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ツナグ
カテゴリ: 辻村深月 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

 死者は、残された生者のためにいるのだ。


第百七十九回
辻村深月の『ツナグ』
吉川英治文学新人賞受賞作

死者と生者を会わせることのできる使者(ツナグ)。
ただしその機会は使者にとっても生者にとっても一度だけ。
その役目を担う少年の元に、様々な思いを抱えた人々が訪れる。
死者との邂逅が生み出すものはいったい何なのか。

連作短編である。
一生に一度だけ、死者との再開が叶うなら、いったい誰と会うのか。
この作品を読んだ誰もが考えることだろう。
私はどうだろう。
今のところ、会いたい死者はいない。
だが、もし、死んでしまったのならば会いたいと思う人はいる。
相手が会ってくれるかは別として。

さて、あらすじを見れば、「ちょっといい話」系統の小説だと思う人が多いと思う。
事実最初の二編はそうだ。
だが、もちろん辻村深月がそれだけのはずがない。
三篇目の「親友の心得」の苦さといったら。
これはちょっと筆舌にしがたい。
是非読んでいただきたい。
そして、だからこそ次の一編が活きる。
失踪して七年がたつ婚約者を待ち続ける男。
自分は騙されたのか、あるいは、彼女はもう亡くなっているのか。
その葛藤を整理しきれないまま男は使者に依頼をする。
そして直前で逃げだした男に、それまでビジネスライクに振る舞っていた使者の少年が、等身大の姿を見せる。
嵐のことを知っているから。
消えない悔恨を背負った嵐をこの目で見たから。

「使者の心得」にて、使者の少年、歩美の視点で物語が語られる。
歩美は確かに特殊な事情を持っている。
でも、普通の高校生だ。
使者という特殊な立場が歩美を特別な風に見せていたが、普通の、悩める高校生だ。

面白かった。
特に「親友の心得」は凄い。
こんなに苦い話はそうそうない。
そして、嵐を安易に救うこともしない。
辻村深月は嵐の小さな悪意を簡単になかったことにはせず、嵐に一生背負わせる。
でもただ突き放すだけでもない。
歩美が嵐に送った花は、中途半端だ。
だが、その中途半端さが人間ではないか。

とはいえ、辻村深月の作品として考えれば普通くらいか。
やっぱり溜めに溜めた後の最後のカタルシスが欲しい。
普通の長編が読みたいな。

映画化されてるみたいだけど、見る気はしないな。
原作より面白いってことはまずないだろうし。

FC2ブログランキングにアクセスできないのは私だけだろうか。
何回やっても「FC2IDシステムへログインできませんでした、LINE=50」と表示される。
他の、アクセス解析などは見れるのだが。
ググっても解決方法がわからない。
ん~、もうちょっと様子見るか。


評価:A+


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Edit / 2012.10.27 / Comment: 2 / TrackBack: 0 / PageTop↑
ふちなしのかがみ
カテゴリ: 辻村深月 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

 あーあ、先輩。言っちゃった。


第百七十二回
辻村深月の『ふちなしのかがみ』
青春物で知られる辻村深月のホラー短編集である。
辻村深月といえば、この度、直木賞を受賞した。
喜ばしいことである。

「踊り場の花子」
日直の仕事のため、職員室で仕事をしていた相川は、教育実習で世話をしたチサ子から、学校に忘れ物をしたという電話を受ける。
やけに早くやってきたチサ子は、何故かこの学校の七不思議、『階段の花子さん』の話を始める。

話のオチ自体は結構早い段階から何となく読めていたのだが、それでも最後は「ん?」となった。
でもすぐにさゆりが花子さんに欲しいものをあげていることに思い至った。
というか本人がそう言っている。
つまりは、改めて真実を言わせることで「最初の発言」を嘘に確定させたということか。
この短編集で一番好きかもしれない。

「ブランコをこぐ足」
ブランコで起こった凄惨な事故。
その被害者は、「キューピットさん」の儀式を行っていた。

「キューピットさん」とはいわゆる「コックリさん」のような降霊術である。
遊びでやっていたら本当に霊が来てしまったというのは、ホラーにありがちではあるが、短い中でよく料理されている。
また最後で、「え?」となった。
使用した十円玉を使うというのはコックリさんの正しいやり方だとどこかで聞いた覚えがあるのだがその辺がよくわからなかった。
買ったガムを一人で食べなかったからいけなかったのか。
キューピットさんはまた違うのか。
話の結末から前者っぽい。

「おとうさん、したいがあるよ」
つつじは、掃除に訪れた祖父母の家で大量の死体を発見する。
それらを人知れず処分することにしたつつじとその両親だが……。

これは前の二作に輪をかけて分からなかった。
結局全部妄想ってことでいいのか?
でもこのわからなさもホラーな感じで嫌いではない。
他のジャンルでやられると嫌だが。

「ふちなしのかがみ」
表題作。
鏡に自分の将来の姿が映るというおまじない。
香奈子はそこに想い人に良く似た自分の娘の姿を見た。

いやあこれは後味が悪い。
そして騙された。
やはり辻村深月はミステリー作家だなあ。
ホラーを書きながらも骨組みはミステリーだ。
収録されているほかの作品も基本はそうだ。

「八月の天変地異」
シンジはキョウスケと友達であるせいで、クラスの輪から外されていた。
それが嫌だったシンジは架空の友達「ゆうちゃん」を捏造する。
しかしシンジがピンチに陥ったとき、ゆうちゃんは本当に現れた。

これはホラーというよりもファンタジーかな。
この作品だけ毛色が違う。
切なく、物悲しい。
何となく乙一っぽいなと感じた。
ああ、でもいいなあ。
好きだなあ、この感じ。


全体を通して、ミステリーの枠組みでホラーを書いた、という感じだ。
はっきりしない部分も残るが、それもホラーならではだ。
ただやっぱり辻村深月は長編向きかなと感じた。
短編がつまらないわけではけしてないのだが。
やはりある程度の長さがないとあの最後のカタルシスは味わえない。
とはいえ、良質の短編集であった。


評価:B


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Edit / 2012.08.02 / Comment: 4 / TrackBack: 1 / PageTop↑
ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。
カテゴリ: 辻村深月 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

 お母さん。これは、ひどい。


第百七十回
辻村深月の『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』

女性が刺殺体で見つかり、その娘は失踪した。
失踪した娘、チエミの幼馴染、みずほはチエミの足取りを追う。
互いに歪んだ母娘関係を持つ、みずほとチエミ。
チエミはなぜ母を刺し、そしてなぜ逃げるのか。

いやはや、凄いな。
これは、けっこう圧倒されてしまった。
まず、女同士の友情の描写が無茶苦茶生々しい。
特に政美とかが印象深い。
率直で打算的で、でも、悪役というわけではない。

タイトルの意味も最初はわからなかったのだが、なるほど、そういう意味か。
ものすごく上手いというわけではないのだが、印象的ではあった。
でもこれは気付いてしかるべきだったかもしれない。
続きが気になってしまったので、あまり深く考える事をせずに読み進めてしまった。
チエミが逃げ続けている理由も、一切考えずに読み進め、仰天した。
後に深く納得した。
あ~、なるほど、みずほが赤ちゃんポストにこだわっていたのはそういうことだったのか。
違和感はあった。
何だか本筋とは関係ないな~とかぼんやり思っていたが、辻村深月がそんな関係ないことにページを割くわけがないのだ。
いや~、そうか、こうつながるのか。
このへんも、伏線は十分以上に張られていた。
大地の言動、それに対してのみずほのリアクション。
それにしても大地のクズっぷりったらないな。
すがすがしいまでにゲスい。

まあ大地の事は置いておいて。
こう繋がるのか~、と思った。
だがまだページがある、残っている。
『名前探しの放課後』のときと同じ感じ。
これはまだひっくり返るぞ、と直感した。
だが、どうひっくり返るのかは全く分からなかった。

みずほ視点で書かれた第一章の四分の一程度しかない第二章はチエミ視点で書かれている。
そしてついに事実が明かされる。
最初から何もなかった、というチエミの独白でまさか、と思った。
だが、翠が赤ちゃんポストのことに言及していたから、まさかね、と思ったのだが。
マジだった。
そんな、うわあ、これじゃあ救いがないではないか。
みずほはチエミを見つけたけど、約束の事を覚えていたけれど、でもこれは。

さすが辻村深月である。
ラストで思いっきり振り回してくれた。
『太陽の坐る場所』は、少し消化不良だったが、今作は良かった。
ジェットコースターのようなラスト。
チエミの最後の台詞は、本当に切ない。

とても良かったのだが、一つだけ気になる点がある。
翠とチエミの別れ際、なぜ翠は赤ちゃんポストのことに言及したのか。
いくらなんでもお腹が膨らんでいないことは一目瞭然だろう。
ここだけちょっと疑問だ。

そういえば、ドラマ化でもめているらしい。
脚本が原作と違いすぎて、辻村深月が拒否したようだ。
何でも、みずほが手紙を見つけるシーンがカットされていたとか。
そこめちゃくちゃ大事なシーンじゃないか。

そういえば辻村深月は、人気作家の割にメディアミックスの話を聞かないな。
『冷たい校舎の時は止まる』は確か漫画化されていたと思うが、他はあまり聞かない。
映像化したら面白そうに思うが。
アニメとかでもいけそうだ。
辻村深月の意向なのだろうか。


評価:A+


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Edit / 2012.06.24 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
太陽の坐る場所
カテゴリ: 辻村深月 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

「太陽はどこにあっても明るいのよ」


第百六十七回
辻村深月の『太陽の坐る場所』

かつてのクラスメイトが、今をときめく女優「キョウコ」として活躍している。
毎年行われる同窓会に出席しないキョウコを何とかして引きずり出そうと何人かがそれぞれの思惑を秘めて画策する。
だが、キョウコと接触をした人間が、次々と音信不通となっていく。
嫉妬、焦り、羨望、青春はけして綺麗なものだけではない。
高校時代と、10年後の現在。
生々しい感情が容赦なく描かれる。
そしてその先にあるものとは。

辻村深月といえば講談社だと思っていたので、売られていることに気付かなかった。
そして、途中まで読んだ所で、シュタゲだーりんが発売されてしまってシュタゲ漬けになってしまったので、続きから読んだとき、細かい所を忘れてしまっていて、4章まで読み終わったところで「???」となってしまい、結局最初から読み直した。

しかし、本当に人間の心理を描くのが上手いな。
特に直視したくない、汚い部分を。
プロローグとエピローグを除けば、五つの章で構成されており、それぞれ焦点の当てられている人物が違う。
そして、それぞれの人物のドロドロとした本音をしっかりと描いている。
この5人の誰にも共感できなかったという人はいないだろうと思う。
程度の差はあるだろうが、誰だってこういう感情を持ったことがあるはずだ。
同じ道のはるか先を行く人間に対する羨望。
何故自分では駄目なのかという気持ち。
自分を見下し、哀れむ人間を逆に見下したいという感情。
自分は持っているのだという優越感。
強いものの近くに寄り添い、その威光を借りる姑息さ。
それを恥じない傲慢さ。
自分が光を浴びる人間ではないということを自覚しながら、それでも下を見てお前らよりは上なのだという不安と隣り合わせの安心。
自分だけが想い人の事をわかってあげられるという滑稽さ。
過去に囚われ抜け出せない絶望。
傷つくことで贖罪としようとする自己満足。

いやほんと、読んでいると、自分の内にもこういう感情があることを突きつけられているようで、なんかこう、心の中をちくちくと突っつきまわされているようで、落ち着かない。
そしてまあ、当然ながら辻村深月なので、それだけではなく、「仕掛け」がしっかりとある。
それは、キョウコとは誰かということなのだが、序盤から何かちぐはぐな感じはあった。
どこか噛み合わない感じ、パズルのピースが合わないような。
そう、いくら10年経っているとはいえ、キョウコと響子の人物像が違いすぎるのだ。
違和感は覚えていた、が、はっきりと明示されるまで残念ながらわからなかった。
仕掛けは二重に仕掛けられてるということもあるし、やはり、間に3週間くらい挟んでしまったのも良くなかった。
一気読みしていたらあるいは気付けただろうか。
相変わらず、上手いなあと思う。
全く気付かせないのではなく、ある程度気付かせておいて、明かされたときに、ああ、そうかそういうことか、あれはそういう意味だったのかと読者に思わせる絶妙なライン。
しかし一つだけずるいと思った点がある。
やっぱり、倫子をみちこと読むのは無理がないか?
普通りんこと読まないか?
と思ってふと、みちこで変換したら普通に「倫子」が出た。
むしろりんこでは変換できなかった。
こっちのが普通なのか、知らなかった。
つまり別にずるくはなかった。

私が個人的に一番共感してしまったのは、最初に焦点が当てられる、半田聡美だろうか。
自分には手の届かない位置にいる人物、しかもかつては同じ場所にいたはずの人物、に対する羨望。
自分がそこへ至れない絶望。
それでも有象無象の輩とは違うんだと考える何の価値もないプライド。
凄く、分かってしまうのだ。

私はどうして、その中に入っていないのだ。当事者ではないのだ。

この言葉はなかなか重い。

しかし、この作品は他の辻村作品とは少し毛色が違うように感じた。
最後のクライマックスのカタルシスがないのだ。
今までの辻村作品はそれこそ怒涛の最後だった。
そこが好きだった。
だが今作はむしろ途中の、登場人物のドロドロとした感情を描くことに力を入れているような気がした。
個人的にはやっぱり今までのほうが好きだなあ。
カタルシスという点では、里見紗江子の章がよかったな。
ぐっときた。
そうだよ、彼女は哀れんでいたんじゃない、怒っていたのだ。
あの後どうなったのかめちゃくちゃ気になるのだが、「降りて」しまった彼女達のその後は語られない。

例によって、他の辻村作品とのリンクがある。
はっきりと明言されているわけではないが、キョウコが出演した映画『アマノ・イワト』を担当した「日本で一番多忙な脚本家」とはほぼ間違いなく『スロウハイツの神様』の赤羽環であろう。
また、少し言及された、青南高校は『冷たい校舎の時は止まる』の舞台となった高校だったと思う。
『冷たい校舎の時は止まる』だけは、他の作品とのリンクがなかったように思うが、これで、同一世界の話だと分かった。

個人的には他の作品の方が好きではあるが、十分に読み応えのある作品だといえる。
本当に上手く人間を描き出すなあ。


評価:A


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Edit / 2012.05.21 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
ロードムービー
カテゴリ: 辻村深月 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

「――それが、いつか終わりがくるものだってことも、全部知ってる。だから、平気なの」


第百四十六回
辻村深月の『ロードムービー』

まず最初に言っておきたいのは、今作を読む前に『冷たい校舎の時は止まる』を読んでおくべきだということだ。
一度読んだ人も読み返した方がいい。
明言こそされていないが、今作は、『冷たい校舎の時は止まる』の番外編的な短編集となっている。
ほとんどの作品が、『冷たい校舎の時は止まる』を未読でも読めるようにはなっているが、読んでいた方が圧倒的に楽しめる。
背景にあるものを理解しているかどうかで、一つ一つの台詞の持つ深さ、重みが違ってくる。


「街灯」
冒頭を飾るのはわずか4ページの掌編だ。
ストーカーか! の一言に尽きる。
いや、いい話だし、好きだけど(笑)


「ロードムービー」
表題作
クラスの人気者のトシは、気弱で友達も少ないワタルと友達になる。
そのことがきっかけで二人はクラスから孤立し始める。
そして、二人は「ある事情」から家出を決意する。

トシの両親については正体はすぐにわかる。
以前にも書いたがこういう後日譚は好きだなあ。
物語が終わっても、登場人物たちの人生は続いていくのだ。

しかし、正直に言うと、短編では辻村深月の力は発揮できないだろうとたかをくくっていた。
微妙な齟齬を感じながら、深く考えずに読み進め終盤でやられたと思った。
あー、なるほどね。
辻村深月はやっぱり生粋のミステリー作家だ。
きっちり仕込んできた。
アカリがトシと仲良くしたがった理由も、中学生がワタルの方だけ手加減なしで殴ったことなんかはそういうことだったのか。
しかしそう考えれば恐らくアカリの兄たちであろう中学生は本当にくずだな。
ビックリするくらいのくずだ。

トシの母親である景子が結構好きだ。
母親になってもクールなんだな。
でも本当は情に篤い。
父親の裕二は国会議員になったのか。

鷹野と深月の結婚について書かれているのもいい。
しかし欲を言えば、ここは本人視点でじっくりと読みたかった。

少女の初恋と失恋とか、いじめとか、大人の事情で引き離される子供とか、色々あるけども、いつも通り読後感はいい。
辻村深月の特長の一つだろう。


「道の先」
大学生で塾講師のバイトをしている「俺」は、一人の生徒、大宮千晶に気にいられる。
彼女は塾のクラスの中心的人物で、気に入らない講師を次々に辞めさせていた。

多分、一番好きな話。
語り手である「俺」が誰かはこれまたすぐにわかる。
留守番電話の女の子も。
彼はずいぶん成長したのだな、と感じた。

何でも持っていて、それゆえに不安定な少女というのは何と言うか、魅力的だ。
そしてその不安に対する「俺」の答えが優しくて温かくて。
自分がそうだったから、ここじゃないどこか遠くに行きたかったから、それがどこにもないことを知ってたから、だから言える。
きっとうまくいくって。
ああ、優しい話だなあ。


「トーキョー語り」
さくらのクラスに来た垢ぬけた転校生、久住薫子。
最初はクラスに歓迎された薫子だったが、父親が服役中のヤクザであることが知れ、少しずつ孤立していく。
そして、薫子がクラスで決定的に孤立した時、彼女を庇ったのは、同じくクラスから孤立していた遠山さんだった。

最初は名字の出てきていないさくらが、本編組の誰かの子供かと思ったが、どうも感じが違う。
さくらは地元の子だ。
そして遠山さんが出てきて、彼女がキーパーソンであることがすぐに分かった。
その正体は本来ならすぐにわかってしかるべきだったのだろう。
だが私は本編組との絡みばかりを考えてしまい不覚にも全く気付かなかった。
清水か昭彦かその辺の子供か? なんて考えていた。
本当に不覚だ。
そしてラストで、お前かーー!!ってなった。

なるほど、千晶は先に大人になりすぎたんだな。
そういうふうに言われていたもんな。
でもちゃんと対等な友達ができてよかったじゃないか。

さくらのコンプレックスのなさに対するいら立ち、というのは少しわかる。
私も篤志や一美と同じくコンプレックスの塊だからだ。
彼らと違って、もう結構いい年なのだが。
それにしてもスピンオフのスピンオフと来たか。
やってくれる。


「雪の降る道」
みーちゃんは、体調を崩しがちになったヒロのところへ様々な宝物をもってお見舞いに訪れる。
しかし、それをうっとおしく思うヒロは、みーちゃんを傷つけてしまう。
そしてみーちゃんは姿を消してしまう。

まあこれは名前を伏せる必要はないだろう。
鷹野と深月、そして榊の昔の話だ。
もう一人のヒロが死んでしまった後、鷹野が深く傷ついていて、深月はその痛みを共有したくて、そんな時のお話。

幼さ故に深月を傷つけてしまう鷹野が痛々しい。
ヒロを失った痛みを、深月にぶつけてしまう鷹野が悲しい。
でもやっぱり物語の終わり方は優しい。
しっかし榊は男前だな。
乱暴な言葉遣いとは裏腹な優しい行動。
まだ中学生だとはとても思えん。


総評として、やっぱり締め方がいい。
全部優しい。
作者の登場人物を見つめるまなざしの温かさが伝わる。
残念なのは、清水と昭彦が全く登場しなかったことか。
まあ八人全員は無理だったか。
この二人のその後も読みたかったのだが。

面白かったが、やはり辻村深月は長編向きだと感じた。
あの終盤での伏線回収と怒涛の展開をするには短編では短すぎる。
まあそれでも、どこか懐かしさを感じる、いい作品だった。


評価:A+


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Edit / 2011.12.06 / Comment: 4 / TrackBack: 0 / PageTop↑
プロフィール

gaker

Author:gaker
福井晴敏と本多孝好が好きです。大好きです。
もう家に本を置く場所がありません。

リンクもトラックバックも昔の記事へのコメントも全部大歓迎です。

2008 11/13(木)開設

評価基準
AAA:凄く凄い
AA:凄い
A:とても面白い
B:面白い
C:暇つぶしには
D:ん~、微妙
E:読み進めるのが苦痛
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