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悪の教典
カテゴリ: 貴志祐介 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

そう……教育とはつまるところ、洗脳の一種に他ならない。


第百八十四回
貴志祐介の『悪の教典』

頭脳明晰にして、ルックスも優れ、生徒はもちろん、同僚やPTAからも絶大な信頼を得る教師、蓮実聖司の真の貌は、邪魔になるものは手段を問わずに排除する、共感性というものを一切持たないサイコパスだった。

これは凄い。
読者にページをめくらせる文章力。
決して飽きさせない展開。
そして何よりも蓮実聖司という人物。
おぞましくも素晴らしい、完全無欠のエンターテイメント小説だ。

いやもう本当に凄いとしか言いようがない。
これは……、うん。凄い。

序盤は穏やかである。
だが少しずつ、這い寄るように蓮実の異常性が滲み出てくる。
それを当たり前の日常の中に当たり前のように放り込んでくるのだから、えも知れない違和感が残る。
そしてその違和感は、ストーリーが進むとともに大きくなっていく。

重要と思われる人物を蓮実があっさりと殺してのけるのも凄い。
釣井、圭介、園田、蓼沼。
皆あっさりと殺された。
一矢報いたと言えるのは園田くらいだ。
蓮実というジョーカーの前では、どんなカードも無意味だと思い知らされる。

蓮実は快楽殺人者ではない。
障害を排除するための方法の一つとして殺人を選択することに一切の躊躇を持たないというだけだ。
だから殺す時に相手を弄んだりはしない。
むしろ慈悲すら与え、楽に殺してやろうとする。
何とおぞましく、そして魅力的なキャラクターなのだろう。

そう、蓮実聖司は魅力的なのだ。
表の貌も、裏の貌も。
これがノンフクションならば、不謹慎もいい所だが、これはフィクションである。
だから読者は思う存分、蓮実の殺戮に酔いしれることができる。
園田が生徒を守るために、命がけで猟銃を持つ蓮実に立ち向かった時、我々が応援するのはどちらか。
言うまでもない。
蓮実だ。
窮地に追い込まれた後、園田を打ち倒した時は安堵すらする。

蓮実に情のようなものが芽生えかけるシーンがある。
こういうパターンだと最後の最後にこれが蓮実に躊躇を与え、それが致命的なミスとなるのが王道だろう。
しかし、本作において、そのようなことは起こらない。
蓮実は最後まで蓮実のままだ。
一切の躊躇もなしに、自らの教え子達を「卒業」させていく。

少し惜しいなと思った点は、猟銃が人格を得たような幻聴を蓮実が聞いていたことだ。
無駄弾まで撃っている。
ここは完璧に冷静に徹してほしかったところだ。
まあ、傷とも言えない些細な点だが。

そしてラストである。
『悪の教典』というタイトルの意味が明らかになった時、背筋が震えた。
何と性質が悪く、何と悪趣味なのだろう。
むろん、これは褒め言葉だ。
おかげで読後感は最高に最悪だ。
まるで冗談のような、いや、冗談そのもののその結末はぜひともご自分の目で確かめていただきたい。

伊藤英明主演で映画化しているようだが、これはなかなか絶妙なキャスティングだと思う。
蓮実聖司にこれ以上相応しい俳優がいるだろうか。

また、『バトルロワイヤル』と比較されることもあるかもしれない。
だが、明らかにこの二作は異なる。
現代の日本ではない架空の世界を舞台にした『バトルロワイヤル』はどこか軽い。
それが悪いという意味ではない。
アメリカンなテイストのあの作品の持ち味であると思う。
一方、現代の日本を舞台にする今作は実に重い。
ずっしりと来る読み応えである。
どちらが好きかは好みによるだろうが、私は『悪の教典』の方が好きだ。

それにしても貴志祐介は多才だ。
ホラー、ミステリー、SFと何でもアリじゃないか。
少々寡作なのが玉に瑕か。
だがその分、一作品の密度は恐ろしく高い。

映画も興味がわいてきた。
レンタルになったら借りてみようか。


評価:AAA


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Edit / 2012.11.16 / Comment: 2 / TrackBack: 2 / PageTop↑
新世界より
カテゴリ: 貴志祐介 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

想像力こそが、すべてを変える。


第百三十七回
貴志祐介の『新世界より』
第29回日本SF大賞受賞作品

千年後の日本。
人類はついに呪力と呼ばれる超能力を得るに至った。
自然に抱かれ、注連縄に囲まれた集落、神栖66町。
人々はバケネズミと呼ばれる生物を使役し、平和な生活を送っていた。
そこに生まれた早季は友人たちと呪力の技を磨いていた。
しかしその陰でひっそりと消えていく子供たちがいることには、何故か誰も注目することはなかった。
そのかりそめの平和は、早季達が夏季キャンプで、ミノシロモドキ――正確には国立国会図書館つくば館の自走型端末、を捕らえ、先史文明が滅んだ理由と、今に至るまでの歴史を知り、今の平和がどれほど歪んでいるかということを知って、少しずつ狂い始めていく。

いやあ、面白かった。
一気に引きこまれるストーリー。
人間味のある登場人物。
文庫本三冊に至るボリューム。
全てが満足だ。
一つだけ不満があるとすれば、これは早季の手記という形をとっているので、早季が死なないということが早い段階でわかってしまうことだ。
覚についても同じことが言える。
そして逆に言えば、早季が手記を書いている時代のパートにおいて、名前が登場しない人物がどうなるかも予想がついてしまう。
せめて覚の名前は序盤では出さないでほしかった。
そうすれば誰が生き残り、誰が死ぬのかがわからないまま読み進めることができたのに。
構成としてはそっちの方が面白いと思うのだが。

物語が穏やかに進むのは幼年期までである。
夏季キャンプからは一気にストーリーが加速する。
呪力を奪われた状態で、外来種のバケネズミのコロニー「土蜘蛛」につかまり、脱走。
そのまま人間に従順な「塩屋虻」コロニーに保護され、「土蜘蛛」との闘いに助力を要請される。
覚が呪力を取り戻し、「土蜘蛛」と戦い、疲労で再び呪力が使えなくなる。
人間に従順とはいえそれは呪力があるからで、呪力が使えないことがばれたら何をされるかわからない。
といった具合でピンチピンチの連続で、読んでいて息つく暇もない。

私は最初、倫理委員会こそが最後の敵となると考えていた。
中でも稀代の天才、鏑木肆星こそがラスボスかと疑っていた。
だが、彼らにも、攻撃抑制と愧死機構(人間の遺伝子に組み込まれており、同種の生物を攻撃できなくなる)が備わっており、人間を呪力で攻撃することはできないのだ。
あるいは、序盤での記述から、真理亜が敵にまわるとも思っていた。
しかし、本気を出せば地球を割ることすらできると言われる鏑木肆星は活躍を見せるも、あっさり悪鬼(実際は違うが)に殺される。
真理亜に関する記述も彼女と守の子供が、人間に反逆を起こしたバケネズミの切り札となるという意味だった。
また、天才的な才能の片鱗を覗かせていた瞬も業魔となりあっさりと死んでしまう。
だが彼は後に重要な役割を果たすことになる。

とにかく作者がこれでもかと不安を煽ってくるので、本当にページをめくる手が止まらない。
そして、消えていった子供たちの真実などグロテスクな社会構造が次第に明らかになることで不安はさらに煽られる。
ますます先が気になってしょうがないのだ。
本当にうまく作られた物語だと思う。
これだけの長さが全く気にならないのは凄い。
構想二十五年は伊達じゃないということか。
たった千年で歪に進化した様々な生物などもしっかりと考えられていて、世界観に深みを与えている。
生物といえば、バケネズミの正体も意外で、人の業の深さを感じさせられた。

傑作ぞろいの貴志祐介作品の中でもこれは最高傑作といってもいいのではないか。
万人に進められるエンターテイメント作品である。


評価:AAA


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Edit / 2011.09.11 / Comment: 2 / TrackBack: 1 / PageTop↑
十三番目の人格――ISOLA――
カテゴリ: 貴志祐介 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第四十二回。
貴志祐介の『十三番目の人格――ISOLA――』
第三回日本ホラー小説大賞長編賞佳作。

貴志祐介の、デビュー作になるのかな。
多重人格を扱ったサイコホラーってとこだろうか。
貴志祐介自体は、結構好きなのだが、この作品はいかにもなタイトルに腰が引けて読んでいなかった。
が、やはり面白い。

イソラの正体については、まったくわからなかった。
かなり意表をつかれたな~。
あと、真部先生、コイツが完全に元凶だろ。
優柔不断のヘタレがここまで状況を悪化させるとは。

ラストは個人的にかなり衝撃だった。
後味は悪いとはいえ、アレで一件落着と思いきや。
いや~、凄いな。
一片の救いもないのか。

主人公含め、登場人物たちが必ずしも魅力的ではないのだが、それでも面白いのは凄いと思う。
作者の力量かな。



評価:A



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Edit / 2009.02.14 / Comment: 2 / TrackBack: 0 / PageTop↑
プロフィール

gaker

Author:gaker
福井晴敏と本多孝好が好きです。大好きです。
もう家に本を置く場所がありません。

リンクもトラックバックも昔の記事へのコメントも全部大歓迎です。

2008 11/13(木)開設

評価基準
AAA:凄く凄い
AA:凄い
A:とても面白い
B:面白い
C:暇つぶしには
D:ん~、微妙
E:読み進めるのが苦痛
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