草薙水素のようだと言い、カンナミと呼んだ。
結局「僕」は何者だったのか。
その考察はまた後で。

フーコと別れた「僕」は今度は相良を頼る。
会社から追われている「僕」には他に頼れる人がいなかったからだ。
相良は入院中の「僕」を訪ねてきて、その際に連絡先を渡していた。
また、謎の注射を「僕」にしている。
そして「僕」は相良の元へ向かう際に草薙水素に殺される幻覚を見る。
その後も草薙水素の幻覚を頻繁にみる。

薬の影響か記憶力が非常に乏しくなっており、それは物語の進行とともにひどくなっていく。
まず自分が誰なのか分からない時点で相当だ。

「僕」はしばらく相良の家でかくまわれることになる。
杣中が相良の家を訪ねてきて、草薙水素が先の大きな戦闘で墜ちたという話があること、クリタが病院から抜け出し、娼婦と逃げ、草薙水素に射殺されたという情報をもたらす。
つまり水素が墜ちたというのは嘘だということだろう。
この辺がややこしい。

しばらくするとアシがつき、相良の飛行機で脱出することになった。
そして相良の仲間の元に行くこととなる。
彼らは一種の反政府組織のようなものだろうか。
そんな感じがした。
そこには散香があり、「僕」は後にそれに乗って追手と戦うことになる。
そして追手を全機墜とした。
しかし地上は制圧されており、情報部の甲斐にともに戻るように言われる。
それから一人立て籠る相良を説得しに行く。
だが、相良は死を選び、「僕」に殺されることを望んだ。
そしてその前に「僕」が病院で売った注射でキルドレに戻ったと告げる。
「僕」は相良を撃ち、パイロットへと戻った。

パイロットへ戻った「僕」の前に杣中が現れる。
非武装地帯で起こった戦闘で四機を落としたのは草薙水素だと断言し、今他の基地の指揮官になっている草薙水素は偽物だと言い「僕」のことを草薙水素に似ていると言い、カンナミと呼んだ。

さて、結局「僕」はいったい誰なのか。
杣中のいうことが本当なら「僕」=草薙水素=カンナミ・ユーヒチということになる。
エピローグだけ「僕」の中身が違うということはあるだろうか。
その可能性も否定できないが、それは少しアンフェアな気がする。
私の考えとしては「僕」=草薙水素=カンナミ・ユーヒチだ。
矛盾点も多いのだが、ティーチャの名前に執着を示したり、「ブーメラン、跳んでいるか?」という声を懐かしく感じていること。
また甲斐に執着されていること。
そして何より「僕」がキルドレに「戻った」ということだ。
「戻った」ということは今までキルドレではなかったということ。
キルドレでなくなった人物は草薙水素だけだったはずだ。
ここが一番の決め手だろうか。
ということは相良の家で杣中が言っていた直接会ったという草薙水素は既に偽物だったと推測するしかない。
最大の矛盾は『ダウン・ツ・ヘヴン』で水素が会ったカンナミは何だったのかということだ。
それについては水素が見た幻覚だったのではと推測される。
強引な点も多いがこれで全ての矛盾点を解決できるのではないか。
なぜフーコを頼ったのかという疑問もあるが、フーコと親交がなかったという描写はなかったように思う。
あったという描写もなかったと思うが。
まあ、そう言う訳で草薙水素はカンナミとなって『スカイ・クロラ』へ続く訳だ。
と思う。

シリーズで一番面白かった。
やはり謎があった方が面白い。
『スカイ・クロラ』シリーズはこれで完結だろうか。
あとは短編集があるようだ。
今作の謎の手掛かりとなるものだろうか。
楽しみだ。


評価:A


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(2008/04)
森 博嗣

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2008 11/13(木)開設

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