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クドリャフカの順番
カテゴリ: 米澤穂信 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

「データベースは結論を出せないんだ」


第二百二十回
米澤穂信の『クドリャフカの順番』

ついに始まった神山高校文化祭。
だが、古典部では文集を刷りすぎてしまうという問題が発生していた。
その頃学内では妙なものが盗まれる事件が発生していた。
この事件を解決して古典部の知名度を上げ、文集の完売を目指すべく奉太郎達は事件の謎へ挑む。

古典部シリーズ第三弾。
今までは全て、奉太郎の一人称だったが、今作では奉太郎以外の古典部員の視点でも描かれている。
中でも里志の微妙な心情は非常にいい。
凄い友人を持つと、それを誇らしく思う気持ちと、自分だってという反発心の両方が矛盾なく両立することがある。
これは、多分、里志が言うように男特有のものなのだろう。
里志の抱く諦めは、苦い。

才能、というものが一つ、古典部シリーズのテーマなのかもしれない。
『愚者のエンドロール』においても、扱われていた。
才能という言葉で全て片付けてしまうのは好きではない。
しかし、才能というものは確かに存在する。
ただ、スペシャリストだけが才能ではないと思うが。
ジェネラリストも重宝される才能だ。
器用貧乏というとマイナスイメージだが、個人的には一芸しかない奴よりは使えると思うのだ。
とはいえそれでも人はスペシャリストに憧れるものだ。

しかし、里志は色々とめんどくさい奴である。
摩耶花のことを憎からず思っているのは明らかなのに、その気持ちに応えることはしない。
何かしら思う所があってのことなのだろうが。
しかし、こと恋愛が絡むとめんどくさくなる奴というのは実際にも多々いる。

何だか内容にあんまり触れていないが、面白かった。
個人的には『愚者のエンドロール』の方が好きであったが、今作も十分に水準以上であった。


評価:B+


クドリャフカの順番 (角川文庫)クドリャフカの順番 (角川文庫)
(2008/05/24)
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Edit / 2013.07.27 / Comment: 0 / TrackBack: 1 / PageTop↑
at Home
カテゴリ: 本多孝好 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

「日曜日くらいゆっくりするものです」


第二百十九回
本多孝好の『at Home』

家族をテーマに描かれた短編集。
本多孝好は短編の方が光ると思っている私としては、お待ちかねの一作であった。

「at Home」
父さんは泥棒、母さんは結婚詐欺師、そして僕はパスポート偽造屋で働いている。
ある日、母さんがターゲットにした男に誘拐される。
僕たちは「家族」を守るために偽札を抱えて指定された場所へ向かう。

表題作。
主人公は本多孝好らしい、一人称僕のとぼけた男である。
本多孝好の小説の登場人物は違法行為に対してのハードルが低い。
だからと行って根っからの悪人だという訳ではない。
むしろ善人寄りだと言っていいだろう。
この犯罪者家族という設定は、だから、なかなか「らしい」ものである。

完成度が高い一作、だとも言えるし、小さく纏まっている、とも言える。
少し物足りなさがあるのは否めない。

「日曜日のヤドカリ」
妻の連れ子である弥生さんが同級生を殴ったらしい。
俺の家を訪れた、殴られた男の子とその父親をあしらったあと、今度は自らの父親の行方を探す男の子が俺の家を訪れた。

弥生さんがいいキャラをしている。
少ない情報から推論を立て、そして母親の浮気という結論にたどり着くと、それを疑わない。
いや、疑わなかった訳ではないだろう。
ただ、ありえると、そう思ったのだ。
クールである。
しかし、それは脆さでもある。
弥生さんは知っている。
家族が、簡単に壊れることを。
今目の前にあるものが、当り前ではないということを。

これが今回の短編集の中では一番好きかな。
軽さと重さのバランスがいい。
このくらいが本多孝好らしい。
他の三篇は少し、重い。

「リバイバル」
借金を帳消しにする代わりに、見ず知らずの女と籍を入れて一年間暮らすことになった私。
妊娠している女に、次第に情が移っていったが、それが男女のものではないことを私は分かっていた。

これはまた最初から最後まで重い話である。
それもまた好きなのだが、個人的に本多孝好に求めるものではない。
だがやはり完成度は高い。

「共犯者たち」
妹の子供を一日預かった僕。
風呂に入れようとした時、甥っ子の体に、異常な痣を見つける。

本多孝好の兄妹が好きである。
「祈灯」の兄弟とか。
今回、兄である僕は妹を信じてやることができなかったけど。
それでもやっぱり二人の関係というものが好ましく映るのだ。
終盤の二人のやり取りがいい。
でもやっぱちょっと重いな。


テーマは「家族」
だが、それは必ずしも血の繋がった家族ではない。
いや、だからこそより強くそのテーマが浮かび上がるのか。
家族とは、覚悟がなくてもなってしまえるものだ。
でも家族で居続けることはそれほど簡単なことではないのだ。


評価:A+


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(2013/06/21)
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Edit / 2013.07.14 / Comment: 2 / TrackBack: 0 / PageTop↑
星に願いを、月に祈りを
カテゴリ: 中村航 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

〝どうか君の夜空に、優しい星が流れますように〟


第二百十八回
中村航の『星に願いを、月に祈りを』

アキオ、大介、麻里は学童キャンプでホタルを見るために夜に宿を抜け出した。
そこで三人は、ラジオから流れる謎の番組を聞く。
アキオは中学生になり野球部に入り、そして先輩の里崎さんに恋心を抱く。
その想いを告げることなく高校生になったアキオは、再び謎のラジオを聞き、そして……。

何といってもまず題名である。
何と魅力的で私好みのタイトルだろう。
『星に願いを、月に祈りを』
いやあ、いいなあ。

さて、内容だが、期待したほどではなかったというのが本音か。
十分に面白くはあったのだが、題名でハードルが上がりすぎていた。
残念ながらそのハードルを越えることはできなかった。
また、少しミステリー部分があるのだが、その謎が予想の範疇なのも少しマイナスポイントか。
いや、あるいは中村航は意図的にそうしているのかもしれないのだが。

ちなみに、この物語の主役は大介でもなくアキオでもなく、恐らくは掌ほたるである。
そうである以上、第一章と第二章はプロローグであり(あるいは第二章はエピローグかもしれない)、第三章に入ってからが本番である。
掌とミニーの不思議な交流。
でも二人の正体はなんとなく読者には想像がつく。
あるいはミニーについては二通りの予想があるかもしれない。
だが、ミニーの登場時のこと、そして彼女の名前を考えれば答えは一つだ。

相変わらず、中村航の文章はいい。
優しく、どこまでも優しい。
彼が描くのは徹底的に悪意が排除された世界だ。
でもきっとそれをするためには、悪意を覗かなければならない。
その上で、ピンセットを使って丁寧に悪意を取り除いているのだ。

『100回泣くこと』が映画化されるようだが、私としてはあれが中村航の代表作だとされるのはやや疑問がある。
割とありがちな、お涙頂戴の話(もちろん中村航独特の味は出ているのだが)だからだ。
あえてそうしたのだろうと思うのだが、他の作品の方が絶対面白いよなあ。


評価:A-


星に願いを、月に祈りを (小学館文庫)星に願いを、月に祈りを (小学館文庫)
(2013/06/06)
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Edit / 2013.07.06 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
プロフィール

gaker

Author:gaker
福井晴敏と本多孝好が好きです。大好きです。
もう家に本を置く場所がありません。

リンクもトラックバックも昔の記事へのコメントも全部大歓迎です。

2008 11/13(木)開設

評価基準
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A:とても面白い
B:面白い
C:暇つぶしには
D:ん~、微妙
E:読み進めるのが苦痛
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