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at Home
カテゴリ: 本多孝好 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

「日曜日くらいゆっくりするものです」


第二百十九回
本多孝好の『at Home』

家族をテーマに描かれた短編集。
本多孝好は短編の方が光ると思っている私としては、お待ちかねの一作であった。

「at Home」
父さんは泥棒、母さんは結婚詐欺師、そして僕はパスポート偽造屋で働いている。
ある日、母さんがターゲットにした男に誘拐される。
僕たちは「家族」を守るために偽札を抱えて指定された場所へ向かう。

表題作。
主人公は本多孝好らしい、一人称僕のとぼけた男である。
本多孝好の小説の登場人物は違法行為に対してのハードルが低い。
だからと行って根っからの悪人だという訳ではない。
むしろ善人寄りだと言っていいだろう。
この犯罪者家族という設定は、だから、なかなか「らしい」ものである。

完成度が高い一作、だとも言えるし、小さく纏まっている、とも言える。
少し物足りなさがあるのは否めない。

「日曜日のヤドカリ」
妻の連れ子である弥生さんが同級生を殴ったらしい。
俺の家を訪れた、殴られた男の子とその父親をあしらったあと、今度は自らの父親の行方を探す男の子が俺の家を訪れた。

弥生さんがいいキャラをしている。
少ない情報から推論を立て、そして母親の浮気という結論にたどり着くと、それを疑わない。
いや、疑わなかった訳ではないだろう。
ただ、ありえると、そう思ったのだ。
クールである。
しかし、それは脆さでもある。
弥生さんは知っている。
家族が、簡単に壊れることを。
今目の前にあるものが、当り前ではないということを。

これが今回の短編集の中では一番好きかな。
軽さと重さのバランスがいい。
このくらいが本多孝好らしい。
他の三篇は少し、重い。

「リバイバル」
借金を帳消しにする代わりに、見ず知らずの女と籍を入れて一年間暮らすことになった私。
妊娠している女に、次第に情が移っていったが、それが男女のものではないことを私は分かっていた。

これはまた最初から最後まで重い話である。
それもまた好きなのだが、個人的に本多孝好に求めるものではない。
だがやはり完成度は高い。

「共犯者たち」
妹の子供を一日預かった僕。
風呂に入れようとした時、甥っ子の体に、異常な痣を見つける。

本多孝好の兄妹が好きである。
「祈灯」の兄弟とか。
今回、兄である僕は妹を信じてやることができなかったけど。
それでもやっぱり二人の関係というものが好ましく映るのだ。
終盤の二人のやり取りがいい。
でもやっぱちょっと重いな。


テーマは「家族」
だが、それは必ずしも血の繋がった家族ではない。
いや、だからこそより強くそのテーマが浮かび上がるのか。
家族とは、覚悟がなくてもなってしまえるものだ。
でも家族で居続けることはそれほど簡単なことではないのだ。


評価:A+


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Edit / 2013.07.14 / Comment: 2 / TrackBack: 0 / PageTop↑
WILL
カテゴリ: 本多孝好 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

けれど、死者を偽ることだけは私は許せない。


第百五十八回
本多孝好の『WILL』

18歳の時に両親を亡くし、葬儀屋を継いだ森野。
彼女の元に様々な厄介ごとが舞い込む。
葬儀の直後に娘に届けられた、死者の描いた絵。
自分を喪主に葬儀をやり直して欲しいと言い出す女。
老女の元に現われた、夫の生まれ変わりだという少年。
そして、アメリカに行った幼馴染、神田との関係は。

『MOMENT』の続編というか姉妹編というか、まあそんな位置づけの作品である。
『MOMENT』は死を目前にした人間の願いを叶える話だった。
一方『WILL』は、死んだ人間……、少し違うか。
死んだ人間と、その周りの人間の話だ。
いや、それも正確ではないか。
この物語は森野の物語だ。

森野の一人称で物語は進む。
そこで描かれる彼女の内面は、思いのほか柔らかい。
口の悪さから思われるほど捻くれてはいないようだ。
彼女が社長を勤める葬儀店で行った葬儀の後に起こった不思議な揉め事を解決するために森野は奔走することとなる。
そしてその中で、失った両親のこと、かんだとの関係の事を森野は考える。

というか森野が乙女過ぎてやばい。
神田からの電話がかかってくるたびに、従業員を追い出し一人になる所とか。
図太そうなのに、このギャップである。
そして神田との関係は『MOMENT』の頃とは大きく異なっている。
超遠距離だが、恋人、と言っていいと思う。
いや少しこの辺は微妙ではあるのだが。
でもプロポーズらしきことはされている。
そして保留状態というわけだ。
この保留には色んな微妙で繊細な問題がある。

文章の空気が初期の本多孝好に近いと思う。
私はとてもこの雰囲気が好きだ。
桑田なんてとても「っぽい」人物だ。
一見バカだが、根は善人で。
竹井もいいんだよなあ。
森野を見つめる眼差しが優しい。

しかし神田もそうだったが、森野も名探偵である。
森野に持ち込まれた事件の中で、人々は、怒ったり、泣いたり、すれ違ったり、嘘をついたりしながら、最後は収まるべき所へ収まる。
そしてそれは森野も例外ではないのだ。

佐伯杏奈の話が一番好きだ。
もちろんその最後も含めて。
彼女の父親は本当に懐の深く、情の厚い人物だったのだなと思う。

ああ、でも本当にいい雰囲気の作品だった。
あ、後表紙のデザインが凄く好き。
単純な星空だがなんか凄く好きなのである。


評価:AA


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Edit / 2012.04.12 / Comment: 4 / TrackBack: 0 / PageTop↑
チェーン・ポイズン
カテゴリ: 本多孝好 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

人はみな孤独です。誰だって一人分の孤独を抱えている。そんなものに重いも軽いもない。等しく一人分の孤独を、みんな抱えているんですよ。


第百五十回
本多孝好の『チェーン・ポイズン』

突発性難聴になった天才バイオリニスト、残虐な事件の遺族、三十代の元OL。
同時期に毒物を飲み自殺した三人。
そこに興味を持った週刊誌の記者、原田は調査を開始する。

物語は調査を進める原田と一年後に死ぬことを考える三十代の元OLの二人の視点で進む。
原田は三人に毒物を渡した人物を追いかけ、三十代の元OLは自分が死ぬに足る理由を見つける。

さて、以下はネタバレを含む。

語り手の一人である女性と高野章子が同一人物ではないことは早い段階からわかった。
彼女は明らかに高野章子とは一線を画す。
強いのだ、
彼女は。
施設の子供たちや工藤とのやり取りからもそれは明らかだ。
死のセールスマンの正体もまあ、上記のことと消去法でわかった。

冒頭に引用した台詞など、本多孝好らしい所が散見されていていい。
独特の味のある文章だと思う。
好きだな~、こういうとこ。
ただ、強く惹きつけられる部分は少なかったように思う。
本多孝好の中では下の方か。

作中の人物の中でとりわけ、そう醜悪といってもいい人物がいる。
もちろん見た目ではなく心根の話だ。
それはベンツではなく、彼の母親、園長だ。
彼女のしたことはあまりにひどい。
あれは背信だ。
子供たちや、工藤達にはもちろん、それ以上に彼女自身、彼女の今までの生き方に対しての背信だ。
死の間際だから仕方ない、ではない。
死の間際だからこそなのだ。
あまりに、無責任だ。
さらっと流されているのは恐らくわざとだろう。
流されているからこそ、私は強い不快感を園長に対して覚えた。
確か以前の作品にもこんな話があった気がする。
『MISSING』の中の一編だったか。
今作では主人公がそのことにさほど憤りを覚えない分、読者が憤りを覚えるようになっているのかもしれない。

目の前に一錠飲むだけで楽に死ねる薬があったとして、どれだけの人がそれを口にするのだろうか。
どれだけの人が飲まずにいられるのだろうか。
生きていくということは、面倒くさいことだ。
楽しいことだってある。
だが、多分きっと辛いことの方が多い。
だからと言って死ぬのも現実的に考えれば面倒くさい。
方法は色々あるだろうが、そのほとんどが痛かったり苦しかったり怖かったりだ。
でも、一錠飲むだけで楽になれるのなら?
それは確かに甘美な誘惑なのかもしれない。

読後感は何とも言えない。
ハッピーエンドと言えばそうなのだが。
何だかもやもやする。
彼女と子供たちの抱えていた問題があっさり解決してしまったというのもあるだろう。
まあこれはわざとそうしたのだろうが。
あっけない偶然でたやすく世界はがらりと変わるということだ。
いい方にも悪い方にも。


評価:A+


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Edit / 2012.02.27 / Comment: 0 / TrackBack: 1 / PageTop↑
正義のミカタ I'm a loser
カテゴリ: 本多孝好 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

「僕は違うかっこよさを目指します。あ、いや、そうじゃなくて、たぶん、かっこよくない何かを目指します。かっこいいのって、僕にはきっと似合わないから」


第百三回
本多孝好の『正義のミカタ I'm a loser』

本多孝好は長編より短編が面白いと思っていた。
今でもその考えは変わっていないが、この作品は長編にして、かなりレベルが高い。
『真夜中の五分前』ですこしがっかりしたが今作はすごくいい。
まあ、私が青春小説が好きだと言うのもあるだろうが。

主人公の蓮見亮太は筋金入りのいじめられっ子だった。
一念発起し大学に入学、晴れて憧れのキャンパスライフを満喫するはずだったのだが、何といじめの主犯の畠田まで同じ大学に入学していたのだ。
大学に入ってまでいじめられるのかと思ったその時、亮太を救ったのは、高校ボクシングのフェザー級でインターハイ三連覇を成し遂げ、今、飛鳥大学、「正義の味方研究部」に所属する男、トモイチだった。
そして亮太も正義の味方研究部に入部することになり、元いじめられっ子のプライドに賭けて事件に関わっていく。

いやあ面白かった。
今作の主人公、亮太は今までの本多作品の主人公達とは一線を画す。
どこか冷めていて、捻くれた、それでいて格好いい今までの主人公達。
一転、亮太は元いじめられっ子で、ダサくて、情けなくて、スケベだ。
その亮太が格好悪くたって頑張るその姿こそ格好いい。
まあ私は両方好きなのだが。

亮太の唯一の特技が相手の攻撃をよけることだ。
よけた後の攻撃もトモイチに教わって練習したが役に立つことはなかった。
いや、というかよけることもほとんど役に立っていない。
ヤンくんのパンチをかわしたくらいか。
最後の勝負では毛ほども役に立たない。
まあ、あれはそうすることに意味があったのだろうが。

正義の味方研究部の活躍は読んでいて小気味いいし、単純にスカッとする。
だがもちろんそれだけの話ではない。
少し怖くて、それでいて人を惹きつける間先輩という男。
彼との対決が中盤の山場となる。
亮太は彼に影響を受け、少なからず変わる。

そして最後の勝負へ繋がっていく訳だが。
そこにこの作品の唯一の欠点がある。
何というかあまりに唐突過ぎるのだ。
いや、あの時亮太の熱が冷めた理由は分かるし、その後の思考もわかる。
だがやはり唐突感はぬぐえない。
もっと以前から伏線を張っておくべきだったと思う。
間先輩の影響なども少なからずあるだろうが、それでもまだ足りない。
だから、なんでそうする必要がある、と思ってしまう。
亮太にとって譲れない一線なのだろう。
それは分かる。
分かるからこそもっとページを割いてほしかった。

とはいえ、最後の勝負自体は熱いものだった。
優姫先輩がガチンコする気満々なのが良かった。
ああいう自分が美人であることを自覚して、公言できてしまうキャラクターは好きだ。

まあとにかく、面白い小説であることは確かだ。
自信を持ってお勧めできる。
終わり方も余韻があっていい。
読後感も素晴らしい。
そしてなんといっても、格好悪い亮太が最高に格好いい。
ぜひみなさんにも読んでいただきたい。


評価:AA


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Edit / 2011.03.04 / Comment: 2 / TrackBack: 0 / PageTop↑
ALONE TOGETHER
カテゴリ: 本多孝好 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第十二回。
また、本多孝好さんです。
今回は長編ですね。
これも何回か読み直していて、今回で四回目くらいかな?
最初読んだ時はいまいちかな、とも思ったんですが。
読めば読むほどこれはなかなか。

主人公は例によってひねくれた男です。
そしてある種の超能力のようなもの――他人の波長と同調し、人間の暗部を暴く力と言ったところでしょうか――を持っています。
そういえば珍しく名前がついていますね。
柳瀬という苗字だけですが苗字だけですが、さすがに長編では代名詞だけで通すわけにはいかなかったのかな?

しかし、主人公の暴く人の内面が凄いです。
綺麗ごとの裏に隠された汚い部分。
もちろんそれが全て、というわけではないのでしょう。
しかしずっと目を逸らしていたものをそれだけ取り出して、しかも主人公のあの調子で囁かれたら、それが唯一の真実であるかのように思ってしまっても無理はありませんね。
そして、この力は少なくとも作中では少しもいい結果を招きません。
だから「呪い」なんでしょうね。

にしても熊谷いいな~。
いい女やでしかし。
何ていうか、主人公の救い、なんでしょうね。
一瞬で機嫌なおした時は軽って思いましたけど(笑)

 永遠にその人を呪いながら生きていく。そうなんだろう。だったら、僕はそれ以上の祈りをその人のために捧げるよ。

本多さんの作品には大体胸に残る言葉があります。今回はこれですね。

本多さんの小説は凄いやさしいんですけど、それと同時に人間の本音の汚さみたいなものが書かれることが多いです。
そしてまたそれが上手いんですよ。



評価:AA



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Edit / 2008.12.11 / Comment: 2 / TrackBack: 2 / PageTop↑
プロフィール

gaker

Author:gaker
福井晴敏と本多孝好が好きです。大好きです。
もう家に本を置く場所がありません。

リンクもトラックバックも昔の記事へのコメントも全部大歓迎です。

2008 11/13(木)開設

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C:暇つぶしには
D:ん~、微妙
E:読み進めるのが苦痛
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