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ムダヅモ無き改革
カテゴリ: 大和田秀樹 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

今回は小説ではなく漫画の感想。
大和田秀樹の『ムダヅモ無き改革』
少し前に爆発的に流行った麻雀漫画。

まず、冒頭の「この作品はフィクションです。実際の人物とはあまり関係ありません。」という文章を踏まえておいていただきたい。
まず主人公は第89代日本国内閣総理大臣、小泉ジュンイチロー。
実際の人物とはあまり関係ありません。
第一話の敵となるのはアメリカ合衆国大統領、ジョージ・W・ブッシュ。
もちろん実際の人物とはあまり関係ありません。
そして脇を固める杉村タイゾー、ゆかりタン、麻生タロー。
二話以降の敵、金将軍にウラジーミル・プーチン。
関係ないったら関係ないのだ。

内容は非常にバカバカしく、くだらない(褒め言葉)。
国士無双十三面待と書いてライジング・サンと読む。
さらにあとでまた触れるが白一色(!)なんてものまで。
ちなみに天地創造と書いて、ビギニングオブザコスモスだ。
勝手に役満を作るな(笑)
さらに過激で、洒落の通じない人の目に入れば色々と問題になりそうなくらいだ。
作者が嫌いな人は何か個人的な恨みでもあるのかというほど悪くかかれている。
菅ナヲトとか、偉大なる北の首領様とか小物過ぎる。

そして皆さん豪運ぞろいだ。
役満などは当たり前。
天和、地和何でもござれだ。
しかし、これをリアリティーがないなどと言ってはいけない。
人生において成功を収めた、社会的地位のある人物の運が凄くて麻雀が強いのは麻雀漫画では当たり前なのだ。

そしてこの漫画内では、外交とはすなわち麻雀である。
首脳会談とは国のトップ同士の対局である。
第一話では、点F-15というアホすぎるレートだ。
麻雀漫画につき物のいかさまのスケールもでかい。
牌をツモる時に恐ろしい握力で表面を抉り取り白を作り出す「轟盲牌」は小泉ジュンイチローの得意技だ。
バカすぎる(笑)
そして、最後のプーチンとの対局では青天井でとんでもない点数がやり取りされる。
さらにいかさまを防ぐため一個150グラムの劣化ウラン牌が使用される。
重いだけではなく、無理に削り取れば激しく燃焼する。
つまり轟盲牌封じだ。

まずタイゾーがライジング・サンをアガり、七百八十六万四四〇〇点。
しかし直後にプーチンがチンイツ三暗刻四カンツドラ20の千五百八十三兆二千九百六十七億四千三百九十九万七八〇〇点をアガる。
青天井の本領発揮だ。
普通の麻雀ではまずお目にかかれない点数だが、小泉ジュンイチローはこんなものではない。
轟盲牌で、己が身を焼きながら、手牌全てを白に変え、天地創造(ビギニングオブザコスモス)をアガる。
新しい役満だ、白一色だ。
その点数は驚くなかれ、九〇八溝六五一九穣五〇二四禾予(じょ)三五九四垓八三四九京九二八三兆六八五七億六一三五万一七〇〇点。
数字で表せば、90865195024359483499283685761351700点だ。
うわぁ。

あとバカバカしいだけじゃなくて無駄に熱い。
台詞を一部引用する。

「や やめてください小泉さん!!それ以上やったら…小泉さんがチリになって燃え尽きてしまう!!」
「ならばその時はそのチリを集めて敵の前に置けッ!!たとえこの身が塵芥に成り果てても私はこの国を守る!!!」



現在でも時々続きが連載されているようで、今度はバチカンが相手のようだ。
バチカンも倒したら、次は……宇宙か?



評価:AA




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Edit / 2008.12.29 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
未来いそっぷ/きまぐれロボット
カテゴリ: 星新一 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第二十三回。
星新一の『未来いそっぷ』と『きまぐれロボット』
ショートショートといえばこの人というくらい有名な人。
読むのは初めてで、非常に期待しながら読んだ。
が、正直少し肩透かしを食らったというか。
期待外れ感が否めない。
いや、けしてつまらなかったわけではない。
ただ手放しで絶賛するほどの面白さは感じなかったな~。
子ども向きな感じもしたけど、もっと違う雰囲気のもあるのかな。

『未来いそっぷ』の「ある夜の物語」が一番良かったかな。

少し期待しすぎたのかもしれない。
けして嫌いではないんだけど。



評価:C



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Edit / 2008.12.26 / Comment: 4 / TrackBack: 0 / PageTop↑
失踪症候群
カテゴリ: 貫井徳郎 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第二十二回。
貫井徳郎の『失踪症候群』
この人の作品は初めてだが、面白かった。

若者の失踪の背後にあるものを調査する指令を受けた、警視庁人事二課の謎めいた職員環。
そしてその部下三名、元刑事の私立探偵原田、托鉢僧武藤、肉体労働者倉持。

環の人物造形が謎めいていて好み。
公安畑の人間だろうか。
シリーズ物のようだしそのうちに明らかになるかな。
悩めるお父さん、原田もいい。
少し最後が上手くいきすぎな気もするけど。

基本的には面白かったんだが、少し都合が良すぎるんじゃないかと思う部分もあった。
まずそもそもの始まりだが、この失踪、そんなに変か?
免許の有無とか、一人暮らしとか、たくさんの失踪者の中にはそのくらいの共通点を持った人間は割といるんじゃないかな。
それに上でも述べた原田の娘。
そんな簡単に更生しなくても。
本当は素直ないい子でしたっていうのは何かリアリティーがないよな~。
あとタイトル。
症候群ってどういうことだろう。
症候群、症候群、う~ん。
症候群って感じじゃないよな~。
「症候群」三部作というくらいだから深い意味はあるんかな。

「ゼック」の面々が掛け値なしの屑でよかった。
悪役にもなんだかんだで同情する理由があったりというのが多いけど、問答無用の悪ってのは案外少ない。
たまにはこういうのもいいな。



評価:B



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Edit / 2008.12.24 / Comment: 2 / TrackBack: 0 / PageTop↑
アルキメデスは手を汚さない
カテゴリ: 小峰元 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第二十一回。
小峰元の『アルキメデスは手を汚さない』
タイトルに惹かれて買った。
表紙も好み。
内容は……地雷。

いや~、久しぶりに踏んでしまったな~。
乱歩賞受賞作だって言うから安心してたのに。
いやほんとにこれはちょっと。
欠片も楽しめなかった。

全く魅力を感じない、いっそ不快な登場人物。
無駄に芝居がかった台詞回し。
気にならない謎。
それでも我慢して読み進めたんだけど、地の文に「ナウな感じ」とか出てきたときに心が折れた。
ちなみに三人称だ。
コメディータッチでもない。
それ以降は半ば意地で最後まで何とか読んだ。

登場人物は妙に不安定。
そういう性格なんじゃなくて、人格が定まってない感じ。
皆が皆、利己的で嫌味で……。
言ってることは屁理屈そのものだし。

青春推理って言うジャンルは凄く好きなんだけど、これが草分けなのか。
ちょっとショック。

最後もな~。
せめてどんでん返しくらいあるだろうと思ったけど、それもなし。
最後の田中も、もう不快感しかない。
あそこで持ってくるって事はあれは作者の主張でもあるんだろうけど。
正直、浅はか。
いい大人の考えじゃないな。

相当に昔に書かれた本である事を差し引いてもこれは酷いように思う。
でも売れてるらしいしな~。
タイトルには聞き覚えあったし。
当時はこういうのが受けたのかな。
でも昔の本でも面白いものは面白いしな~。
100円で買ったんだけど、それでも損した気分。


追記

少し調べたら、評判はいいみたい。
私と合わなかっただけかな。



評価:E



アルキメデスは手を汚さない (講談社文庫)アルキメデスは手を汚さない (講談社文庫)
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Edit / 2008.12.22 / Comment: 4 / TrackBack: 1 / PageTop↑
精霊探偵
カテゴリ: 梶尾真治 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第二十回。
梶尾真治の『精霊探偵』
ミステリーの皮を被った、SFかな。

背後霊が見えるって設定は、よく聞くようで意外と少ない気もする。
少なくとも今すぐに他の作品を挙げることができない。
案外ないんじゃないかな。

普通に面白かったんだけど、いくつか気になった。
まず背後霊が宿主に影響与えすぎじゃないか、とか。
もう人格変わってもうてるやないか、と。
それに塩が苦手なら例えば海に入ったらどうなるんだろうとか。
この辺の突っ込んだ描写がもう少しあったら嬉しかったかな~。

小夢ちゃんが可愛らしくて微笑ましかった。
子どもはいいな~。

一応ミステリーを名乗るだけあって、最後にどんでん返しがある。
以下ネタバレ

いや、騙されたのは騙された。
双子って出たときはもちろん入れ替えを疑ったんだけど、弟はどうも全く絡まないっぽいし、ないかな、と。
以外ではあったんだけど、正直必要ない気もする。
伏線らしきものもほとんどないし。
絵描きのおじいさんにアドバイスしたとこくらい?
あれだって友道もデザイナーであれくらい言ってもおかしくないっぽいし、ねえ。

あと最後、友道それでいいんかい(笑)

まあ、可もなく不可もなくってとこか。



評価:B



精霊探偵 (新潮文庫)精霊探偵 (新潮文庫)
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Edit / 2008.12.22 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
くちぶえ番長
カテゴリ: 重松清 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

「昔、お父さんに言われたんだ。泣きたいときにはくちぶえを吹け、って。そうすれば自然に涙が止まるから、って……」


第十九回。
重松清の『くちぶえ番長』
定年したおっさんの話の次は、小学四年生の話。
やたら漢字にルビが振ってあるな~と思ったら、「小学四年生」連載だった。
だから子供向けなんだけど、いい大人でも十分に楽しめる。

いやあ、甘酸っぱい。
読んでるこっちが恥ずかしくなるくらい。
小学生の恋は本当に微笑ましくていいな~。
バレンタインの話なんか、もうニヤニヤしてしまってやばい。

200ページちょっとと、分量も少なく、子供向けだけあって内容の軽いので、頭を使わずに、懐かしい、甘酸っぱいノスタルジーに浸りたいならお勧め。



評価:A



くちぶえ番長 (新潮文庫)くちぶえ番長 (新潮文庫)
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Edit / 2008.12.21 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
定年ゴジラ
カテゴリ: 重松清 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

「違う。覚悟をしろと言ってるんだ。自分の陰で誰かが悔やんでるっていうことを絶対に忘れるな。今日はお父さん、賛成も反対も関係ない、それだけ、おまえに言いにきたんだ。」



第十八回。
重松清の連作短編集、『定年ゴジラ』
この人の作品は始めて読むけど、いいなあ。
まあ直木賞とってる人だし。

いやあ、切ないなあ。
仕事一筋に生きてきて、定年を迎えて、何をしたってどこか哀愁が漂ってしまう。
どこからどう見ても情けないおっさんなんだけど、かっこつけて見栄を張る。
ほほえましい、愛すべきおっさん達。
そんなおっさん達の物語。

主人公の山崎さんはかっこいいおっさんだ。
八割以上は、情けなく、みっともなく、それでいてプライドは高く内弁慶だ。
でもそんな山崎さんはそれぞれの短編の最後に、突然化ける。
あんなかっこいい台詞が、今までの情けないおっさんのどこから出てくるのだろう。
別に洒落てるわけでもなく、上手いこと言ってるわけでもない。
だが、とても真摯だ。
その真摯さは、自他共に認める真面目さから来ているものだ。
きっとそれは山崎さんの長所であり、しかし短所でもあるのだろう。
だが、みんな、奥さんも、娘達も、作者も、そして私も、そんな不器用な山崎さんが大好きなのだ。

脇を固める人物達も魅力的だ。
まず奥さん。
かっこいいなあ。
凄い頼りになる人。
個人的に好きなのは宮田助教授。
たいてい、この手の人は悪役として描かれることが多い。
だが、中々どうして魅力的な人だ。
厳しいけど筋の通った立派な大人。
こういう人をきちんと書くためには、自分もそうじゃないと無理なんじゃないかなと思う。

読んでいて、少し気になったことがある。
この作品は、話は繋がってるが、八つの短編で構成されているわけだ。
一冊を通して重要な部分として山崎さんの次女の万理が抱える問題がある。
一つ一つの短編で解決とはいかないものの、前進はしているはずなのだ。
だが話が終わるたびに何と言うか、リセットされているような。
いや、リセットは言い過ぎにしろ、あのやり取りの後にまだそんな感じなのか、と思ってしまう。
ただ、考えようによってはこれはリアルなのかもしれない。
人間はそう簡単には変わらない。
いい話を聞いて、感動した気になっても、時間がたてば元通りと言うのは良くあることだ。
果たして作者がそこまで考えていたのかはわからないが。



評価:A+



なぜかイタリック体にできない。
なんでだろう?


定年ゴジラ (講談社文庫)定年ゴジラ (講談社文庫)
(2001/02)
重松 清

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Edit / 2008.12.20 / Comment: 1 / TrackBack: 0 / PageTop↑
夜のピクニック
カテゴリ: 恩田陸 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

 みんなで、夜歩く。ただそれだけことがどうしてこんなに特別なんだろう。



第十七回。
恩田陸の、代表作と言っていいのかな。
映画化され、本屋大賞も受賞した『夜のピクニック』をやっと読んだ。
これは、すごい。
たまらない。

刺激的などんでん返しがあるわけではない。
物語は淡々と進み、静かに終わります。
その静けさがとても心地いい。

いいな~。本当にいい。
中心となる人物達の心情描写が非常にきめ細やかで、すんなりと物語に入り込める。
頑なで意固地でひねくれていて、それでこその青春だよな~。
少し特殊な状況で、少し大人びてはいるものの、当たり前の高校生達の悩み。
自分にもこんな時があったと、きっと誰もが思える。

美和子の人物造形が好き。
やさしくて、それでいて意外と潔癖で、そっと背中を押してくれる。
高校の頃の友人に似ている。
彼女は今どうしてるだろう。
久しぶりに連絡を取ってみようかな。
後半は出番がないけど、千秋も、いい子だな~。

大人びている、と書いたが、実際はそうでもないのだろうと思う。
子どもは大人が考えているよりずっと大人だ。
私たちはその事を知っていたはずなのに、大人になるにつれて忘れていく。
本当はあの頃と大して変わっちゃいないのにね。

いや、本当に色々思い出して切なくなってしまった。
もう戻れないからこんなにも切ないんだな~。
青春小説と言う括りがこんなにぴったりと当てはまる作品も案外少ないんじゃないだろうか。
高校生だった頃に、これを読んだらどう思っただろうか。

終わり方もいい。
いい意味で続きが気にならない数少ない作品なんじゃないかと思う。
この物語はここで終わりで、これ以上は蛇足でしかない。
語られるべきことは全てきちんと語られていて、満足感がある。
凄い完成度が高いな~。



評価:AA+



夜のピクニック (新潮文庫)夜のピクニック (新潮文庫)
(2006/09)
恩田 陸

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Edit / 2008.12.19 / Comment: 2 / TrackBack: 1 / PageTop↑
図書室の海
カテゴリ: 恩田陸 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第十六回。
恩田陸の短編集『図書室の海』
十篇が収録されていますが、そのうち四篇が予告編であったり、外伝的な位置づけだったりする。
好きなものだけ取り上げる。

「春よ、こい」

これが一番好き。
この手の繰り返しの話が好きと言うのもあるんだけど、それ以上に雰囲気がいい。
淡々としていながらどこか暖かい。
読後感もいい。

「茶色の小瓶」

ホラー。
完全に騙されるのも好きだけど、この作品のように少しずつ不安を煽る方法も好き。
ホラーに多いかな。

「ピクニックの準備」

かの有名な『夜のピクニック』の予告編。
これが一番の目当てだったんだけど。
本当にただの予告編で、ちょっとがっかり。

「国境の南」

これは結構好き。
ありがちな話ではあるんだけど、調理が上手い。
最後の方の流れとかぞくぞくする。

「図書室の海」

これだけは元となる長編を読んでいた。
でもちょっと忘れちゃってるな~。
自分は主人公にはなれないっていう、あの感慨は結構誰もが感じたことがあるんちゃうかな。

「ノスタルジア」はよくわからなかった。

これでやっと『夜のピクニック』が読める。



評価:A-



図書室の海 (新潮文庫)図書室の海 (新潮文庫)
(2005/06)
恩田 陸

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Edit / 2008.12.17 / Comment: 4 / TrackBack: 1 / PageTop↑
太陽の塔
カテゴリ: 森見登美彦 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第十五回。
森見登美彦さんの『太陽の塔』
以前から読みたいと思っていたのをやっと読んだんだけど、くっだらねえなこれ(褒め言葉)
主人公は休学中の京大生、「私」だ。
名前は明かされていない。
男汁満載の内容で、男子大学生が主人公である以上下ネタもバンバン出てくる。
これがまたくだらなくて笑える。
ジョニーて。アホか(笑)
脇を固める登場人物も変人ばっかり。
行動力あふれる変態に、2メートルのナイーブなオタク、スーパーネガティブボーイなど、もう馬鹿ばっか。
妄想的債鬼、湯島に至ってはもはや心配ですらある。
一見常識人に思えた遠藤もアレな人だ。

そして数少ない女性陣、一人目は主人公の昔の恋人水尾さんだ。
そこそこ長いこと付き合ってるはずなのにさん付けで読んでる辺りが哀しい。
水尾さんが直接描写されている場面はほとんどなく、その心情もほとんどわからない。
台詞も殆どない。
だがなんとも可愛らしく、魅力的な人物だ。
そして数少ない描写から推察するに、紛れもなく彼女も変人の一人なのだ。
普通は恋人と過ごす初めてのクリスマスに彼氏の友人を呼ぶことはない。

もう一人の女性が、「邪眼」こと植村嬢だ。
何だよ邪眼って(笑)
彼女も出番は少ないが、非常に存在感がある。
ひょっとして主人公に気でもあるんじゃないかと邪推してしまった。
でも彼氏はいるようだ。

さて、この作品は日本ファンタジーノベル大賞受賞作だ。
「私」とファンタジーと言う単語が全く結びつかなくてもファンタジーなのだ。
日常からファンタジーへの扉として叡山電車が使われている。
叡山電車に乗っていけるのは水尾さんの夢だ。
あまりにも自然に「私」が入っていくので、どこからがそうなのかわからないほどだ。

最初から最後までずっとあほなことしかしていないのだが、最後の十ページほどだけ、急に色合いが変わる。
そんないきなりキュンとさせないで欲しい。
招き猫の伏線には気付いていたんだけど、それでもびっくりしてしまった。
や~、水尾さんいいな~。

タイトルにもなっている太陽の塔は、当然重要な役割を果たしている。
とはいっても主要な舞台は京都なので、登場回数自体は少ない。
さて全くの余談だが、私は太陽の陽が見える位置に住んでいる。
このこともこの小説を読みたかった理由ではある。
その太陽の塔なのだが、本当に奇妙な形だ。
そのままエヴァに使徒として出てきてもおかしくないと思う。

あほらしい日常の描写も、最後の引きの綺麗さも、かなり好みの作品でした。
水尾さんの話しがもっと見たいな。
続編とかないんかな?
海老塚先輩との過去の確執も気になるし。



評価:AA+



太陽の塔 (新潮文庫)太陽の塔 (新潮文庫)
(2006/05)
森見 登美彦

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Edit / 2008.12.16 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
ネフィリム 超吸血幻想譚
カテゴリ: 小林泰三 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第十四回。
小林泰三さんの『ネフィリム 超吸血幻想譚』です。
小林さんの作品はぐろいのが多い、と言うかほぼ全部ぐろいんですが、これもやっぱりぐろいです。
ホラーの皮を被ったSFが多いんですけど、これはSF色が薄いですね。
余談なんですが、最近までずっと小林「たいぞう」だと思ってました。
「やすみ」と読むんですね。

さて、内容ですが、題名どおりの吸血鬼の話です。
ミカという少女を助けてから血を吸う事をやめた最強の吸血鬼、ヨブが主人公です。
そして吸血鬼を狩る種族「ストーカー」のJ、最強レベルの吸血鬼カーミラに妻と娘を殺された、コンソーシアムの隊長ランドルフを中心に話は進んでいきます。
ヨブを含めた吸血鬼の能力がめちゃくちゃ高いです。
日光も十字架も銀の弾丸も効きません。
倒すには脳か心臓を潰すしかなく、対吸血鬼組織「コンソーシアム」は、一人の吸血鬼を狩るのに何人も犠牲を出しながら、圧倒的な物量でしか対処できません。
またそれでも最強レベルの吸血鬼には手も足も出ない感じです。

戦闘シーンが多く、そしてその戦闘シーンはひたすらぐろいです。
ぐろいんですが面白いです。
コンソーシアムの武装なども中々好みでよかったです。
しかし反応装甲は痛そうですね。
そういえば時代はいつ頃に設定されてるんでしょう。
最初は現代ではないような気もしてましたが、コンソーシアムの技術を見るに現代、あるいは近未来でしょうか。

そういえば、冒頭のヨブの外道っぷりが面白かったです。
あと、ヨブ以外の吸血鬼の性格がほとんど一緒なのが少し残念でした。

回収されていない伏線もいくつかあるし、あの終わり方なので続編があることは間違いなさそうです。
期待しときます。
ミカの双子の姉、ルーしーの正体も気になりますし。
恐らくは吸血鬼でしょうけど。



評価:B+



ネフィリム―超吸血幻想譚 (角川ホラー文庫)ネフィリム―超吸血幻想譚 (角川ホラー文庫)
(2007/09/25)
小林 泰三

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Edit / 2008.12.14 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
池袋ウエストゲートパーク
カテゴリ: 石田衣良 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第十三回は、石田衣良さんのデビュー作、『池袋ウエストゲートパーク』です。
石田衣良さんの本を読むのは初めてです。
今までは何となく、軽そうな感じがして敬遠してたんですけど、読んでみたら面白いですね。
軽いのは軽いんですけど、作者がそこから一歩距離を置いている感じがするというか。
砕けた一人称の文も、若者言葉も臭い台詞も、どうだ感動しろって感じではないですよね。
あくまで、そういうキャラクターを描写しているというスタンスを取っているように思えます。
どこかで見たことあるストーリーやな~と思ったら、そういえば漫画版を読んだことがありました。

キャラクターに感情移入できる訳でもなく、別に好きにもなれないんですが、それでも面白いと思うのは石田さんが確かな筆力を持っているからでしょう。
他の作品にも手を伸ばしてみようと思います。

こういう作品によく登場する、売春少女。
けして好きではないんですが、なぜか嫌いにはなれません。
何と言うか、ある種の無垢さ(無知さと紙一重の)を持って描かれることが多いですよね。

少しだけ気になったのは、マコトが全くと言っていいほど失敗しないことです。
とんとん拍子で上手くいきすぎなような。
あの手の素人の備考は失敗するのが常道じゃないですかね?



評価:B+



池袋ウエストゲートパーク (文春文庫)池袋ウエストゲートパーク (文春文庫)
(2001/07)
石田 衣良

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Edit / 2008.12.12 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
ALONE TOGETHER
カテゴリ: 本多孝好 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第十二回。
また、本多孝好さんです。
今回は長編ですね。
これも何回か読み直していて、今回で四回目くらいかな?
最初読んだ時はいまいちかな、とも思ったんですが。
読めば読むほどこれはなかなか。

主人公は例によってひねくれた男です。
そしてある種の超能力のようなもの――他人の波長と同調し、人間の暗部を暴く力と言ったところでしょうか――を持っています。
そういえば珍しく名前がついていますね。
柳瀬という苗字だけですが苗字だけですが、さすがに長編では代名詞だけで通すわけにはいかなかったのかな?

しかし、主人公の暴く人の内面が凄いです。
綺麗ごとの裏に隠された汚い部分。
もちろんそれが全て、というわけではないのでしょう。
しかしずっと目を逸らしていたものをそれだけ取り出して、しかも主人公のあの調子で囁かれたら、それが唯一の真実であるかのように思ってしまっても無理はありませんね。
そして、この力は少なくとも作中では少しもいい結果を招きません。
だから「呪い」なんでしょうね。

にしても熊谷いいな~。
いい女やでしかし。
何ていうか、主人公の救い、なんでしょうね。
一瞬で機嫌なおした時は軽って思いましたけど(笑)

 永遠にその人を呪いながら生きていく。そうなんだろう。だったら、僕はそれ以上の祈りをその人のために捧げるよ。

本多さんの作品には大体胸に残る言葉があります。今回はこれですね。

本多さんの小説は凄いやさしいんですけど、それと同時に人間の本音の汚さみたいなものが書かれることが多いです。
そしてまたそれが上手いんですよ。



評価:AA



ALONE TOGETHER (双葉文庫)ALONE TOGETHER (双葉文庫)
(2002/10)
本多 孝好

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Edit / 2008.12.11 / Comment: 2 / TrackBack: 2 / PageTop↑
FINE DAYS
カテゴリ: 本多孝好 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第十一回は、本多孝好さんの短編集、『FINE DAYS』です。
本多さんはですね、福井晴敏さんに並んで私の好きな作家です。
長編の福井、短編の本多、です。
この本は何回も何回も読み直しているのですが、最近また読み直したのでレビューします。
四篇収録されているのですが、その全てに、少し不思議なテイストが含まれています。
恋愛ファンタジーって感じですかね。

「FINE DAYS」

表題作ですね。
この短編集の中では一番好きです。
高校時代の青春の雰囲気がたまらないです。
主人公は本多さんお得意の、ひねくれた男です。
他の登場人物たちも皆魅力的なんですが、私は安井が好きですね。
いや~、男前過ぎるでしょうこの子は、と思ってると手痛いしっぺ返しをくらうんですけどね。
主人公の名前が出てこないのはいつものことですが、「彼女」の名前も出てないんですね。
最後の一文を読むまで気付きませんでした。
本当に何回読んでも飽きない、名作だと思いますよ。

「イエスタデイズ」

これは映画化もしたらしいですね。
この人の書く主人公はほんと好きだな~。
何と言うか飄々としているようで、凄く頑固で、大人びているようで本当は子供で。
魅力的だよな~。

 僕は今の君が大好きだよ。彼が今の君を必要とはしなくなっても。他の誰かを選んだとしても。僕は今の君が大好きだよ。たとえ、君自身が、やがて今の君を必要としなくなっても。忘れ去ってしまったとしても。僕は今の君が大好きだよ。


このフレーズがたまらなく好きです。

「眠りのための暖かな場所」

本多さんの作品では珍しい、というかこれだけ?の女性が主人公の短編です。
こういうタイプの人も、めっちゃ好きだな~。
やっぱりひねくれてるんですけどね。
そして、立川明美も凄い好きです。
この子はとてもしたたかで、それでいて誠実ですよね。
この短編ではこのふたつのフレーズが好きです。

 もし十二年前に戻れたとしたら、と私は思った。もし十二年前に戻れたとしたら私はどうするのだろう? どちらか一つの命しか救うことを許さないその腕に、どちらの命を委ねるのだろう? 妹? それともやっぱり自分自身?
 わからなかった。ただはっきりしているのは、決して十二年前に戻れることなどないというそのことだけだった。


当たり前のことなんですけどね、読んだ時すごいはっとしました。
後は立川明美のこのセリフ。

「最高に腹が立つんですよね、そういうの。自分にすっごく好きな人がいて、だけど、その人は別な人が好きで、でもその別の人はぜんぜん自分自身のことなんか好きじゃないって」


ここまで言ってその好きな人を主人公に任せる立川明美めっちゃいい女。
それにしてもこれ、この後どうなるんだろう……。

「シェード」

巷ではこれが一番評価が高いようです。
珍しく主人公があんまりひねくれてません。
他の話にも言える事なんですけど、特にこの話は全体に漂う優しい雰囲気が尋常じゃないです。
そしてこの一文がたまらないです。

 そのときの彼女の肩を抱いて、慰めてやることは僕にはできない。僕の前には、そこをたった一人で乗り越えてきた彼女がいる。



ほんとうに、非常に完成度の高い短編だと思います。
程よく洒落ていて、読んでいて非常に心地よいです。
古本屋を探せば100円で手に入るところもあると思うので、読んだことない人は是非読んでみてください。
きっとはまりますよ。
また表紙もいいんですよね~。



評価:AAA


AAAはめったにでませんよ。
いや本当に面白いです。
そしてたまらんのです、雰囲気が。

FINE DAYS (祥伝社文庫)FINE DAYS (祥伝社文庫)
(2006/07)
本多 孝好

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Edit / 2008.12.11 / Comment: 2 / TrackBack: 0 / PageTop↑
亡国のイージスと田母神論文
カテゴリ: 福井晴敏 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

もう第十回です。
早いものですね。
せっかくなのでちょっと気合を入れたものを書いてみようと思います。
今回は『亡国のイージス』、私の一番好きな作家、福井晴敏さんの出世作です。
何と、大藪春彦賞、日本冒険小説協会大賞、日本推理作家協会賞のトリプル受賞です。
映画化もされていますね。

この作品のテーマはそのまま作家福井晴敏のテーマでもあります。
すなわち、自衛隊という存在自体が矛盾した組織についてです。
それは、日本という歪な大国が抱える矛盾と言い換えることができます。

このように非常に重いテーマを扱っている作品です。
ですが、そうであると同時にエンターテイメントとしても一級の小説です。
文体も少々堅めで、読むのには時間がかかります。
しかし、そんなことが気にならないほど、一度読み出したら最後までページを捲る手を止めさせない力がこの作品にはあります。
難しいテーマだな~とか、分厚くてどうも……だとか思って読んでいない人がいるのなら是非読んでみてほしいです。
極上のエンターテイメントを味わえますよ。

ちなみに『亡国のイージス』は、『川の深さは』、『Twelve Y.O.』のに作品の続編です。
厳密に言えば、続編というより世界観を同じにする作品といった方がいいかもしれません。
『終戦のローレライ』や、短編集『6ステイン』も同じ世界で起こった出来事ですし、まだ未読ですが『Op.ローズダスト』もそうだと思います。
それぞれの作品の主人公などは異なりますが、ある作品に登場した人物が別の作品に登場したり、同じ事件を語ったりと前作を知っているほうがニヤリと出来るのは確かです。
今作にも某ヘリパイがちょい役ですが登場してます。

守るべき国の形も見えず、いまだ共通した歴史認識さえ持ちえず、責任回避の論法だけが人を動かす。国家としての顔を持たない国にあって、国防の楯とは笑止。我らは亡国の楯(イージス)。偽りの平和に侵された民に、真実を告げるもの

上の文章はあるシーンからの引用ですが、これを読んだ時にぞくぞくしてしまいました。
ちょっとこの口上は格好良すぎるでしょう。

以下ネタバレ

実際のところ宮津がヨンファに協力しているのはバレバレで、というか作者にも隠す気はあんまりないでしょうし、ネタバレともいえない気もしますが、もしこの記事を読んで『亡国のイージス』を読もうと思った人がいらっしゃるなら、やはり余計な先入観を持たずに読んで欲しいですし、反転文字にします。

宮津艦長を中心とする登場人物幾人かは、大事なものを理不尽に奪われた絶望から憎悪に身を焦がし、誤った道を選びます。
ですが彼らは復讐よりも大事なことがある事を知り、いや思い出してギリギリで踏みとどまり自分に恥じない生き方をすることができたんでしょう。
このあたりを読むと、福井さんは優しい人なのだろうと思います。
どうしようもない悲劇的な人生を送っていた人間にもきっと救いはあるんですね。
終盤の行と艦長の会話には、不覚にもじわりときてしまいました。
しかしそれはもちろん全ての問題が解決するということではありません。
その悲劇を生み出した歪みがなくなるわけではないのです。
国民の無知無関心も日本のあり方も、多くの命が散ったこの茶番を仕組んだアメリカの傲慢さも何ら変わりません。(福井作品ではアメリカは結構悪く書かれますね。多分嫌いなんでしょう。自らを正義と称して恥じないあの傲慢さが)
ただ、「変われるかもしれない」と言うだけです。
厳しい現実をしっかりと見据えながらも絶望に溺れることもなく、希望を指し示す福井さんの作家としての姿勢が、私はとても好きです。


読んだのは随分前でまた読み返したのですが、そのきっかけになったのは、最近話題になった田母神論文です。
作中の内容と少しばかり被る所がありまして、ふと読みたくなりました。
亡国のイージスを読んだことのある人で、田母神論文の話題がきっかけで読み返した人は多いんじゃないでしょうか。
作中では防衛大学の学生、田母神さんは航空幕僚長と立場に違いはありますが、主張する内容が重なっている部分があります。
もちろん違う部分も多々あって、田母神さんのほうが大分過激な内容のようです。

私は田母神論文全面的に肯定することも否定することもできません。
第二次世界大戦のことについての問題の部分はあまりうなずけません。
だからといって中国や韓国の言う事を鵜呑みにできるほど無垢でもありません。
南京大虐殺の被害者数や証拠を捏造したとか言う話も聞きますし(事実かどうかはわかりません)
そもそも南京大虐殺はなかったという説もあるそうですね。
話がそれましたが、やはりこの論文には価値があるのだと思います。
田母神さんは自分が実名でこのような論文を発表すれば騒ぎになることくらいは本当はわかっていたと思います。
それでも発表したのは、自衛官が自分の仕事に誇りを持てない現状を、法整備が進まず、国を守るという、存在意義すら果たせるかわからない現状を、武器を持たなければ攻撃されることはないなどと言い放つ人々がいる現状を憂いていたからではないでしょうか。
それはまさに作中の宮津隆史と共通する感情だと思います。
しかし、政府は臭いものには蓋の理論で田母神さんを更迭しました。
確かに、自衛官という特殊な職業につく人間が国の見解とあまりに違う考えを持つというのは問題でしょう。
だからといって異を唱えることするできないというのは無茶苦茶ではないでしょうか。
私の目にはこの政府の対応は福井さんの書くこの国の汚濁そのものに映りました。
田母神さんの論文はネットで検索すれば簡単に読めるので、一度読んでみるのもいいのではないでしょうか。
私たち一人一人が自分の頭で考え行動し、その結果に責任を持てるようにならなければこの国は変わらないのだと思います。

あと、表紙のデザインがとても好きです。
めっちゃ格好いいですよね。
福井さんの作品の表紙は格好いいのが多いです。



評価:AA+



亡国のイージス 上  講談社文庫亡国のイージス 上 講談社文庫
(2002/07)
福井 晴敏

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亡国のイージス 下  講談社文庫亡国のイージス 下 講談社文庫
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福井 晴敏

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Edit / 2008.12.06 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
テロリストのパラソル
カテゴリ: 藤原伊織 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第九回。
今回はハードボイルド。
史上初の江戸川乱歩賞と直木賞のダブル受賞作品、藤原伊織さんの『テロリストのパラソル』です。
購入したのは随分前だったのですが、中々読む気になれなかった作品です。
ネットでたまたま見た感想に、団塊の世代だけが喜ぶ自己満足、とあったんですよ。
ですが、今回読んでみたらとても面白かったです。
ダブル受賞は伊達じゃないってことですね。
まあこの作品を一番楽しめるのは団塊の世代の方だってのは間違いなさそうです。

心配していたような過去の過剰な美化などもなく、むしろそれらを踏まえた上での今とこれからをどう生きるかの方に重きを置いているように思います。
主人公が異様にもてるのは、まあお約束でしょう。

正直なところ、犯人は早い段階で予想がついていました。
さすがに警察は気付くんじゃないかな~とは思いましたけど。
後少々偶然の部分が多すぎたのが気にはなりましたね。
彼らの邂逅にもう少し説得力のある理由を作ることはできたんじゃないでしょうか。

変わり者のやくざ、浅井が中々かっこいいです。
実際はあんないいもんじゃないんでしょうけどね。

読まず嫌いせずに読んでみてよかったです。



評価:B



テロリストのパラソル (講談社文庫)テロリストのパラソル (講談社文庫)
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藤原 伊織

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Edit / 2008.12.05 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
かまいたち
カテゴリ: 宮部みゆき / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第八回。
宮部みゆきさんの時代物の短編集、『かまいたち』です。
現代物も時代物も面白いですが、どっちかといえば時代物の方が好きですね。

 「かまいたち」

表題作です。
謎の辻斬り「かまいたち」が江戸の町を騒がすなか、町医者の娘、おようは辻斬りの現場を目撃してしまいます。
読者には早い段階で、事件の大体の構図は見えるのですが、おようがそれを知るのは最後です。
ん~、表題作なんですが、個人的にはいまひとつ。

 「師走の客」

短めの短編です。
欲をかかずに地道に働くのが一番ってことでしょうか。
あまり賛成はできない考え方ですけどね。
これもあんまりって感じかな~。

 「迷い鳩」

長編も書かれている、「霊験お初」シリーズの最初の短編です。
霊能力を持つお初が事件を解決します。
お転婆なお初がかわいらしいですね。
岡っ引きの兄、六蔵との掛け合いも小気味良いです。
にしても、女は怖いですね~。

 「騒ぐ刀」

霊験お初第二弾。
この短編集の中でこれが一番好きかな。
妖刀って良いですね。
わくわくします。



評価:B



かまいたち (新潮文庫)かまいたち (新潮文庫)
(1996/09)
宮部 みゆき

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Edit / 2008.12.03 / Comment: 2 / TrackBack: 1 / PageTop↑
眼球綺譚
カテゴリ: 綾辻行人 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第七回です。
今回は綾辻行人の短編集。
ジャンルはホラーです。
綾辻さんといえば新本格の火付け役で、メインはミステリーなんですが、ホラーも書いていてまたこれが面白いんです。
今作では「由伊」という名前の女性が色んな役で登場します。
でも同一人物というわけではないんですよね。
内容も千差万別で、色んな怖さが楽しめます。

 「再生」

巻頭を飾るのは、体に傷を追ってもそれが再生してしまう女性とその夫の話です。
この女性が「由伊」です。
冒頭から既に由伊は夫に首を切り落とされた状態です。
そして夫は由伊の首が生えてくるのを待っているわけです。
さあ、由伊の首は本当に生えてくるのでしょうか。
オチは中々生理的にキますよ。

 「呼子池の怪魚」

お次は流産で子どもを失った夫婦の話です。
また奥さんの方が「由伊」ですね。
ある日夫が呼子池で不気味な魚を釣り、家に持ち帰ります。
巨大なめだかのようなその魚は日がたつに釣れその姿を買えていくのですが……。
なんとも釈然としないラストですね。
どう捉えたらいいんでしょうか。
それにしても、もし魚が「そう」なっていたらどうなったんでしょうね。
想像すると……。

 「特別料理」

一番衝撃を受けた作品です。
ホラーで料理といえば、ねえ。
大体予想はつくと思います。
そういう話です。
この話の真髄は最後の一ページです。
このタイミングでそれを言うということは、ねえ?
つまりそういうことなんでしょうね。
えげつないな~。
また「呼子池の怪魚」の後にこれを持ってくるっていうのが……。
いや~、後味悪いな~(褒め言葉)
表紙はこの話のイメージかな。

 「バースデー・プレゼント」

「呼子池の怪魚」は釈然としないといいましたが、これはもう意味がよくわからなかったです。
不条理の恐怖?
妄想の恐怖?
わからないことの恐怖?
ん~よくわかんないです。
記憶の断片の表現が囁きシリーズを思い出したな~。

 「鉄橋」

これは典型的な怪談ですね。
量も少ないですがきれいにまとまってます。
シンプルで中々好みです。
うんうん、こういう話はいいな~。
ぞっとする度では一番かな。

 「人形」

いや~、この手のホラーはほんと不安になります。
この話では語り手の妹が「由伊」ではっきり言っていなくてもいい位の脇役なんですよ。
なんか気になるんですよね。
他の話では重要な役どころが多いのに。
別に何もないのかな?
後気になるところとしては、これが果たして「何回目」なのかってことですね。

 「眼球綺譚」

表題作です。
完成度は一番高いかな。
作中作が良いですね。
それが作中作である事を忘れてしまいました。
基本的に作中作のある作品は好きです。
日常が突然反転する瞬間はホラーの醍醐味ですね。


非常に質の高い短編集です。
綾辻さんは個人的にはミステリー以外のエッセンスが入ったもののほうが好きな気もします。
囁きシリーズとか。



評価:A




眼球綺譚 (集英社文庫)眼球綺譚 (集英社文庫)
(1999/09)
綾辻 行人

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Edit / 2008.12.03 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
プロフィール

gaker

Author:gaker
福井晴敏と本多孝好が好きです。大好きです。
もう家に本を置く場所がありません。

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2008 11/13(木)開設

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