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僕たちの終末
カテゴリ: 機本伸司 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

これでもまだごちゃごちゃ抜かす奴は、できもしないワープエンジンで銀河系の果てまで飛んで行け!


第百十四回
機本伸司の『僕たちの終末』

2050年、太陽活動の異常による太陽暴風で、地球に滅亡の危機が迫っていた。
そんな中、天文学者の神崎正は、恒星間宇宙船を作って地球を脱出することを目標とする、終末旅行サークル、ワールドエンド・スペーストラベル、通称WESTを立ち上げた。
正は小さな人材派遣会社を経営する、瀬河恒夫とその娘那由をも巻き込んで計画を進めていく。
技術的、法律的、政治的問題が山積みの中、WESTはまだ見ぬマクガフィン星にたどり着くことができるのか。

『神様のパズル』が面白かったので買ってみた。
『神様のパズル』が宇宙創成を扱った小説なら、『僕たちの終末』は恒星間宇宙船を扱った物語だ。

まず思ったのは、人類は終末を前にしてもパニックを起こさずにいられるのかということだ。
これは終末までの時間が関係しているだろう。
一週間後に世界が滅ぶと言われればパニックも起きるかもしれないが、この話では太陽暴風が地球を襲うのは数年後だ。
これだけ時間があれば、当面は生活もあるし、パニックも起きないのかもしれない。終末の直前は分からないが。
とにかくその前に宇宙船を作って地球から脱出しようというのが正たちWESTの計画だ。

キャラクターの個性は相変わらず強い。
男勝りの那由。
夢を語るばかりでまったく行動が伴わない正。
「それは理屈に合わない」が口癖の岡本。
能天気なプリン(しかしプリンって(笑))。
何を考えているのか分からない宮西。
他にもさまざまな個性が脇を固める。

相変わらず表紙と中身にギャップがある。
こんな表紙だが内容はがっちがちのSFである。
ちんぷんかんぷんな科学の話を分かったような気にさせてくれるのも相変わらず上手い。

岡本が熱い。
理屈ばかりを言い続けてきた男が、土壇場で絞り出した言葉。

「そうです。人生なんて、理屈に合わない」

今まで憎らしいほどに理屈ばかりを言い続けた男の言葉だから重みがある。

正も最後は岡本に負けず熱い。
今まで行動しなかった男が起こした無謀ともいえる行動。
那由との逃げないという約束を守るために。

終盤の盛り上がりはかなり熱い。
そして、正の疑問は結局宇宙とは何か、自分とは何か、に収束していく。
機本伸司のメインテーマなのだろう。
いや、全ての疑問は突き詰めていけばそこにたどり着くと言える。

青春小説でもあった分、『神様のパズル』の方が好みだったが、負けず劣らず面白かった。

ちなみに表紙の二人は誰だろう。
女の方は那由として、後ろの渋い男はまさか正か。
何か観測具みたいなものも持ってるし。
正はもっとへたれな感じだと思っていたのに……。
むしろこの顔は宮西だろう。


評価:B+


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Edit / 2011.04.05 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
神様のパズル
カテゴリ: 機本伸司 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第百七回
機本伸司の『神様のパズル』
第三回小松左京賞受賞作

就職も決まらず、下手したら留年までありうる僕がゼミの担当教授から頼まれたのは、不登校の天才少女、穂瑞沙羅華をゼミに参加させることだった。
僕は沙羅華に会ってみるも、けんもほろろに断られる。
しかし、「宇宙を作ることはできるのか?」という疑問を叩きつけると、彼女はゼミに出てきた。
それはそのままゼミのテーマとなり、僕は沙羅華と二人で、宇宙が作れることを立証しなければならなくなったのだ。

物語は、僕、綿さんこと綿貫基一の日記という形で進められるが、基本的にはただの一人称だと思ってもらえばいい。
日記という形式を取る必要は特にないようにも思う。

挿絵などはないが、表紙からするとライトノベルに分類されるのだろうか。
だが内容はしっかりSFしている。
青春SFといったところか。
青春物は大好物だ。
大学生のゼミや、天才少女穂瑞沙羅華と落ちこぼれ学生の僕との対話という形をとることで、知識のない素人も、不自然さのない説明で、物理のことについて、なんとなくわかったような気になれるのもいい。
あくまでわかったような気に、だが。

沙羅華の人物造形がいい。
彼女は精子バンクを利用して作られた天才児で、四歳で微積分を理解し、九歳でこの物語で重要となる研究施設“むげん”の基礎理論クロストロン方式を発案した。
そして今は16歳にして飛び級で大学の四回生だ。
超ド級の天才少女である。
性格はクールで無愛想。
男のような、しかも時代がかった話し方をする。
元々そんな性格だったのか元来は違ったのかは今一つ分からない。
天才少女を演じていたとの言もあったから、元々芯の部分はそうだったのかもしれない。
だが、思春期の少女らしい脆さも併せ持つことがだんだんとわかっていく。
そしてそれは天才ゆえの脆さでもある。
その辺りのアンバランスに揺れ動く感じがいい。

ストーリーは、僕と沙羅華の対話が中心となり進んでいく。
二人で宇宙の作り方を考えていく訳だが、実際は沙羅華が考えたことを僕に説明する、といった具合だ。
それを繰り返して、二人はとうとう現実に実現可能な宇宙の作り方を発見する。
そして沙羅華の暴走が始まる。

宇宙とは何かという問いは自分とは何かという問いにつながる。
また当然自分とは何かという問いは宇宙とは何かという問いにつながる。
突き詰めて考えればこの二つは話すことのできない問題だったのだ。
沙羅華は“彼”に聞きたかったのだ。
自分の生まれてきた意味を。
突き詰めればそんなものはないということになってしまい、また誰もが一度は思い、答えられないその意味を。
そんなこと考えてもしょうがないと思い人もいるだろう。
考え続ける人もいるだろう。
考えもしない人は、かなり少ないのではないか。
自分なりの結論を出す人もいるだろう。
ちなみに私は自分なりの結論を出した。
生まれてきたことに意味などない。
だから人生とは自己満足に過ぎない、と。
けして悲観的に考えている訳ではない。
楽しみも悲しみも誰かを愛することも憎むことも全て自己満足だ。
でも、それでいいんだと思う。
生命は自分というフィルターを通してしかものを見ることはできないのだから。

話がそれた。
沙羅華は本気だったのだろうか。
多分そうだろう。
だが止めてほしいという思いもどこかにあったのではないか。
現に僕の説得には少し心が動いていたようだった。
母親と相理さえしゃしゃり出てこなければ、どうなったかわからなかったのではないか。

沙羅華の父親については予想はついていた。
だが矛盾がある。
彼は有能かもしれないが特に大きな業績を残している訳でもないだろう。
何故そんな彼の遺伝子を選んだのか。
少しこの辺はご都合主義的なところを感じる。

最後の沙羅華の変化にはびっくりだが、沙羅華にとっては良かったことなのだろう。
その年代でしか体験できないことはある。
沙羅華はそれをすっ飛ばしてきてしまっていた。
それが彼女のアンバランスさにつながっていたのだろう。

さて、結論だが、面白かった。
少し近未来が舞台なのでどこまでが現在の事実でどこからが作者の創作なのかは私にはわからないが、宇宙蘊蓄なども楽しめた。
クライマックスには引きこまれたし、SF小説としても青春小説としても良作なのではないだろうか。
ただ最後のまとめ方が少し微妙な感じがした。
とっ散らかされた感じというか。
もうちょっときれいにまとめられたのではないかと思った。

余談だが、相理が沙羅華に手を出したのは恐らく三年前。
沙羅華は十三歳(!)だ。
善人面してとんだ危険人物ではないか相理は。


評価:A


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Edit / 2011.03.07 / Comment: 2 / TrackBack: 0 / PageTop↑
プロフィール

gaker

Author:gaker
福井晴敏と本多孝好が好きです。大好きです。
もう家に本を置く場所がありません。

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2008 11/13(木)開設

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