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ペンギン・ハイウェイ
カテゴリ: 森見登美彦 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

 もうしわけないと思うけれど、こればかりはしょうがない。


第百八十六回
森見登美彦の『ペンギン・ハイウェイ』
第31回日本SF大賞受賞作

かしこい小学四年生であるところのアオヤマ君は日々、たくさんの研究を抱えている。
ある日突然町に現れたペンギン達のこと。
不思議な「海」のこと。
そして、不思議な力を持つ歯科医院のお姉さんのこと。
アオヤマ君は今日もまた一日分だけかしこくなるのだ。

泣きたくなるほど切なくて、抱きしめたくなるほど愛おしい。
森見登美彦の最高傑作は『夜は短し歩けよ乙女』だと思っていた。
森見節は確かに魅力的だが、ワンパターンでもある。
しかし、今作において、森見登美彦は「らしさ」を残しながらも新たな境地を切り開いたといえる。

この物語の主人公は京都に住む大学生ではない。
小学生らしからぬ小学生、アオヤマ君である。
今までの森見作品の主人公たちとアオヤマ君の共通点は、理屈屋であること、ひねくれていること、そしておっぱいが好きなことだ。
うむ、結構共通している。
だが一つ大きな違いがある。
アオヤマ君はまだ子供なのだ。
周りを固めるのは友達のウチダ君や、アオヤマ君のことが好きなハマモトさん、そのハマモトさんが好きなガキ大将のスズキ君達、そして歯科医院のお姉さんだ。
皆、魅力的なキャラクターである。
そうだ、もう一つ違いがあった。
アオヤマ君は、割とモテる。

町にペンギンが現れたことをきっかけに始まった少しヘンテコなことは、段々ととてもヘンテコなことになっていく。
そしてその全てはお姉さんに繋がっているのだ。
全ての謎を解き明かしたアオヤマ君はつらい決断をする。
でも、アオヤマ君は泣かないのだ。

最後のページまで読み終わって、とてもとても温かく、それでいて切ない気持ちになった。
でも、きっと大丈夫なのだと思える。
何故ならアオヤマ君はかしこくて、毎日えらくなっていくからだ。
だから、きっとまた。

素晴らしい読後感だった。
いやあ、傑作も傑作。
大傑作だ。
休養から活動を再開しつつある森見登美彦の今後に期待だ。


評価:AAA


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Edit / 2012.12.22 / Comment: 4 / TrackBack: 0 / PageTop↑
宵山万華鏡
カテゴリ: 森見登美彦 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

 小長井のエンジンは、山田川敦子無しには起動しないのであった。


第百七十三回
森見登美彦の『宵山万華鏡』
祇園祭を舞台とした、様々に表情を変える連作短編集。

「宵山姉妹」
姉とともにバレエ教室に通う少女。
宵山の日に姉と寄り道をしていると、姉とはぐれてしまう。
そこで不思議な少女達と会い、彼女らについていくことになったのだが……。

しょっぱなはホラーである。
少女達がなかなかに不気味な雰囲気だ。
彼女らの正体などはこの後の短編の中で明らかになっていく。

「宵山金魚」
宵山法度違反により屈強な男達に捕らえられ、宵山様の元に連れて行かれる「俺」
次々と現れるヘンテコなものに翻弄される「俺」の行きつく先とは。

今度は一転してバカバカしくも面白い森見ワールドである。
なのだが、必ずしもそうともいえないことが後々分かってくる。
この辺り、短編同士が絡み合っていて面白いところだ。

「宵山劇場」
偏屈な男、小長井が乙川という男の友人を騙す壮大な計画に、バイトとして雇われる。
そこで小長井は、かつて自分を振り回した山田川と再会する。

またもやバカバカしい森見ワールドで、「宵山金魚」の舞台裏となる一編である。
個人的にはこの短編集の白眉といえる一編である。
なんと言ってもまず高藪である。
高藪といえばあれだ、デビュー作『太陽の塔』の主人公の友人だ、確か。
いま少し手元にないので確認できないが間違いないと思う。
自分を好きになった女性が現れたとか言っていたが、それってひょっとして岬先生だったりするのかなとか思いながら読んだ。
いやあ作品同士のリンクというのは好きだなあ。
そして小長井と山田川の関係である。
なにこれ甘酸っぱい!
バカバカしい中にこういうのもひょいっと放りこんでくるからなあ、上手いなあ。
そしてその後はけして書かない。
心憎い限りである。

「宵山回廊」
千鶴が画家の叔父の元を訪ねると、叔父は宵山の一日を何度も繰り返しているという。
その原因は十五年前の宵山の夜に消えた叔父の娘を当時の姿のまま発見したことだという。
叔父にいったい何があったのか。

一転してまたシリアスになる。
「宵山姉妹」少し出ていた印象的な人物、柳さんがキーパーソンのようだ。
同じ一日の繰り返しというのは良くあるネタだが、繰り返している人物ではない視点から描かれるのは珍しく思う。
オチは何ともいえない気分になる。

「宵山迷宮」
「私」が朝目覚めると、また宵山の日だった。
同じ一日を繰り返す「私」はどうすればこの宵山の日から抜け出すことができるのか。

あらすじだけ見ると千鶴の叔父の話のようだが、この「私」は柳さんである。
柳さんもまた同じ宵山の一日を繰り返していたのだ。
そして乙川が再登場する。
一転して怪しげで不気味な雰囲気である。
乙川の取引先については最後の短編で判明する。

「宵山万華鏡」
妹とともにバレエ教室に通う少女。
宵山の日に妹と寄り道をしてるうちに、妹を置き去りにしてしまう。
妹を探しているうちに不思議な大坊主に会い、大坊主の持つ風船が欲しくなり、宵山様のところにならあるということで、ついていくことになる。

「宵山姉妹」の姉サイドの話である。
姉の方も姉の方で色々と不思議な体験をしていたようだ。
あの少女達が宵山様だったのか。
なーる。
しかし山田川の妄想がことごとく的を射ていたとは驚きである。


六つの短編が全て絡まりあい、一つにつながっている。
疑問点もいくつかあるが、そこを追求する種類の作品ではないだろう。
ファンタジーである。
しかし、高藪が登場したことで、彼に何があったのか改めて気になってきた。
それが描かれる日は来るのだろうか。


評価:A+


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Edit / 2012.08.22 / Comment: 2 / TrackBack: 0 / PageTop↑
新釈 走れメロス 他四篇
カテゴリ: 森見登美彦 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

「俺の親友が、そう簡単に約束を守ると思うなよ」


第百三十三回
森見登美彦の『新釈 走れメロス 他四篇』

誰もが知っている名作を森見流に仕上げた短編集である。
そしてそうである以上、主人公は京都の腐れ大学生達である。

全て馬鹿馬鹿しいコメディータッチの作品かと思いきや、表題作以外はそうでもない。
真面目だったり、切なかったり、不気味だったり、だ。
中でも「山月記」と「桜の森の満開の下」は書くことの悲哀を少し扱っていたりする。
作者自身の考えも含まれているのだろうか。

しかしやはり、馬鹿馬鹿しくてこそ森見登美彦だろうと私は思う。
なので、表題作の「走れメロス」を中心に見ていく。

芽野史郎は、不条理に部室を奪われた詭弁論部を救うため、図書館警察長官に立ち向かった。
長官が詭弁論部に部室を返すために出した条件とは、学園祭のフィナーレでブリーフ一丁で踊ることだった。
しかし芽野は、姉の結婚式に出なければならないといい、身代りに親友の芹名を置いていく。
その友情に感激した長官だが、芹名の一言で全てが覆る。

「あいつに姉はいないよ」

芽野は約束を守る気などさらさらなかったのだ。
こうして芽野の一大逃走劇が始まった。

何とも馬鹿馬鹿しいではないか。
芽野と芹名の出会いであるパンツ番長事件や、芽野が逃げ切り、人質となった芹名が代わりにブリーフで踊るという結末をこそ、「真の友情」と信じ、逃げ続ける芽野と、悠然とその時を待つ芹名。
これぞ森見登美彦という馬鹿馬鹿しさだ。

しかし、女に弱いのが腐れ大学生である。
数々のピンチを乗り越え、走り続けた芽野だが、懸賞金に目がくらんだ、可憐な乙女にだまされ絶体絶命の窮地に立たされる。
そして、そこを元詭弁論部の須磨さんに助けられるのだ。
まあやはりというかなんというか、大方の予想通り須磨さんも敵であった。

ラストも原作の流れを踏まえつつ馬鹿馬鹿しく仕立て上げられている。

「走れメロス」意外は、さほど馬鹿馬鹿しくはなかったが、「山月記」、「桜の森の満開の下」辺りは結構好きである。
物書きを題材とした話が好きだからだろう。
他二つを悪くなかった。
だがやはり「走れメロス」が一番面白かった。


評価:A+


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Edit / 2011.07.29 / Comment: 6 / TrackBack: 0 / PageTop↑
美女と竹林
カテゴリ: 森見登美彦 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第百三十二回
森見登美彦の『美女と竹林』

小説ではなくエッセイ、になるのだろうか。
大層くだらなく、そして面白い。
彼の書く小説と大体似た感じで楽しめる。
というか、書かれていることは果たしてすべてが事実なのだろうか。
作者の妄想ではないのか。
そう疑いたくなるほど愉快な本だ。

荒れ果てた竹林を手入れすると言うのが本筋なのだが、あまり手入れはしない。
仕事が忙しかったり、その他もろもろの事情により、だ。
そしてタイトルに入っている美女もなかなか登場しない。
というか登場しない。
最後に落ちとして半ば無理やり登場するのみだ。

基本は登美彦氏が締め切り次郎に追われたり、竹林の手入れを行えないことを悔やんだり、なんだかぐだぐだしたりしている。
本当にぐだぐだしている。
正直あまり中身がないのと、読んでから半月近く経ってしまったので、感想も書きづらいのだが、面白いのは面白い。

最初は小説だと思って読み始めたのだが、エッセイでもあまり作風は変わらなかった。
やはり各作品の主人公達は作者の分身である面が多分にあるのだろう。
それと、森見登美彦が兼業作家であることをこれを読んで初めて知った。
彼レベルになれば作家一本でも食べていけるだろうに。
今現在でもそうなのかは分からないが意外だった。

まあなにはともあれ面白い本であった。


評価:A


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Edit / 2011.07.26 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
恋文の技術
カテゴリ: 森見登美彦 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

「ああ、おっぱい万歳」


第百二十九回
森見登美彦の『恋文の技術』

京都の大学院から遠く離れた能登の研究所に飛ばされた院生、守田一郎。
いかなる女性も手紙一本で籠絡できる技術を身につけるため、文通修行と称して手紙を送りまくる。
友人の恋の相談に乗り、先輩に媚びへつらいながら反逆し、作家森見登美彦(!)の愚痴を聞く。
果たして彼は恋文の技術を確立することはできるのか?

今作は森見登美彦お得意の駄目学生が書いた手紙をまとめた、書簡体小説となっている。
主人公の守田は5人の人間と手紙のやり取りをするが、本当に思いを届けたい相手へはなかなか手紙を書けないでいる。
このへたれ具合は、今までの森見作品の主人公たち同様だ。
微笑ましくも切ない。

そして、おっぱいである。
いや、私は真面目だ、ふざけてはいない。
だっておっぱいなのである。
守田は、友人の小松崎とおっぱいについて激論を交わす。
「方法的おっぱい懐疑」や「おっぱい拡大化」などの言葉が飛び交う。
繰り返すが私は真面目である。
ふざけてはいない。
おっぱいという単語の登場回数は三桁を超えるだろう。
そして、「おっぱい拡大化」(プロジェクターで桃色映像資料のおっぱいを拡大して投影すること)の最中に悲劇は起こった。
おっぱいとの戦いに敗れ「おっぱい万歳」と呟いているところを、実の妹と想い人に目撃されたのだ。
これはきつい(笑)
それにしてもこれだけおっぱいという言葉が出てくる小説もなかなかないだろう。
おっぱいいっぱい。
申し訳ない、私は真面目でもなく、ふざけていました。
多分森見登美彦は真面目にふざけていたのだろう。
彼の作品にはそういう所が散見されるように思う。

そういえば、『有頂天家族』に登場した「金曜倶楽部」と思われる面々が登場する。
こういう作品間のリンクも森見作品の楽しみである。
作中の森見登美彦は、守田の手紙からアイディアをパクって『夜は短し歩けよ乙女』に反映させていたりしている。

表紙とタイトルから想像されるような甘い恋の小説ではない。
恋の小説ではあるのだが。
だが非常に面白い小説であった。
後書きも味があっていい。


評価:AA


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Edit / 2011.06.25 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
プロフィール

gaker

Author:gaker
福井晴敏と本多孝好が好きです。大好きです。
もう家に本を置く場所がありません。

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2008 11/13(木)開設

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D:ん~、微妙
E:読み進めるのが苦痛
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