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ロードムービー
カテゴリ: 辻村深月 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

「――それが、いつか終わりがくるものだってことも、全部知ってる。だから、平気なの」


第百四十六回
辻村深月の『ロードムービー』

まず最初に言っておきたいのは、今作を読む前に『冷たい校舎の時は止まる』を読んでおくべきだということだ。
一度読んだ人も読み返した方がいい。
明言こそされていないが、今作は、『冷たい校舎の時は止まる』の番外編的な短編集となっている。
ほとんどの作品が、『冷たい校舎の時は止まる』を未読でも読めるようにはなっているが、読んでいた方が圧倒的に楽しめる。
背景にあるものを理解しているかどうかで、一つ一つの台詞の持つ深さ、重みが違ってくる。


「街灯」
冒頭を飾るのはわずか4ページの掌編だ。
ストーカーか! の一言に尽きる。
いや、いい話だし、好きだけど(笑)


「ロードムービー」
表題作
クラスの人気者のトシは、気弱で友達も少ないワタルと友達になる。
そのことがきっかけで二人はクラスから孤立し始める。
そして、二人は「ある事情」から家出を決意する。

トシの両親については正体はすぐにわかる。
以前にも書いたがこういう後日譚は好きだなあ。
物語が終わっても、登場人物たちの人生は続いていくのだ。

しかし、正直に言うと、短編では辻村深月の力は発揮できないだろうとたかをくくっていた。
微妙な齟齬を感じながら、深く考えずに読み進め終盤でやられたと思った。
あー、なるほどね。
辻村深月はやっぱり生粋のミステリー作家だ。
きっちり仕込んできた。
アカリがトシと仲良くしたがった理由も、中学生がワタルの方だけ手加減なしで殴ったことなんかはそういうことだったのか。
しかしそう考えれば恐らくアカリの兄たちであろう中学生は本当にくずだな。
ビックリするくらいのくずだ。

トシの母親である景子が結構好きだ。
母親になってもクールなんだな。
でも本当は情に篤い。
父親の裕二は国会議員になったのか。

鷹野と深月の結婚について書かれているのもいい。
しかし欲を言えば、ここは本人視点でじっくりと読みたかった。

少女の初恋と失恋とか、いじめとか、大人の事情で引き離される子供とか、色々あるけども、いつも通り読後感はいい。
辻村深月の特長の一つだろう。


「道の先」
大学生で塾講師のバイトをしている「俺」は、一人の生徒、大宮千晶に気にいられる。
彼女は塾のクラスの中心的人物で、気に入らない講師を次々に辞めさせていた。

多分、一番好きな話。
語り手である「俺」が誰かはこれまたすぐにわかる。
留守番電話の女の子も。
彼はずいぶん成長したのだな、と感じた。

何でも持っていて、それゆえに不安定な少女というのは何と言うか、魅力的だ。
そしてその不安に対する「俺」の答えが優しくて温かくて。
自分がそうだったから、ここじゃないどこか遠くに行きたかったから、それがどこにもないことを知ってたから、だから言える。
きっとうまくいくって。
ああ、優しい話だなあ。


「トーキョー語り」
さくらのクラスに来た垢ぬけた転校生、久住薫子。
最初はクラスに歓迎された薫子だったが、父親が服役中のヤクザであることが知れ、少しずつ孤立していく。
そして、薫子がクラスで決定的に孤立した時、彼女を庇ったのは、同じくクラスから孤立していた遠山さんだった。

最初は名字の出てきていないさくらが、本編組の誰かの子供かと思ったが、どうも感じが違う。
さくらは地元の子だ。
そして遠山さんが出てきて、彼女がキーパーソンであることがすぐに分かった。
その正体は本来ならすぐにわかってしかるべきだったのだろう。
だが私は本編組との絡みばかりを考えてしまい不覚にも全く気付かなかった。
清水か昭彦かその辺の子供か? なんて考えていた。
本当に不覚だ。
そしてラストで、お前かーー!!ってなった。

なるほど、千晶は先に大人になりすぎたんだな。
そういうふうに言われていたもんな。
でもちゃんと対等な友達ができてよかったじゃないか。

さくらのコンプレックスのなさに対するいら立ち、というのは少しわかる。
私も篤志や一美と同じくコンプレックスの塊だからだ。
彼らと違って、もう結構いい年なのだが。
それにしてもスピンオフのスピンオフと来たか。
やってくれる。


「雪の降る道」
みーちゃんは、体調を崩しがちになったヒロのところへ様々な宝物をもってお見舞いに訪れる。
しかし、それをうっとおしく思うヒロは、みーちゃんを傷つけてしまう。
そしてみーちゃんは姿を消してしまう。

まあこれは名前を伏せる必要はないだろう。
鷹野と深月、そして榊の昔の話だ。
もう一人のヒロが死んでしまった後、鷹野が深く傷ついていて、深月はその痛みを共有したくて、そんな時のお話。

幼さ故に深月を傷つけてしまう鷹野が痛々しい。
ヒロを失った痛みを、深月にぶつけてしまう鷹野が悲しい。
でもやっぱり物語の終わり方は優しい。
しっかし榊は男前だな。
乱暴な言葉遣いとは裏腹な優しい行動。
まだ中学生だとはとても思えん。


総評として、やっぱり締め方がいい。
全部優しい。
作者の登場人物を見つめるまなざしの温かさが伝わる。
残念なのは、清水と昭彦が全く登場しなかったことか。
まあ八人全員は無理だったか。
この二人のその後も読みたかったのだが。

面白かったが、やはり辻村深月は長編向きだと感じた。
あの終盤での伏線回収と怒涛の展開をするには短編では短すぎる。
まあそれでも、どこか懐かしさを感じる、いい作品だった。


評価:A+


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Edit / 2011.12.06 / Comment: 4 / TrackBack: 0 / PageTop↑
未来のおもいで
カテゴリ: 梶尾真治 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第百四十五回
梶尾真治の『未来のおもいで』

白鳥山で沙穂流という女性に出会った滝水浩一。
滝水は沙穂流が置き忘れていった手帳を手掛かりに、彼女を探す。
そして、彼女と自分が別の時を生きているという事実を知る。

梶尾真治は好きな作家だ。
そして彼はタイムスリップ系統の作品は得意のはずだ。
だが今作に関しては正直微妙と言わざるをえない。
『この胸いっぱいの愛を』や『黄泉がえり』を書いた作者とは思えない。
物語は淡々と始まり、特に山場もなく淡々と進み、意外な結末もなくそのまま終わる。
キャラクターにも魅力がない。

最近当たりを引かないので、過去に読んだ良作を読み返していた。
やはり辻村深月は抜群の安定感である。
文庫化している全作を読みなおしたが、一作も外れがない。
次に感想を書く予定である『ロードムービー』を読むために『冷たい校舎の時は止まる』を読み返そうと思ったことがきっかけだったが、いや~やっぱりいいな~。
二回目だと散りばめられていた伏線に気付いてにやりとする。
一回目だと気付かずにスルーしていた所なんかもあっていい。
なかでも『スロウハイツの神様』が一番好きかな。

ついつい他の作家を語ってしまった。
続きは『ロードムービー』の時に。


評価:D


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Edit / 2011.12.02 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
プロフィール

gaker

Author:gaker
福井晴敏と本多孝好が好きです。大好きです。
もう家に本を置く場所がありません。

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2008 11/13(木)開設

評価基準
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D:ん~、微妙
E:読み進めるのが苦痛
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