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陽だまりの彼女
カテゴリ: 越谷オサム / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

 なるほど、僕たちはバカ夫婦だ。


第百七十四回
越谷オサムの『陽だまりの彼女』

かつて「学年有数のバカ」と呼ばれ、イジメられっ子だった真緒と十年ぶりに再会した僕。
僕は当時の面影を残しながらも、大いに成長していた彼女と急接近する。
しかし、順調だった二人の生活に、次第に影が差し始める。

裏表紙で謳われている「前代未聞のハッピーエンド」と「完全無欠の恋愛小説」という文句と、タイトルに惹かれて買った。
序盤、再会した二人は特に障害もなく親しくなり、一気に結婚まで行ってしまう。
唯一真緒の両親に反対されたこと以外は。
真緒の父親の「迷惑はかけられない」という発言はかなり気になったのだが、あまり深い意味はなかったようだ。
てっきり両親は真緒の抱える事情をすべて把握しているからの発言かと思ったのだが。
いや、あるいはそうだったのかもしれないな。

まあ、二人は順調に愛を育む。
その様子はもうベタベタに甘く、非常に私好みであった。
しかしながら、いや、だからこそ不安になった。
ここはまだ物語のスタート地点でしかないのだとわかっていたからだ。
そして予想通り少しずつ、不穏な気配が漂ってくる。
このあたりの描写はかなりうまいなと感じた。
非常に不安感を掻き立てられる。

そして最後まで読み終わったのだが、なんだか物足りなさを覚えた。
「前代未聞のハッピーエンド」というあおり文句に期待していたということもあり、何かすごいオチがあるのではないかと待ち構えていたからだ。
真緒が猫だったというのは確かに予想外ではあったのだが、前代未聞というには弱いなあ。
真緒がいなくなってからの展開があっさりしすぎているように感じる。
もうちょっとページを割いてもよかったように思う。
とはいえ、作者の他の作品も読んでみようかと思うくらいには楽しめた。
中盤までは文句なしだったし。
でも、裏表紙で結末に触れるのはやっぱりなしだよなあ。


評価:B+


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(2011/05/28)
越谷 オサム

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Edit / 2012.08.27 / Comment: 2 / TrackBack: 0 / PageTop↑
宵山万華鏡
カテゴリ: 森見登美彦 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

 小長井のエンジンは、山田川敦子無しには起動しないのであった。


第百七十三回
森見登美彦の『宵山万華鏡』
祇園祭を舞台とした、様々に表情を変える連作短編集。

「宵山姉妹」
姉とともにバレエ教室に通う少女。
宵山の日に姉と寄り道をしていると、姉とはぐれてしまう。
そこで不思議な少女達と会い、彼女らについていくことになったのだが……。

しょっぱなはホラーである。
少女達がなかなかに不気味な雰囲気だ。
彼女らの正体などはこの後の短編の中で明らかになっていく。

「宵山金魚」
宵山法度違反により屈強な男達に捕らえられ、宵山様の元に連れて行かれる「俺」
次々と現れるヘンテコなものに翻弄される「俺」の行きつく先とは。

今度は一転してバカバカしくも面白い森見ワールドである。
なのだが、必ずしもそうともいえないことが後々分かってくる。
この辺り、短編同士が絡み合っていて面白いところだ。

「宵山劇場」
偏屈な男、小長井が乙川という男の友人を騙す壮大な計画に、バイトとして雇われる。
そこで小長井は、かつて自分を振り回した山田川と再会する。

またもやバカバカしい森見ワールドで、「宵山金魚」の舞台裏となる一編である。
個人的にはこの短編集の白眉といえる一編である。
なんと言ってもまず高藪である。
高藪といえばあれだ、デビュー作『太陽の塔』の主人公の友人だ、確か。
いま少し手元にないので確認できないが間違いないと思う。
自分を好きになった女性が現れたとか言っていたが、それってひょっとして岬先生だったりするのかなとか思いながら読んだ。
いやあ作品同士のリンクというのは好きだなあ。
そして小長井と山田川の関係である。
なにこれ甘酸っぱい!
バカバカしい中にこういうのもひょいっと放りこんでくるからなあ、上手いなあ。
そしてその後はけして書かない。
心憎い限りである。

「宵山回廊」
千鶴が画家の叔父の元を訪ねると、叔父は宵山の一日を何度も繰り返しているという。
その原因は十五年前の宵山の夜に消えた叔父の娘を当時の姿のまま発見したことだという。
叔父にいったい何があったのか。

一転してまたシリアスになる。
「宵山姉妹」少し出ていた印象的な人物、柳さんがキーパーソンのようだ。
同じ一日の繰り返しというのは良くあるネタだが、繰り返している人物ではない視点から描かれるのは珍しく思う。
オチは何ともいえない気分になる。

「宵山迷宮」
「私」が朝目覚めると、また宵山の日だった。
同じ一日を繰り返す「私」はどうすればこの宵山の日から抜け出すことができるのか。

あらすじだけ見ると千鶴の叔父の話のようだが、この「私」は柳さんである。
柳さんもまた同じ宵山の一日を繰り返していたのだ。
そして乙川が再登場する。
一転して怪しげで不気味な雰囲気である。
乙川の取引先については最後の短編で判明する。

「宵山万華鏡」
妹とともにバレエ教室に通う少女。
宵山の日に妹と寄り道をしてるうちに、妹を置き去りにしてしまう。
妹を探しているうちに不思議な大坊主に会い、大坊主の持つ風船が欲しくなり、宵山様のところにならあるということで、ついていくことになる。

「宵山姉妹」の姉サイドの話である。
姉の方も姉の方で色々と不思議な体験をしていたようだ。
あの少女達が宵山様だったのか。
なーる。
しかし山田川の妄想がことごとく的を射ていたとは驚きである。


六つの短編が全て絡まりあい、一つにつながっている。
疑問点もいくつかあるが、そこを追求する種類の作品ではないだろう。
ファンタジーである。
しかし、高藪が登場したことで、彼に何があったのか改めて気になってきた。
それが描かれる日は来るのだろうか。


評価:A+


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(2012/06/26)
森見 登美彦

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Edit / 2012.08.22 / Comment: 2 / TrackBack: 0 / PageTop↑
ふちなしのかがみ
カテゴリ: 辻村深月 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

 あーあ、先輩。言っちゃった。


第百七十二回
辻村深月の『ふちなしのかがみ』
青春物で知られる辻村深月のホラー短編集である。
辻村深月といえば、この度、直木賞を受賞した。
喜ばしいことである。

「踊り場の花子」
日直の仕事のため、職員室で仕事をしていた相川は、教育実習で世話をしたチサ子から、学校に忘れ物をしたという電話を受ける。
やけに早くやってきたチサ子は、何故かこの学校の七不思議、『階段の花子さん』の話を始める。

話のオチ自体は結構早い段階から何となく読めていたのだが、それでも最後は「ん?」となった。
でもすぐにさゆりが花子さんに欲しいものをあげていることに思い至った。
というか本人がそう言っている。
つまりは、改めて真実を言わせることで「最初の発言」を嘘に確定させたということか。
この短編集で一番好きかもしれない。

「ブランコをこぐ足」
ブランコで起こった凄惨な事故。
その被害者は、「キューピットさん」の儀式を行っていた。

「キューピットさん」とはいわゆる「コックリさん」のような降霊術である。
遊びでやっていたら本当に霊が来てしまったというのは、ホラーにありがちではあるが、短い中でよく料理されている。
また最後で、「え?」となった。
使用した十円玉を使うというのはコックリさんの正しいやり方だとどこかで聞いた覚えがあるのだがその辺がよくわからなかった。
買ったガムを一人で食べなかったからいけなかったのか。
キューピットさんはまた違うのか。
話の結末から前者っぽい。

「おとうさん、したいがあるよ」
つつじは、掃除に訪れた祖父母の家で大量の死体を発見する。
それらを人知れず処分することにしたつつじとその両親だが……。

これは前の二作に輪をかけて分からなかった。
結局全部妄想ってことでいいのか?
でもこのわからなさもホラーな感じで嫌いではない。
他のジャンルでやられると嫌だが。

「ふちなしのかがみ」
表題作。
鏡に自分の将来の姿が映るというおまじない。
香奈子はそこに想い人に良く似た自分の娘の姿を見た。

いやあこれは後味が悪い。
そして騙された。
やはり辻村深月はミステリー作家だなあ。
ホラーを書きながらも骨組みはミステリーだ。
収録されているほかの作品も基本はそうだ。

「八月の天変地異」
シンジはキョウスケと友達であるせいで、クラスの輪から外されていた。
それが嫌だったシンジは架空の友達「ゆうちゃん」を捏造する。
しかしシンジがピンチに陥ったとき、ゆうちゃんは本当に現れた。

これはホラーというよりもファンタジーかな。
この作品だけ毛色が違う。
切なく、物悲しい。
何となく乙一っぽいなと感じた。
ああ、でもいいなあ。
好きだなあ、この感じ。


全体を通して、ミステリーの枠組みでホラーを書いた、という感じだ。
はっきりしない部分も残るが、それもホラーならではだ。
ただやっぱり辻村深月は長編向きかなと感じた。
短編がつまらないわけではけしてないのだが。
やはりある程度の長さがないとあの最後のカタルシスは味わえない。
とはいえ、良質の短編集であった。


評価:B


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Edit / 2012.08.02 / Comment: 4 / TrackBack: 1 / PageTop↑
プロフィール

gaker

Author:gaker
福井晴敏と本多孝好が好きです。大好きです。
もう家に本を置く場所がありません。

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2008 11/13(木)開設

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D:ん~、微妙
E:読み進めるのが苦痛
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