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亡国のイージスと田母神論文
カテゴリ: 福井晴敏 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

もう第十回です。
早いものですね。
せっかくなのでちょっと気合を入れたものを書いてみようと思います。
今回は『亡国のイージス』、私の一番好きな作家、福井晴敏さんの出世作です。
何と、大藪春彦賞、日本冒険小説協会大賞、日本推理作家協会賞のトリプル受賞です。
映画化もされていますね。

この作品のテーマはそのまま作家福井晴敏のテーマでもあります。
すなわち、自衛隊という存在自体が矛盾した組織についてです。
それは、日本という歪な大国が抱える矛盾と言い換えることができます。

このように非常に重いテーマを扱っている作品です。
ですが、そうであると同時にエンターテイメントとしても一級の小説です。
文体も少々堅めで、読むのには時間がかかります。
しかし、そんなことが気にならないほど、一度読み出したら最後までページを捲る手を止めさせない力がこの作品にはあります。
難しいテーマだな~とか、分厚くてどうも……だとか思って読んでいない人がいるのなら是非読んでみてほしいです。
極上のエンターテイメントを味わえますよ。

ちなみに『亡国のイージス』は、『川の深さは』、『Twelve Y.O.』のに作品の続編です。
厳密に言えば、続編というより世界観を同じにする作品といった方がいいかもしれません。
『終戦のローレライ』や、短編集『6ステイン』も同じ世界で起こった出来事ですし、まだ未読ですが『Op.ローズダスト』もそうだと思います。
それぞれの作品の主人公などは異なりますが、ある作品に登場した人物が別の作品に登場したり、同じ事件を語ったりと前作を知っているほうがニヤリと出来るのは確かです。
今作にも某ヘリパイがちょい役ですが登場してます。

守るべき国の形も見えず、いまだ共通した歴史認識さえ持ちえず、責任回避の論法だけが人を動かす。国家としての顔を持たない国にあって、国防の楯とは笑止。我らは亡国の楯(イージス)。偽りの平和に侵された民に、真実を告げるもの

上の文章はあるシーンからの引用ですが、これを読んだ時にぞくぞくしてしまいました。
ちょっとこの口上は格好良すぎるでしょう。

以下ネタバレ

実際のところ宮津がヨンファに協力しているのはバレバレで、というか作者にも隠す気はあんまりないでしょうし、ネタバレともいえない気もしますが、もしこの記事を読んで『亡国のイージス』を読もうと思った人がいらっしゃるなら、やはり余計な先入観を持たずに読んで欲しいですし、反転文字にします。

宮津艦長を中心とする登場人物幾人かは、大事なものを理不尽に奪われた絶望から憎悪に身を焦がし、誤った道を選びます。
ですが彼らは復讐よりも大事なことがある事を知り、いや思い出してギリギリで踏みとどまり自分に恥じない生き方をすることができたんでしょう。
このあたりを読むと、福井さんは優しい人なのだろうと思います。
どうしようもない悲劇的な人生を送っていた人間にもきっと救いはあるんですね。
終盤の行と艦長の会話には、不覚にもじわりときてしまいました。
しかしそれはもちろん全ての問題が解決するということではありません。
その悲劇を生み出した歪みがなくなるわけではないのです。
国民の無知無関心も日本のあり方も、多くの命が散ったこの茶番を仕組んだアメリカの傲慢さも何ら変わりません。(福井作品ではアメリカは結構悪く書かれますね。多分嫌いなんでしょう。自らを正義と称して恥じないあの傲慢さが)
ただ、「変われるかもしれない」と言うだけです。
厳しい現実をしっかりと見据えながらも絶望に溺れることもなく、希望を指し示す福井さんの作家としての姿勢が、私はとても好きです。


読んだのは随分前でまた読み返したのですが、そのきっかけになったのは、最近話題になった田母神論文です。
作中の内容と少しばかり被る所がありまして、ふと読みたくなりました。
亡国のイージスを読んだことのある人で、田母神論文の話題がきっかけで読み返した人は多いんじゃないでしょうか。
作中では防衛大学の学生、田母神さんは航空幕僚長と立場に違いはありますが、主張する内容が重なっている部分があります。
もちろん違う部分も多々あって、田母神さんのほうが大分過激な内容のようです。

私は田母神論文全面的に肯定することも否定することもできません。
第二次世界大戦のことについての問題の部分はあまりうなずけません。
だからといって中国や韓国の言う事を鵜呑みにできるほど無垢でもありません。
南京大虐殺の被害者数や証拠を捏造したとか言う話も聞きますし(事実かどうかはわかりません)
そもそも南京大虐殺はなかったという説もあるそうですね。
話がそれましたが、やはりこの論文には価値があるのだと思います。
田母神さんは自分が実名でこのような論文を発表すれば騒ぎになることくらいは本当はわかっていたと思います。
それでも発表したのは、自衛官が自分の仕事に誇りを持てない現状を、法整備が進まず、国を守るという、存在意義すら果たせるかわからない現状を、武器を持たなければ攻撃されることはないなどと言い放つ人々がいる現状を憂いていたからではないでしょうか。
それはまさに作中の宮津隆史と共通する感情だと思います。
しかし、政府は臭いものには蓋の理論で田母神さんを更迭しました。
確かに、自衛官という特殊な職業につく人間が国の見解とあまりに違う考えを持つというのは問題でしょう。
だからといって異を唱えることするできないというのは無茶苦茶ではないでしょうか。
私の目にはこの政府の対応は福井さんの書くこの国の汚濁そのものに映りました。
田母神さんの論文はネットで検索すれば簡単に読めるので、一度読んでみるのもいいのではないでしょうか。
私たち一人一人が自分の頭で考え行動し、その結果に責任を持てるようにならなければこの国は変わらないのだと思います。

あと、表紙のデザインがとても好きです。
めっちゃ格好いいですよね。
福井さんの作品の表紙は格好いいのが多いです。



評価:AA+



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2008 11/13(木)開設

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