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ストロベリーナイト
カテゴリ: 誉田哲也 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

「いいか。人間なんてのはな、真っ直ぐ前だけ向いて生きてきゃいいんだよ」


第百十一回
誉田哲也の『ストロベリーナイト』

ある日、ビニールシートに包まれた男の惨殺死体が発見された。
主人公の捜査一課の警部補、姫川玲子はこれが単独の殺人事件でないことに気付く。
捜査線上に浮上する、ストロベリーナイトという言葉とは?

いやあ、これは面白かった。
ショッキングな一文、そしてさらにショッキングなシーンから物語は始まる。
ストロベリーナイトなんてタイトルだから、青春恋愛小説かと思って読むと衝撃を受けるだろう。
ストロベリーナイトが示すものはそんなに甘いものではない。
観客の一人が無作為に犠牲者になる公開殺人ショーだ。

またキャラクター造形がいい。
主人公の玲子を筆頭とした姫川班の面々。
特にへたれでほとんどいいとこなしだった菊田が好き。
へたれだからこそ好き。
酒の勢いを借りて強気になった時が唯一の見せ場だった(笑)
その時の玲子のリアクションが普段とのギャップも相まって可愛らしい。

また他の脇役達も一癖も二癖もあっていい。
懐の深い上司の今泉。
抜けているのか鋭いのか分からない井岡。
そして最初は敵役として登場したが、意外にも渋い活躍をするガンテツこと勝俣がいい。
実は実直な刑事だったってのがいい意味で裏切ってくれた。

そして玲子の過去のエピソードがまた、ぐっと来る。
全員敬礼のシーンなんて鳥肌ものだ。
こういうエピソード、警察のこういう部分はたまらなく好きだ。

まあ粗もあると言えばある。
黒幕の北見について、伏線は張られていたが掘り下げがほとんどない点だ。
まあ、犯人サイドの中心はエフだからいいと言えばいいのか。
そうそう、伏線と言えば最初の北見が捜査会議で口を押さえていたシーン、あれは笑っていたんだな。

エフの正体も直球と言えば直球か。
まあ、男ではないことはなんとなく予想がついたし、そうなると一人しかいないかなって感じ。
ミステリーの部分より物語を楽しむ作品ということか。
それならそれで文句はない。

とにかく面白かったのは間違いない。
物語に引き込む力がすごかった。
シリーズものなので次作を読むのが楽しみだ。
次作では菊田も活躍するだろうか。


評価:A+


ストロベリーナイト (光文社文庫)ストロベリーナイト (光文社文庫)
(2008/09/09)
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Edit / 2011.03.25 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
百万の手
カテゴリ: 畠中恵 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第百十回
畠中恵の『百万の手』

『とっても不幸な幸運』に続き畠中恵の現代物。
過呼吸の発作持ちの主人公、音村夏貴。
ある日親友の正哉が目の前で火事で死んでしまう。
しかし死んだはずの正哉が携帯の中から話しかけてきた。
不審火であった火事の真相を探るため、夏貴と正哉は動き出す。

何というか詰め込みすぎな印象を受ける。
『とっても不幸な幸運』よりは読みやすかったが、やはり物足りなさも感じた。
それと正哉の退場が早すぎる。
あのタイミングで退場したら携帯に宿った意味がないではないか。
さらにいえば和美も引っ越してそのままフェードアウトとか。
キャラクターの使い捨て感がある。

後やっぱり詰め込みすぎ感が否めない。
クローンに、卵子提供に、異常な愛情を示す母親に、そのせいで起こる過呼吸に、携帯に宿る死んだ親友に。
今作が初めての現代物らしいから、張り切って詰め込みすぎたのか。

犯人に関しても、その後に関しても伏線があんまり張られていないのがな~。
唐突に感じてしまう。
意外ではあるのだがやられたとは思わない。

やっぱり時代小説の書き手何じゃないかという結論かな。


評価:C


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Edit / 2011.03.25 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
戦国妖狐 6
カテゴリ: 水上悟志 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

もう人の身に戻れなくとも
おれがずっと傍らに居る


漫画感想第十九回
水上悟志の『戦国妖狐』第6巻

第一部完である。
まずバリーと真介の戦いに決着がつく。
ここにきて荒吹の人格に変化が訪れる。
血を欲するだけの人格だったのが何か悟ったようになる。

世俗など乱世も太平も
天の下には斉しく只地


後の迅火の言によれば荒吹は闇となったらしい。
さあ、決着だ。

天地割り!!!


mini_CIMG1754.jpg
凡人真介の唯一の特技。
格好いい。
その後真介との殴り合いの末、体を形どる霊力を失ったバリーは力尽きる。

そして、道錬の敗北を知った野禅は泰山を動かすことにする。
これがその泰山の完全状態とそれを張り倒すためにやってきた山の神のお山だ。
mini_CIMG1756.jpg
スケールがでかい(笑)
左下の迅火たちがちっちゃい。

そして山の木々をミサイルのように打ちだす。
mini_CIMG1757.jpg
もう目茶苦茶だ。
だがそれが面白い。

りんずが伸びた泰山の上にいることによって追撃ができなくなった山の神。
これによって膠着状態が生まれ、七尾の迅火と九尾の野禅の戦いが始まる。
当然九尾の野禅の方が力は強く、苦戦する迅火。
その実力差を埋めるため迅火は驚くべき手段に出る。
mini_CIMG1758.jpg
泰山の肉ごと霊力を喰らい、光の尾、天上と闇の尾、奈落を生やした迅火はついに九尾となる。
mini_CIMG1760.jpg
しかしその代償として迅火は正気と狂気の狭間に立つことになる。
そしてそれを野禅へ利用される。
幻術でたまを自らの手で殺した様を見せられた迅火は狂気へと落ちる。
だが、野禅の隙を突き、真介が一太刀浴びせることに成功する。
mini_CIMG1761.jpg

一方迅火の霊力の上昇はとどまるところを知らなかった。
変化が急すぎたのと、正気を失ったのとで土地の精気を喰らうスピードに歯止めが利かなくなっているのだ。
そして迅火は九尾をはるかに超える神獣、神話殺しの千本妖狐へと変貌を遂げる。
mini_CIMG1763.jpg

可哀想に
もう彼らの旅に
一件落着やめでたしめでたしはない


またたまも、迅火の霊力が逆流し強い霊力を得る。
それで迅火の元に向かうが、たまの言葉も届かない。
迅火の正気の部分の必死の叫びでたまを殺すのは避けた。
そして――

覚えているか?
ここに来る前言ったこと
闇になれたら夫婦になろうと
嬉しかった
いいぞ
約束通り夫婦になろう



しかし、りんずの魂寄せでたまは迅火と引き離される。
そしてその後謎の五人組がした何かによって、迅火は姿をくらませる。
たまは行方の分からない迅火を探して一人旅へ出る。

迅火はいずれすべてを滅す危険な存在になった。
正気に戻すにせよ倒すにせよ、あの五人組を含めてまともに対峙できるものが必要となる。
そしてそれに一番近いのは千魔混沌の魔神の卵、千夜だと山の神は言う。
ここで第一部完となる。

いやあ、何がいいって展開が早いのがいい。
変な引き延ばしがなく、一ページの濃さがすごい。
水上作品の特徴か。
ともすれば唐突な展開に感じてしまうかもしてないがそうはさせていない。
さすが『惑星のさみだれ』を見事完結させた手腕だ。
そして主人公がラスボス。
熱い。
さみだれはヒロインがラスボスだったな。
作者はこういう展開が好きなのだろうか。
私は好きだ。

ところで、千本妖狐と化した迅火はもう山の神でもどうにもできないレベルまで達してしまったのだろうか。
それとも山の神は自らが関わるつもりはないということだろうか。
どっちだろう。

迅火とたまの出会いを描いた読み切りも収録されている。
にしても、四尾の妖狐なのに、やっぱ戦う力はないんだな。
くずのははどうなんだろう。
作者のいう矛盾とは迅火が山戸家の息子であるということを知らなかった辺りのくだりだろうか。
多分そうだろう。


評価:AA+


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Edit / 2011.03.21 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
とっても不幸な幸運
カテゴリ: 畠中恵 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第百九回
畠中恵の『とっても不幸な幸運』

『しゃばけ』シリーズで有名な畠中恵の現代物。
「酒場」という人を食ったような名前の酒場で、「とっても不幸な幸運」という不思議な缶をめぐって繰り広げられる様々な出来事。
ひねくれものだが、世話焼きな店長が、曲者ぞろいの客達が持ち込む厄介事を解決するという内容だ。
缶を開けた人間に訪れるのは不幸か幸運か。

あらすじだけを見ると結構好みな内容なのだが、ん~。
やっぱり時代小説家なのかな、という感じ。
何となく読んでいて物足りないというか、無理があるというか、そういう印象を受ける。

マジシャンのキャラクターがなんとなく『しゃばけ』っぽかった。
なんとなくだが。

まったく面白くない訳ではないのだが。
素直に面白かったとは言えないか。
そんな感じ。


評価:C-


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Edit / 2011.03.19 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
私の男
カテゴリ: 桜庭一樹 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

「好きよ。おとうさんは、娘に、なにをしてもいいの」


第百八回
桜庭一樹の『私の男』
第138回直木賞受賞作

物語は花の結婚から始まり、震災で孤児となった十歳の花を、二十五歳の淳悟が引き取り親子になるまでを時を遡って書かれている。
それは二人の罪を遡ることでもある。

評価が難しい、ただ、凄い、作品だ。
何か圧倒的な力がある。
人を選ぶ作品だろうと思う。
だが私は圧倒された。
単純に好きとは言えない。
だが圧倒されたのだ。
二人の犯した罪にだろうか。
二人の犯した禁忌にだろうか。

淳悟は不思議な魅力のある男だ。
落ちぶれた貴族のように優雅、らしい。
イメージできるようなできないような。
そして時系列によって、別人のようにも見える。
若くなるほどまともで、理解可能な人間になっているように感じる。
一番不思議で、よくわからないのが40歳の淳悟だ。
花との関係が淳悟を変えていったのか。
きっかけは、花が罪を犯したことか。
いやそれを言うなら、やはり花との「関係」こそが原因か。

逆に花は若い時の方が不可解に映る。
そう言えば花が時間にルーズなのは何でだったんだろう。
原因については確か触れられていなかったはずだ、多分。

淳悟ではない方の花の父親だが、彼は全てを知りながら花を娘として育てた。
そして最後に花をトラックに乗せて「生きろ」と言った。
きっと娘として愛していたのだろう。
例え血が繋がっていなかったとしても。
だがその愛情は娘には伝わっていなかったのかもしれない。
そう思うと、切ない。

田岡は、殺人を犯す人間は根本から、他の人間とは違う人間だと言った。
私は違うと思う。
そう思う私は田岡の言うところの分かっていない人間なのかもしれない。
それでも私は違うと思う。
その一線は普段は気付かないだけで、すぐそばにあるのだ。
私の、そしてあなたのすぐそばにも。
それで、その線は、環境や出来事などの何かのきっかけで越えてしまえるものなのだ。
生まれつき、その線のすぐそばに立っている人もいるだろう。
比較的遠くに立っている人もいるだろう。
だがその違いは程度でしかない。
誰もが越えられるのだ。
そう、思っておかなければいけないと思う。
この田岡の考えは、桜庭一樹の考えだろうか。
それともそうあってほしいという願いだろうか。

色々と考えるところの多い作品だった。
だがこれが直木賞に選ばれたというのはすごいな。
調べたら評価は割れていたようだ。
これだけの問題作だ、そりゃあ評価も割れるだろう。
私の評価としては、うん、面白かった。


評価:AA-


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Edit / 2011.03.12 / Comment: 0 / TrackBack: 1 / PageTop↑
君に届け 13
カテゴリ: 椎名軽穂 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

…うん
ちょっと……
肩貸してよ


漫画感想第十八回
椎名軽穂の『君に届け』第13巻

また例によって顔が緩んでしょうがない。
人前では読めない漫画だ。

夏休みの補習、講習の後、海へと出かけた一行。
爽子も自己主張するようになってきたな~。
いいことだ。
そしてケントが切なくてやのちんがいい女だ。
mini_CIMG1746.jpg
初登場時はウザいとか思ってごめんよ。
何だよ、いい男じゃないか。
風早の方がよっぽどウザいよ。
でもこの巻の風早はまあ良かった。

ナンパの男を腕相撲で十人抜きするちづがあほでいい。
そんで龍も切ないな。
mini_CIMG1747.jpg
でも全く脈なしでもなさそう、いやないのか?
少しちづの気持ちに変化はあったかも。

そして前巻で風早が黒沼家を訪れたが、今回は逆に爽子が風早家を訪れる。
風早母は何か雑で元気な人だ。
風早父は意外にも頑固親父だった。
弟はまあこれは予想通り生意気。

それで、風早の部屋でニヤニヤタイム。
手も触れていないのにこんなにニヤニヤさせられるんだからすごい。
mini_CIMG1748.jpg
駄目じゃねーよへたれ。
そしてこれだ。
mini_CIMG1749.jpg
もうね、爽子がね、可愛すぎる。
駄目だわもう。
名前で呼び合っただけでこの赤面。
あーもう。

それから修学旅行編スタートだ。
ちょっと龍を意識し始めたちづ。
この二人も上手くいくといいな~。
そしてついにやのちんにも彼氏が。
mini_CIMG1750.jpg
正統派イケメンである。
しかしこの茂木君。
すぐにふられる予感がビンビンする。
上手くいかないんだろうなあ。
かわいそうに。
個人的にはやのちんはケントとくっついてもいい気がしてきた。
ピンはなぁ……。

mini_CIMG1751.jpg
この爽子が可愛い。

後、全編にわたってだが、やのちんやケントの、風早いじりが好き。
ほら、風早ウザいから。
胸がすく思いだ。

今巻も面白かった。
相変わらずのニヤニヤっぷりだ。
もうね、終わらなくていいよ。
ずっとニヤニヤさせて下さい。


評価:AA+


君に届け 13 (マーガレットコミックス)君に届け 13 (マーガレットコミックス)
(2011/03/11)
椎名 軽穂

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Edit / 2011.03.11 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
神様のパズル
カテゴリ: 機本伸司 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第百七回
機本伸司の『神様のパズル』
第三回小松左京賞受賞作

就職も決まらず、下手したら留年までありうる僕がゼミの担当教授から頼まれたのは、不登校の天才少女、穂瑞沙羅華をゼミに参加させることだった。
僕は沙羅華に会ってみるも、けんもほろろに断られる。
しかし、「宇宙を作ることはできるのか?」という疑問を叩きつけると、彼女はゼミに出てきた。
それはそのままゼミのテーマとなり、僕は沙羅華と二人で、宇宙が作れることを立証しなければならなくなったのだ。

物語は、僕、綿さんこと綿貫基一の日記という形で進められるが、基本的にはただの一人称だと思ってもらえばいい。
日記という形式を取る必要は特にないようにも思う。

挿絵などはないが、表紙からするとライトノベルに分類されるのだろうか。
だが内容はしっかりSFしている。
青春SFといったところか。
青春物は大好物だ。
大学生のゼミや、天才少女穂瑞沙羅華と落ちこぼれ学生の僕との対話という形をとることで、知識のない素人も、不自然さのない説明で、物理のことについて、なんとなくわかったような気になれるのもいい。
あくまでわかったような気に、だが。

沙羅華の人物造形がいい。
彼女は精子バンクを利用して作られた天才児で、四歳で微積分を理解し、九歳でこの物語で重要となる研究施設“むげん”の基礎理論クロストロン方式を発案した。
そして今は16歳にして飛び級で大学の四回生だ。
超ド級の天才少女である。
性格はクールで無愛想。
男のような、しかも時代がかった話し方をする。
元々そんな性格だったのか元来は違ったのかは今一つ分からない。
天才少女を演じていたとの言もあったから、元々芯の部分はそうだったのかもしれない。
だが、思春期の少女らしい脆さも併せ持つことがだんだんとわかっていく。
そしてそれは天才ゆえの脆さでもある。
その辺りのアンバランスに揺れ動く感じがいい。

ストーリーは、僕と沙羅華の対話が中心となり進んでいく。
二人で宇宙の作り方を考えていく訳だが、実際は沙羅華が考えたことを僕に説明する、といった具合だ。
それを繰り返して、二人はとうとう現実に実現可能な宇宙の作り方を発見する。
そして沙羅華の暴走が始まる。

宇宙とは何かという問いは自分とは何かという問いにつながる。
また当然自分とは何かという問いは宇宙とは何かという問いにつながる。
突き詰めて考えればこの二つは話すことのできない問題だったのだ。
沙羅華は“彼”に聞きたかったのだ。
自分の生まれてきた意味を。
突き詰めればそんなものはないということになってしまい、また誰もが一度は思い、答えられないその意味を。
そんなこと考えてもしょうがないと思い人もいるだろう。
考え続ける人もいるだろう。
考えもしない人は、かなり少ないのではないか。
自分なりの結論を出す人もいるだろう。
ちなみに私は自分なりの結論を出した。
生まれてきたことに意味などない。
だから人生とは自己満足に過ぎない、と。
けして悲観的に考えている訳ではない。
楽しみも悲しみも誰かを愛することも憎むことも全て自己満足だ。
でも、それでいいんだと思う。
生命は自分というフィルターを通してしかものを見ることはできないのだから。

話がそれた。
沙羅華は本気だったのだろうか。
多分そうだろう。
だが止めてほしいという思いもどこかにあったのではないか。
現に僕の説得には少し心が動いていたようだった。
母親と相理さえしゃしゃり出てこなければ、どうなったかわからなかったのではないか。

沙羅華の父親については予想はついていた。
だが矛盾がある。
彼は有能かもしれないが特に大きな業績を残している訳でもないだろう。
何故そんな彼の遺伝子を選んだのか。
少しこの辺はご都合主義的なところを感じる。

最後の沙羅華の変化にはびっくりだが、沙羅華にとっては良かったことなのだろう。
その年代でしか体験できないことはある。
沙羅華はそれをすっ飛ばしてきてしまっていた。
それが彼女のアンバランスさにつながっていたのだろう。

さて、結論だが、面白かった。
少し近未来が舞台なのでどこまでが現在の事実でどこからが作者の創作なのかは私にはわからないが、宇宙蘊蓄なども楽しめた。
クライマックスには引きこまれたし、SF小説としても青春小説としても良作なのではないだろうか。
ただ最後のまとめ方が少し微妙な感じがした。
とっ散らかされた感じというか。
もうちょっときれいにまとめられたのではないかと思った。

余談だが、相理が沙羅華に手を出したのは恐らく三年前。
沙羅華は十三歳(!)だ。
善人面してとんだ危険人物ではないか相理は。


評価:A


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(2006/05)
機本 伸司

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Edit / 2011.03.07 / Comment: 2 / TrackBack: 0 / PageTop↑
プラスティック
カテゴリ: 井上夢人 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第百六回
井上夢人の『プラスティック』

この小説は、54個の文書ファイルが収められたフロッピイがあり、それを順番に読んでいくという形式になっている。
一つ目のファイルには、出張中の夫を待つ間に奇妙な出来事に遭遇した主婦、向井洵子の日記だった。
その後、全ての出来事を俯瞰しうる立場にいるらしい人物、高幡英世による解説のファイルが来る。
そして、書き手を変えて、ファイルは続いていく。
死んだはずの人間がファイルを書き、矛盾が矛盾を呼んでいく。

とはいっても、そのからくりは、早い段階から予想がつく。
井上夢人の作品なのだから、ついつい穿った読み方をしてしまうし。
だが最後にもう一捻りがあった。
さすがは井上夢人だ。
読まれることも想定内だったようだ。
高幡すら、本多初美の一人格でしかなかったとはすっかり騙された。
カウンセラー的な立場の人だとばかり思っていた。
でもそれだとわざわざ文書にする必要がないのだ。
そこで気付くべきだった。

最後の趣向も良かった。
物語の終わりをあんなやり方で終わらせるとは。
いやはや何とも言えない読後感だ。
だが、これしかないという終わり方だ。

面白かったのだが、井上夢人にしてはシンプルだなとも感じた。
「メドゥサ、鏡をごらん」で味わった、パニックに近い読後感とは違い。
何とも言えないが、一つの結論がはっきりと提示されたラストはミステリーと呼んでいいのだろう。
個人的には、もう一捻り二捻り欲しかったところだ。


評価:B


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(2004/09/14)
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Edit / 2011.03.07 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
神々の遺品
カテゴリ: 今野敏 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第百五回
今野敏の『神々の遺品』

『海に消えた神々』の前作。
読む順番を間違えた。

アメリカで、存在していたはずの超常現象研究機関、セクションOが姿を消した。
同時期、日本では著名なUFOライターが殺された。
そして、私立探偵の石神の元に持ち込まれた依頼は行方不明になった友人の捜索。
だが、その友人はUFOライター殺しの容疑者だった。

また例によって若者批判をちょくちょく入れてくる。
そんなに嫌いか、若者が。

今作もストーリーよりもオーパーツなどの蘊蓄に割かれたページが多い。
『海に消えた神々』と二作連続で読んだのでお腹いっぱいだ。

アメリカの裏の部分が描かれているにもかかわらず、重厚感というか、そう言ったものを感じさせない。
何というか薄いのだ。
最後も切り札を切ったらとんとん拍子に解決してしまった。

う~ん、これも凡作。


評価:C


神々の遺品 (双葉文庫)神々の遺品 (双葉文庫)
(2002/12)
今野 敏

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Edit / 2011.03.06 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
海に消えた神々
カテゴリ: 今野敏 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第百四回
今野敏の『海に消えた神々』

ある高名な大学教授が死んだ。
自殺だと報道される中、私立探偵の石神の元に一人の少年が尋ねてくる。
少年は死んだ教授の娘の友人で、教授の死は自殺じゃないかもしれないので、それを調べてほしいと石神に依頼する。
事件の背後には沖縄の海底遺跡の捏造の疑惑があった。
果たして教授の死は自殺なのか。

『神々の遺品』という作品の続編のようで、気付かずに先に読んでしまった。
まあ、ネタバレはなかったから別にいいが。

実はこの作品はずっと気になっていた作品だったりする。
あらすじを読んで面白そうだと思っていたが、なぜかずっと買わなかった。
それで今回読んでみたが、内容は、うん、まあ、微妙かな。

紋切り型の若者批判をちょいちょい織り交ぜるのはやめてほしい。
著者の主張なのか、そう思っているキャラクターなのか。
恐らく両方だろう。
何というか醒めてしまう。

さて、内容だが、ストーリーよりも、古代遺跡に関する蘊蓄に割いたページの方が多いくらいだ。
ストーリーはかなり希薄だし、犯人も何というか、謎解きもあったもんじゃない。

つまらないとまでは言わないが、これといった盛り上がりもない。
まあ登場人物のキャラが立っていると言えば立っているか。

凡作かな~。


評価:C


海に消えた神々 (双葉文庫)海に消えた神々 (双葉文庫)
(2005/03)
今野 敏

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Edit / 2011.03.06 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
正義のミカタ I'm a loser
カテゴリ: 本多孝好 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

「僕は違うかっこよさを目指します。あ、いや、そうじゃなくて、たぶん、かっこよくない何かを目指します。かっこいいのって、僕にはきっと似合わないから」


第百三回
本多孝好の『正義のミカタ I'm a loser』

本多孝好は長編より短編が面白いと思っていた。
今でもその考えは変わっていないが、この作品は長編にして、かなりレベルが高い。
『真夜中の五分前』ですこしがっかりしたが今作はすごくいい。
まあ、私が青春小説が好きだと言うのもあるだろうが。

主人公の蓮見亮太は筋金入りのいじめられっ子だった。
一念発起し大学に入学、晴れて憧れのキャンパスライフを満喫するはずだったのだが、何といじめの主犯の畠田まで同じ大学に入学していたのだ。
大学に入ってまでいじめられるのかと思ったその時、亮太を救ったのは、高校ボクシングのフェザー級でインターハイ三連覇を成し遂げ、今、飛鳥大学、「正義の味方研究部」に所属する男、トモイチだった。
そして亮太も正義の味方研究部に入部することになり、元いじめられっ子のプライドに賭けて事件に関わっていく。

いやあ面白かった。
今作の主人公、亮太は今までの本多作品の主人公達とは一線を画す。
どこか冷めていて、捻くれた、それでいて格好いい今までの主人公達。
一転、亮太は元いじめられっ子で、ダサくて、情けなくて、スケベだ。
その亮太が格好悪くたって頑張るその姿こそ格好いい。
まあ私は両方好きなのだが。

亮太の唯一の特技が相手の攻撃をよけることだ。
よけた後の攻撃もトモイチに教わって練習したが役に立つことはなかった。
いや、というかよけることもほとんど役に立っていない。
ヤンくんのパンチをかわしたくらいか。
最後の勝負では毛ほども役に立たない。
まあ、あれはそうすることに意味があったのだろうが。

正義の味方研究部の活躍は読んでいて小気味いいし、単純にスカッとする。
だがもちろんそれだけの話ではない。
少し怖くて、それでいて人を惹きつける間先輩という男。
彼との対決が中盤の山場となる。
亮太は彼に影響を受け、少なからず変わる。

そして最後の勝負へ繋がっていく訳だが。
そこにこの作品の唯一の欠点がある。
何というかあまりに唐突過ぎるのだ。
いや、あの時亮太の熱が冷めた理由は分かるし、その後の思考もわかる。
だがやはり唐突感はぬぐえない。
もっと以前から伏線を張っておくべきだったと思う。
間先輩の影響なども少なからずあるだろうが、それでもまだ足りない。
だから、なんでそうする必要がある、と思ってしまう。
亮太にとって譲れない一線なのだろう。
それは分かる。
分かるからこそもっとページを割いてほしかった。

とはいえ、最後の勝負自体は熱いものだった。
優姫先輩がガチンコする気満々なのが良かった。
ああいう自分が美人であることを自覚して、公言できてしまうキャラクターは好きだ。

まあとにかく、面白い小説であることは確かだ。
自信を持ってお勧めできる。
終わり方も余韻があっていい。
読後感も素晴らしい。
そしてなんといっても、格好悪い亮太が最高に格好いい。
ぜひみなさんにも読んでいただきたい。


評価:AA


正義のミカタ (集英社文庫)正義のミカタ (集英社文庫)
(2010/06/25)
本多 孝好

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Edit / 2011.03.04 / Comment: 2 / TrackBack: 0 / PageTop↑
プロフィール

gaker

Author:gaker
福井晴敏と本多孝好が好きです。大好きです。
もう家に本を置く場所がありません。

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2008 11/13(木)開設

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