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らせん
カテゴリ: 鈴木光司 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第四十七回。
鈴木光司の『らせん』

いや、これは凄い。
度肝を抜かれた。
第五章以降の衝撃はかなりのものだった。
いや、不覚にも名前が出るまで全く気付かなかったな~。
裏で手を引く人物の存在に。

いやほんとに凄いわこれは。
解説でも言われているようにこの『リング』シリーズはホラーという括りだけで語られるべきものではない。
SFでもあり、ミステリーでもある。
強いて分類するならばSFが一番近いだろう。
こういうとホラーの皮を被ったSFを書く小林泰三を思い出すが、鈴木光司は特にSFに拘りがあるわけではないらしい。
というか、ジャンルに対しての拘りを持っていないようだ。
面白い「小説」を書くのが目的なのだろう。

以下ネタバレ。

物語は前作の最後で命を落とした竜司の解剖から始まる。
今回の主人公となるのは竜司の大学時代の友人でもある、監察医の安藤で、彼が竜司を解剖することとなる。

前作の主人公、浅川とその家族についてものちにに明らかになる。
何と浅川の妻子は死んでいた。
前作の引きから考えれば、浅川は妻の両親にテープをダビングして見せただろうから、妻子は助かっているはずだ。
間に合わなかったのか、あるいは妻が両親にダビングしたテープを見せる事を拒んだのか。
しかし、妻の両親も死んでいることが明らかになり、浅川の妻子はダビングして他人に見せたにもかかわらず、助からなかったことがわかる。

まさかダビングして他人に見せるというかの有名な貞子の呪いを回避する方法が、通じなくなるとは思っていなかった。
そしてこうなると、なぜ浅川だけが死ななかったのか、ということが問題となってくる。
また、竜司の遺品からビデオを見つけて見てしまった、高野舞が失踪し、この二つの謎を追うのが物語の筋となる。

まず、荒唐無稽な内容にリアリティを持たせているのがいい。
もちろんここで言うリアリティ、つまりフィクションに求められるリアリティというのは、実際にありうるということではなく、「ありそうに思える」ということだ。
その点でこの小説は、呪いという超常現象に論理的な裏づけを与えることに成功している。
山村貞子という稀代の超能力者と、根絶の危機に晒された天然痘ウィルスが交わったことによって、呪いが誕生したのだ。

そして、まさか竜司が裏で糸を引いていたとは。
いや、全く気付かなかった。
不覚だ。
竜司のメッセージは安藤に真実を伝えるため、と信じて疑わなかった。
『リング』の感想で竜司は情緒不安定と書いたが、とんだ勘違いだ。
奴はそんなものじゃなく、山村貞子のパートナーとして選ばれた、恐ろしく冷静な狂気の持ち主だ。
惜しむらくは『リング』において十分な伏線が張られていなかったことだ。
と、ついさっきまで思っていたのだが、よくよく考えてみると、あった。
この台詞だ。

「でかい声出すなって。オレが怖がってないもんだから、不満なのかい? いいか、浅川、前にも話した通り、オレはもし見れることなら、世界の終わりを見たいと思っている人間だ。この世の仕組み、つまり、始まりと終わりの謎、極大と極小の謎を解き明かしてくれる奴がいたら、命と引き換えでもそいつから知識を引き出そうとするだろうな。お前はオレのことを活字にしたんだ。覚えているはずだぜ」



脱帽だ。
伏線もしっかりと張られていた。
しかもよく考えてみたら竜司の心理描写はほとんどない。
竜司にとって浅川の持ち込んだ呪いのビデオは渡りに舟だったのだろう。
いやこれは考えすぎか。
竜司が貞子と協力関係を結んだのは死後のことか?
そして、恋人の命と引き換えに山村貞子を現世に蘇らせた。
いや、高野舞が貞子の写し身であったのだから、竜司を育てたのもまた貞子か?
いやしかし、舞の心理描写はあるしな~。
やっぱり違うか。

また、今作で始めて貞子が登場するわけだが、それは貞子と聞いて誰もが思い浮かべる、映画版の奇怪な動きでテレビ画面から這い出てくる化け物ではない。
初登場時こそおぞましい雰囲気を漂わせているが、外見は美しい女だ。
となると、映画版の『リング』は前作とは全く別物と考えるのいいだろう。
貞子はあんなわかりやすい化け物ではない。
もっと理性的で、静かな狂気をもっている。
そこにあるのも恨みなどというありふれた感情ではなく、増殖に対する欲求。
人類とは別種の生物としての生存本能だといった方がいい。
まあ、映画も商業作品としては成功だったのは間違いないだろうし、面白いのは面白かったのだけど。
やはりわかりやすい恐怖の方が一般ウケはするのかな。

そうそう、作中作『リング』の小説化、映画化、というメタ的な展開もよかった。
まさか自分の読んでいるこの本は?
と一瞬でも思ってしまう。

いやー、続きが気になるな~。
全世界が貞子になるってのはぞっとしないな(笑)

最後に題名について深読み。
『リング』は閉じた世界。
つまり完全な両性具有で一人での生殖が可能な貞子。
『らせん』は変化しながら続いていく世界、。
進化するリングウィルスか、侵食されていく世界か、あるいは遺伝子構造か。
となると『ループ』は?
同じことの繰り返しの意だろうが……、多分この後の展開に深く関わっているのだろう。

いまさらすぎる感想だけど、本当に面白かった。
『ループ』と『バースデー』も早く読もう。



評価:AA



らせん (角川ホラー文庫)らせん (角川ホラー文庫)
(1997/11)
鈴木 光司

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Edit / 2009.02.27 / Comment: 4 / TrackBack: 1 / PageTop↑
リング
カテゴリ: 鈴木光司 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第四十六回。
鈴木光司の『リング』

あまりにも有名すぎて何となく二の足を踏んでたけど、やっと読んだ。
まあ映画は見たことがあったので大体の筋は覚えていた。
でも十分面白かった。
映画版では松島奈々子が主演だったかな。
主人公の性別が変わってるのはそのほうが受けがいいからかな。
他の違いは、半陰陽のこととかかな。
あと有名な貞子がテレビから出てくるシーンもなかった。
というか、死ぬシーンはほとんど描写されていない。

最後がもろに「続く」の形だった。
映画もこの終わり方だったかな。
小説でこういうのは意外と珍しいよな~。
シリーズ物でも一巻ごとに一区切りってのが多いし。
これの続きは『らせん』になるのかな。

正直あんまり怖くはなかったかな~。
映画は怖かったけど。
後は竜司のキャラがよかったかな。
ただの情緒不安定じゃないか(笑)

謎もほとんど明かされていないので次巻に期待。
映画も第一作しか見てないしね。



評価:B+



リング (角川ホラー文庫)リング (角川ホラー文庫)
(1993/04)
鈴木 光司

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Edit / 2009.02.25 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
スメル男
カテゴリ: 原田宗典 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

「赤ん坊の匂いだね。ねえ、そうだろう」


第四十五回。
原田宗典の『スメル男』

死んだ親友の研究していた物質に触れてしまったことで、嗅ぐだけで嘔吐してしまうような悪臭を放つようになってしまった無嗅覚症の青年が、天才少年らと協力して、米陸軍がバックに控える組織と戦う、そんな話。

それにしても主人公がかわいそう過ぎる。
主人公の発する臭いを鼻で嗅いでしまった人はほぼ例外なく嘔吐している。
主人公は何度か吐瀉物を直で浴びている。
本当に無嗅覚症でよかった。
自分の体からそんな臭いがしているのだから本人だけは逃げようがない。
無嗅覚症でなかったら早々に発狂して自殺しているだろう。

ヒロインのマリノレイコはなぜ最後まで片仮名のままなんだろう。
何か意味があったのかな。
漢字で書くと何かが明らかになるとか。
それはないか。
彼女はとても優しい人だ、ウザイけど。
主人公の悪臭を嗅ぎ、嘔吐しても決して主人公を見捨てない、ウザイけど。
まあなんていうか、読めばわかると思うのだけど、ウザイ。

天才少年の二人がナイスガイだ。
特にマキジャクが。
しかも意外と武闘派。

ただ、少しいろんなものを詰め込みすぎてしまった感がある。
無嗅覚症、BC兵器、天才少年、米陸軍、etc。
主人公のどもり癖なんかも必要のないファクターだったような。
そのせいで、結局コメディーなのか、シリアスなのかよくわからなくなってしまった。

でもその辺りを差し引いても面白かった。



評価:B



スメル男 (講談社文庫)スメル男 (講談社文庫)
(1992/06)
原田 宗典

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Edit / 2009.02.23 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
Fake
カテゴリ: 五十嵐貴久 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

 目を逸らした。答える言葉を、俺は持っていない。


第四十四回。
五十嵐貴久の『Fake』

ハイテク技術を駆使したセンター試験のカンニングの前半。
嵌められた主人公達が復讐のためにギャンブルを仕掛ける後半、に分けられる。

加奈と西村、そして沢田の人物造形がいい。
根拠はないけど名前に「沢」のつく人は切れ者、あるいは実力者であることが多いような気がする。
この沢田もだし、沢村とか沢木とか。
格好いいしね。

以下ネタバレ。

いやね、面白かったんだけど、非常に大きな欠点が一つ。
裏表紙のあらすじあるでしょう?
それがね、ネタバレしすぎで非常に質が悪い。
最後の一行を引用する。

入念なイカサマを仕掛けた四人は、決して負けるはずがなかったのだが――!?


これじゃあ負けますといっているようなもんじゃないか。
いや、そこからもう一波乱あるんだけど、それにしてもこれは酷い。
途中まで全然どきどきしなかった。

あと、マイナスポイントとしては主人公の宮本のキャラクターかな。
結局一番頭が悪かったのは主人公じゃないかな。
しかも自分の事を賢いと信じ込んでいる上に他人を見下す傾向があるから質が悪い。
大体やくざが自分の店に隠しカメラ仕掛けられて気づかないはずがないだろうが。
何であんな杜撰な計画が成功すると思ったんだろう。
アレで完璧とか言っちゃうとか。
やっぱり主人公は馬鹿だ。
さらに思い通りにならなければ逆上する所とかもう駄目駄目。
何で安部が買収されている可能性に思い至らないんだ。
西村はちゃんと気付いていたのに。

ただ、どんでん返しの立役者の西村も賢いとはいえないだろう。
やくざから十億盗んでおいて無事ですむわけない。
メンツを潰されたやくざはこの世の果てまで追ってくるぞ。
何が参議院選挙にでるだ。
やっぱりこの人も馬鹿なのかな。
いやでも仮にも政治家だしな~。
宮本が思ってるほど無能ではないだろう。
というか宮本は西村親子を見下しすぎだわ。
まあでもこの辺は作者が意図的にやってる感はあったけど。


上で言ったように所々甘い部分もあったけど、おおむね面白かった。
読みやすかったし、話の組み立て方なども細部は甘くても基本はしっかりしていたように思う。
あらすじのことがなければもっと楽しめたのに。



評価:B+



Fake (幻冬舎文庫)Fake (幻冬舎文庫)
(2007/07)
五十嵐 貴久

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Edit / 2009.02.21 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
異邦人 fusion
カテゴリ: 西澤保彦 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第四十三回。
西澤保彦の『異邦人 fusion』

突然タイムスリップしてしまった主人公の影二が、殺された父と、それによって不幸になった姉を救おうとする話。
この姉はレズビアンなのだが、西澤保彦はレズビアン、というテーマを好んで使うようだ。
また、レズビアンの人に惚れてしまう男、というテーマも。
何かこだわりがあるのだろうか。
ひょっとしたら実体験か、と穿った見方もできてしまう。

以下、ネタバレ満載。

父親を殺した犯人はわかっていない。
そしてその時代にタイムスリップする主人公。
と来たら、もう答えは見えたようなものだ。
ずばり、未来、というか現代から来た影二が犯人!!
早い段階で真相を見抜いてやった。
……とか思っていた自分が恥ずかしい。

『七回死んだ男』であんなに鮮やかなオチを見せてくれた西澤保彦が、そんなべったべたな単純なオチを用意したいるわけなどなかったのだ。
犯人が影二であることが明かされるのは中盤以降なのだが、早い段階から仄めかされている。
気付いて当たり前だったのだ。
というかそもそも、殺人の犯人自体はたいした問題ではなかった。
それをあんなに浮かれて恥ずかしい奴だ(笑)

つまり、ミステリーではないということか。
主題としては、姉への欲望など、影二がいままで目をそらしていたことと向き合うことについてのほうに重きが置かれている。
おっさんの自分探し、と言えないこともないかな、と思う。

そして最後の方にまた謎がポンポン出てくる。
あのネコは、つまり、影二なのか?
だとしたらそれはいつの?
さらに未来の、か?
ネコがキーなのは間違いないんだろうけど。
ん~、他にヒントらしきものがあったかな。
ちょっと他の書評も見てみよう。




評価:A



異邦人―fusion (集英社文庫)異邦人―fusion (集英社文庫)
(2005/01)
西澤 保彦

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Edit / 2009.02.19 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
十三番目の人格――ISOLA――
カテゴリ: 貴志祐介 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第四十二回。
貴志祐介の『十三番目の人格――ISOLA――』
第三回日本ホラー小説大賞長編賞佳作。

貴志祐介の、デビュー作になるのかな。
多重人格を扱ったサイコホラーってとこだろうか。
貴志祐介自体は、結構好きなのだが、この作品はいかにもなタイトルに腰が引けて読んでいなかった。
が、やはり面白い。

イソラの正体については、まったくわからなかった。
かなり意表をつかれたな~。
あと、真部先生、コイツが完全に元凶だろ。
優柔不断のヘタレがここまで状況を悪化させるとは。

ラストは個人的にかなり衝撃だった。
後味は悪いとはいえ、アレで一件落着と思いきや。
いや~、凄いな。
一片の救いもないのか。

主人公含め、登場人物たちが必ずしも魅力的ではないのだが、それでも面白いのは凄いと思う。
作者の力量かな。



評価:A



十三番目の人格(ペルソナ)―ISOLA (角川ホラー文庫)十三番目の人格(ペルソナ)―ISOLA (角川ホラー文庫)
(1996/04)
貴志 祐介

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Edit / 2009.02.14 / Comment: 2 / TrackBack: 0 / PageTop↑
ワセダ三畳青春記
カテゴリ: 高野秀行 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第四十一回。
高野秀行の『ワセダ三畳青春記』

小説よりノンフィクションに近い。
大学生の青春小説を期待して買ったので、少し拍子抜けはしたが、面白くはあった。
高野氏や野々村荘の住人の無茶苦茶さは読んでいて小気味いい。
無茶苦茶すぎて社会不適合者なんじゃないかとも思う(笑)
実際野々村荘を出ていった後はどうしてるんだろうか。

高野氏が野々村荘を出て行く理由がいい。
少々長いモラトリアムだったようだが、高野氏は野々村荘以外の場所に居場所を見いだしたのだ。
恋はいいもんですね。



評価:C+



ワセダ三畳青春記 (集英社文庫)ワセダ三畳青春記 (集英社文庫)
(2003/10)
高野 秀行

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Edit / 2009.02.13 / Comment: 0 / TrackBack: 1 / PageTop↑
スコッチ・ゲーム
カテゴリ: 西澤保彦 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

 降りしきる雪の中、千帆は前を向いたまま手を伸ばし、千暁の手を探った。
 彼が獲得してくれた“自由”を、握りしめるために。


第四十回。
西澤保彦の『スコッチ・ゲーム』

読んでる途中で気付いたんだけど、これシリーズ物だったみたいで、シリーズ物は順番に読みたい私としては少しショックだった。
まあ知らなくても大丈夫な感じだったのでよかった。

内容としては、高校の女子寮で起こった連続殺人を解き明かす、といった感じだ。
犯人は、名前の件が確かに引っかかってたから、意外というわけではなかったけど、見抜けはしなかったな~。
あ~、なるほどって感じかな。

ただ、この作品の主題は事件部分というより、タカチの過去との決別と、所々にさりげなく描写されている、甘酸っぱいあれやこれやなんだろうと思う。
さりげなさ過ぎて読み飛ばしかけた。
やっぱりここらへんを楽しむためには、それまでのシリーズを読んどいたほうがよかったかな。
少し残念。



評価:B



スコッチ・ゲーム (角川文庫)スコッチ・ゲーム (角川文庫)
(2002/05)
西澤 保彦

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Edit / 2009.02.13 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
QED 百人一首の呪
カテゴリ: 高田崇史 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第三十九回。
高田崇史の『QED 百人一首の呪』
第九回目フィスト賞受賞作。

いや、実はこれ、いまやってるドラマの原作だと思って買ったんだけど、どうも違ったみたいで。
青春の甘酸っぱいなんやかんやとかは全然なかった。
失敗失敗。

さて、内容だが、百人一種の薀蓄が非常に長い。
多分半分くらいが薀蓄だ。
しかもその薀蓄と事件は正直関係ない。
拍子抜けだ。
薀蓄といえば京極夏彦を思い出すが、あれは薀蓄も面白かった。
でもこれは正直……、興味が持てなかった。
また結構分厚いしね。

人物にも魅力を感じなかったし、核心となる部分も、それは反則ちゃうか?ってねただし。
微妙かな~。



評価:D+



QED―百人一首の呪 (講談社文庫)QED―百人一首の呪 (講談社文庫)
(2002/10)
高田 崇史

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Edit / 2009.02.11 / Comment: 4 / TrackBack: 0 / PageTop↑
パーフェクト・プラン
カテゴリ: 柳原慧 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第三十八回。
柳原慧の『パーフェクトプラン』
第二回、『このミステリーがすごい』大賞受賞作品。

なかなか質は高いと思う。
確かに面白く読めた、面白く読めたのだが、特に残るものがないかな、という感じ。
軽い読み物としてはお勧めできる。

ただ、何と言うか、色んな要素を詰め込みすぎかな、とも思う。
株、児童虐待、代理母、美容整形、ES細胞……。
うん、欲張りすぎだ。
ストーリーに絶対必要というわけでもない。

あと、上手く説明できないのだが、呼んでいて何だか恥ずかしくなってしまう部分があった。
どことなくわざとらしいというか、何と言うか。
何かむず痒いんだよな~。

酷評してしまったが、最初に述べたように十分に面白い。
ある程度以上の水準は確実にある作品だ。



評価:B-



宝島社文庫「パーフェクト・プラン」 (宝島社文庫)宝島社文庫「パーフェクト・プラン」 (宝島社文庫)
(2005/01/15)
柳原 慧

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Edit / 2009.02.11 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
Separation―君が還る場所
カテゴリ: 市川拓司 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

 そう、とにかく、記憶の初めにあるのは、彼女のブラウスを透かして見えていた、下着のあざやかな白さだった。


第三十七回。
市川拓司の『Separation―君が還る場所』

この作者は以前に『そのときは彼によろしく』を読んだだけなのだが、はっきり言ってお気に入りだ。
映画化もされた、『いま、会いにいきます』が有名だろうか。
登場人物たちや文章も凄く繊細で、いい。
日常の中の非日常、少しSF的な仕掛けを好む作家のようだ。
『そのときは彼によろしく』もそうであったし、未読だが『いま、会いにいきます』もそうだと思う。
そして、『Separation―君が還る場所』は主人公の悟と、ある時を境に、若返っていく妻の裕子の物語だ。

この若返りというモチーフ自体は珍しいものではない。
確か、いま公開されている『ベンジャミン・バトン』という映画もそういった話だったと思う。
だけど、描き方がいいなあ、と思う。

裕子の若返りが進むにつれ、二人は孤立していく。
元々社交的なほうではないのだが、結婚式を挙げてくれた牧師夫妻以外と関わっていない。
作中で何度も言われるように二人は、二人だけの閉じた世界で生きている。
それは幸福なことなんだろうか。
不幸なことなんだろうか。
答えはわからないが、この二人すら、この完全に閉じた世界で生きていくことはできなかった。

非常に面白かったのだが、二人の特殊性故にだろうか、いわゆる普通の人々に対する視線が気になった。
あれは平凡を見下す視線だ。
凡俗の一人としては、やはり嫌味に感じてしまう。
まあ些細なことだが。

同じ作者の『VOICE』が気になる。
悟と裕子の高校時代の話らしい。
続編か?



評価:A+



Separation―きみが還る場所 (アルファポリス文庫)Separation―きみが還る場所 (アルファポリス文庫)
(2006/10)
市川 拓司

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Edit / 2009.02.11 / Comment: 2 / TrackBack: 0 / PageTop↑
ナイフ
カテゴリ: 重松清 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第三十六回。
重松清の『ナイフ』

久しぶりの更新。
ちょっと修羅場で、忙しかった。
ただその間も移動時間などで本は読んでいたのでレビューが溜まっている。
いや、全部やらなきゃいけない義務はないんだけど(笑)
まあでも面白かったのが多かったので、がんばろうと思う。

さて、また重松清の短編集だ。
五編収録されているのだが、いじめの話が多く、重い。
その重さは読んでいて嫌になってしまうほどだ。
だが、ページをめくる手は止まらない。
もちろん、面白いからだ。

「ワニとハブとひょうたん池で」

 百科事典に書いてあったことは嘘だ、と思った。ワニは偽善で泣きながら獲物を食べるんじゃない。本気で泣いてるんだ。おなかが空いてしょうがなくて、ワニは生肉を食べなくちゃ生きられない動物だから、ごめんねごめんねって涙をぽろぽろ流しながら、獲物を食べてるんだ。


ミキはある日突然、特にこれといった理由もなく、親友も含めたクラス全員から無視されるようになった。
ハブられる、という奴だ。
その描写が、ひたすらきつい。
自分自身にすら必死で虚勢を張りながら、その一方で池に住み着いたワニに食べられてしまいたいと願うミキの姿は強いが、脆い。
でもミキは本当に強い子だよな~。

「ナイフ」

目をそらさない。私には、ナイフがある。


誰もが皆、物語の主役のような輝いた青春時代を送れるわけじゃない。
いじめられたり、そこまではいかなくても華やかなこととは無縁で過ごした人だってたくさんいる。
弱くたって、怖くたって、息子のために立ち向かう姿は、滑稽かもしれないけど、やっぱり格好いい。

「キャッチボール日和」

 今日みたいなキャッチボール日和には、世界中のみんな、優しくなれたらいい。


これが一番きつかった。
酷いよな~、でもこういうの、普通にあるんだよな。

自分の強さを人に押し付けるのは、その強さに自信がないからだろうか。
結局そういうことする人も弱いってことかもしれない。

いじめが綺麗に解決することなんて、まずない。
いじめっ子達が改心して謝るなんてのは嘘っぱちだ。
重松清はフィクションでもそれをよしとはしない。
利己的で、保身を考え、取り返しが付かなくなって初めて少し後悔する。
そんなもんなんだよな。

「エビスくん」

 会いたいなあ、ほんま、ごっつ会いたいわ。


これも途中まではきつい話だったんだけど、最後がよかった。
にしても酷い奴だなエビスくんは(笑)
こういう風に地の文にさらっとうれしい事実が書いてあるのはいいよな~。
すごいいい。

「ビタースィートホーム」

 私の腕は三人をいっぺんに抱けるだろうか。包まれながら、包み返す、そんなふうに抱けるだろうか。


最後は、いじめの話ではない。
元教師の妻と、娘の担任の厳しすぎる教師。
この教師も「キャッチボール日和」の父親と一緒だよな。
自分が正しいと思っていることが伝わらなくて苦しんで。
正しいのは正しいんだけどね。
正しいことがいいことって訳じゃないんだよな。

この家族はいい家族だな~。



本当に読んでいてしんどい本だった。
でも面白いんだな~。



評価:A



ナイフ (新潮文庫)ナイフ (新潮文庫)
(2000/06)
重松 清

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Edit / 2009.02.06 / Comment: 2 / TrackBack: 0 / PageTop↑
プロフィール

gaker

Author:gaker
福井晴敏と本多孝好が好きです。大好きです。
もう家に本を置く場所がありません。

リンクもトラックバックも昔の記事へのコメントも全部大歓迎です。

2008 11/13(木)開設

評価基準
AAA:凄く凄い
AA:凄い
A:とても面白い
B:面白い
C:暇つぶしには
D:ん~、微妙
E:読み進めるのが苦痛
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