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ナイフ
カテゴリ: 重松清 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第三十六回。
重松清の『ナイフ』

久しぶりの更新。
ちょっと修羅場で、忙しかった。
ただその間も移動時間などで本は読んでいたのでレビューが溜まっている。
いや、全部やらなきゃいけない義務はないんだけど(笑)
まあでも面白かったのが多かったので、がんばろうと思う。

さて、また重松清の短編集だ。
五編収録されているのだが、いじめの話が多く、重い。
その重さは読んでいて嫌になってしまうほどだ。
だが、ページをめくる手は止まらない。
もちろん、面白いからだ。

「ワニとハブとひょうたん池で」

 百科事典に書いてあったことは嘘だ、と思った。ワニは偽善で泣きながら獲物を食べるんじゃない。本気で泣いてるんだ。おなかが空いてしょうがなくて、ワニは生肉を食べなくちゃ生きられない動物だから、ごめんねごめんねって涙をぽろぽろ流しながら、獲物を食べてるんだ。


ミキはある日突然、特にこれといった理由もなく、親友も含めたクラス全員から無視されるようになった。
ハブられる、という奴だ。
その描写が、ひたすらきつい。
自分自身にすら必死で虚勢を張りながら、その一方で池に住み着いたワニに食べられてしまいたいと願うミキの姿は強いが、脆い。
でもミキは本当に強い子だよな~。

「ナイフ」

目をそらさない。私には、ナイフがある。


誰もが皆、物語の主役のような輝いた青春時代を送れるわけじゃない。
いじめられたり、そこまではいかなくても華やかなこととは無縁で過ごした人だってたくさんいる。
弱くたって、怖くたって、息子のために立ち向かう姿は、滑稽かもしれないけど、やっぱり格好いい。

「キャッチボール日和」

 今日みたいなキャッチボール日和には、世界中のみんな、優しくなれたらいい。


これが一番きつかった。
酷いよな~、でもこういうの、普通にあるんだよな。

自分の強さを人に押し付けるのは、その強さに自信がないからだろうか。
結局そういうことする人も弱いってことかもしれない。

いじめが綺麗に解決することなんて、まずない。
いじめっ子達が改心して謝るなんてのは嘘っぱちだ。
重松清はフィクションでもそれをよしとはしない。
利己的で、保身を考え、取り返しが付かなくなって初めて少し後悔する。
そんなもんなんだよな。

「エビスくん」

 会いたいなあ、ほんま、ごっつ会いたいわ。


これも途中まではきつい話だったんだけど、最後がよかった。
にしても酷い奴だなエビスくんは(笑)
こういう風に地の文にさらっとうれしい事実が書いてあるのはいいよな~。
すごいいい。

「ビタースィートホーム」

 私の腕は三人をいっぺんに抱けるだろうか。包まれながら、包み返す、そんなふうに抱けるだろうか。


最後は、いじめの話ではない。
元教師の妻と、娘の担任の厳しすぎる教師。
この教師も「キャッチボール日和」の父親と一緒だよな。
自分が正しいと思っていることが伝わらなくて苦しんで。
正しいのは正しいんだけどね。
正しいことがいいことって訳じゃないんだよな。

この家族はいい家族だな~。



本当に読んでいてしんどい本だった。
でも面白いんだな~。



評価:A



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Edit / 2009.02.06 / Comment: 2 / TrackBack: 0 / PageTop↑
カカシの夏休み
カテゴリ: 重松清 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第三十四回。
重松清の『カカシの夏休み』
短編としては長いので、中編集かな。
三篇収録。

「カカシの夏休み」

 わかっている。
 僕たちがほんとうに帰っていく先は、この街の、この暮らしだ。


表題作。
帰りたい場所があるってことはきっといいことだと思う。
たとえもう帰ることができなくても。

重松清の登場人物は皆、本当はいい人だ。
問題があってもそれは、不器用で見栄っ張りでどうしたらいいかわからなくて、そういう人たちばっかりだ。
閉塞した現実の中で、翔太と早希の明るさや、なんだかんだで付き合ってくれる友人達が救いだなあ。

「ライオン先生」

「親や教師はお手本なんかじゃない。ただオトナなんです。努力や我慢がほんとうは報われないことをコドモより知っていて、でも、いつか報われるんだとコドモより信じてて……信じたいですよね、ぼくら……」


主人公の雄介は、教師らしからぬ長髪がトレードマークのいわゆる熱血教師、通称ライオン先生だ。
だが、実はその髪の毛はカツラなのだ。
大学生の娘がいる自分がもう生徒達と一つになれないことも本当はわかっている。
22歳の新米教師だった頃の自分と今の自分がもう違うことも。

若者が変わってしまった、という人たちは、自分達も変わってしまったのだということに気付いていない。
無理に迎合しようとも思わないけど、そのことに気付くことができない中年にはなりたくないな~と思う。
自分も、相手も、変わって、そしてこれからも変わっていく事を理解して向き合えるようになりたいな~。
それができるライオン先生は、偽者のたてがみをはずしても、きっとライオン先生だ。

「未来」

 わたしをひとごろしにした人の名前は、長谷川君という。下の名前は忘れた。最初から知らなかった。


「まーくんは絶対にひとごろしなんかじゃないんだから、お姉ちゃんみたいに病気になっちゃだめなんだから」


前の二作とは大分毛色が違う。
ここで描かれるのは中年オヤジの悲哀ではない。

些細な、本当に些細なことで、同級生の自殺の原因を作ってしまい、その結果心を病んでしまった主人公、みゆき。
ある日、みゆきの弟の同級生が自殺した。
そしてその遺書には弟の名前が書かれていた。

ここまで筋をいえば後の展開は大体想像がつくと思う。
正義を振りかざすマスコミの取材攻勢はいつみても不愉快だな、と思う。
その後、事実が明らかになったら、手のひらを返して知らん顔をするところも。
これがそんなに大げさじゃないってことが怖いよな~。
マスオさん(笑)はまだ良心的なほうだろうな~。

死んだ人の事を悲しそうに語るのもいいけど、笑いながら語ってやったほうが、きっといい。
若いうちの死でも、不慮の事故でも、たとえ自殺でも。
バカだなあいつって笑い飛ばす方が、きっといいとおもう。
人によるだろうけどね。



凄い面白かった。
平均値が凄い高い。
中年オヤジの話しかないのかと思ってたけど、そうじゃないこともわかったし。
好きだけどね、中年オヤジの哀愁は。



評価:AA



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Edit / 2009.01.24 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
ビタミンF
カテゴリ: 重松清 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第三十三回。
重松清の『ビタミンF』

直木賞受賞作の、短編集。
七編が収録されている。
さすがにレベルが高い。

「ゲンコツ」

三十八歳。
「まだ」とも「もう」ともいえる中途半端な年齢。
無理に若く見せようとすれば滑稽に見え、諦めてしまえば一気に老け込む。
そんな年だ。
ガラの悪い不良に腰が引けながら立ち向かう雅夫は格好いい親父だ。
しらけた振りをしてみても、本当は色々あるのだ。
柔らかいゲンコツは武器にはならないけど、きっと大丈夫。

「はずれくじ」

なんでこんな子になっちゃったかな、なんて考えはやっぱり親の勝手だよなあと思う。
子どもは親だけの影響を受けるわけではないけど、それでも一番影響を受けるのはやっぱり親だ。
と、いう風に作者の思い通りにむっとしてしまって悔しい。

「パンドラ」

父親ってのはやっぱり子どもが悩みを打ち明けにくい存在なんだろうか。
安いプライドが、頑固な固定観念がそうさせるのだろうか。
自分の過去は大事に持ちながら、相手の過去を許せない。
そんなところが確かに男にはあるのかもしれない。
そんなエゴには苛立つのだが、不器用に、必死に伝えようとするその姿は微笑ましい。

「セッちゃん」

これは読んでて胸が痛い。
早く気付いてやれよとものすごく思った。
気付いた後も、こんなわかりやすいSOSないだろと。
お母さんをそれは逃げだろと。
ある程度以上の人数が集まれば必ずいじめってのは出てくるからな~。

「なぎさホテルにて」

達也はひっでえな。
そして、対照的に有希枝も久美子もいい女ですわ。
終わり方が心地いい。

「かさぶたまぶた」

いや~、これ、政彦の気持ちわかるな~。
見得はって強がって、必死で作り上げた虚勢を周りが信じ込んでしまうことはある。
優香の潔癖さも、わかってしまう。
幼い分だけ純粋なんだろうな~。

「母帰る」

おじいちゃんすごいな~。
マスオさんはやな感じだ。

「かさぶたまぶた」と「セッちゃん」が好きかな。
父親ってのは孤独なんだな~。
でもこの本の本当の面白さがわかるのは、私がもっと年を取ってからなんだろう。



評価:A




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Edit / 2009.01.22 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
くちぶえ番長
カテゴリ: 重松清 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

「昔、お父さんに言われたんだ。泣きたいときにはくちぶえを吹け、って。そうすれば自然に涙が止まるから、って……」


第十九回。
重松清の『くちぶえ番長』
定年したおっさんの話の次は、小学四年生の話。
やたら漢字にルビが振ってあるな~と思ったら、「小学四年生」連載だった。
だから子供向けなんだけど、いい大人でも十分に楽しめる。

いやあ、甘酸っぱい。
読んでるこっちが恥ずかしくなるくらい。
小学生の恋は本当に微笑ましくていいな~。
バレンタインの話なんか、もうニヤニヤしてしまってやばい。

200ページちょっとと、分量も少なく、子供向けだけあって内容の軽いので、頭を使わずに、懐かしい、甘酸っぱいノスタルジーに浸りたいならお勧め。



評価:A



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Edit / 2008.12.21 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
定年ゴジラ
カテゴリ: 重松清 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

「違う。覚悟をしろと言ってるんだ。自分の陰で誰かが悔やんでるっていうことを絶対に忘れるな。今日はお父さん、賛成も反対も関係ない、それだけ、おまえに言いにきたんだ。」



第十八回。
重松清の連作短編集、『定年ゴジラ』
この人の作品は始めて読むけど、いいなあ。
まあ直木賞とってる人だし。

いやあ、切ないなあ。
仕事一筋に生きてきて、定年を迎えて、何をしたってどこか哀愁が漂ってしまう。
どこからどう見ても情けないおっさんなんだけど、かっこつけて見栄を張る。
ほほえましい、愛すべきおっさん達。
そんなおっさん達の物語。

主人公の山崎さんはかっこいいおっさんだ。
八割以上は、情けなく、みっともなく、それでいてプライドは高く内弁慶だ。
でもそんな山崎さんはそれぞれの短編の最後に、突然化ける。
あんなかっこいい台詞が、今までの情けないおっさんのどこから出てくるのだろう。
別に洒落てるわけでもなく、上手いこと言ってるわけでもない。
だが、とても真摯だ。
その真摯さは、自他共に認める真面目さから来ているものだ。
きっとそれは山崎さんの長所であり、しかし短所でもあるのだろう。
だが、みんな、奥さんも、娘達も、作者も、そして私も、そんな不器用な山崎さんが大好きなのだ。

脇を固める人物達も魅力的だ。
まず奥さん。
かっこいいなあ。
凄い頼りになる人。
個人的に好きなのは宮田助教授。
たいてい、この手の人は悪役として描かれることが多い。
だが、中々どうして魅力的な人だ。
厳しいけど筋の通った立派な大人。
こういう人をきちんと書くためには、自分もそうじゃないと無理なんじゃないかなと思う。

読んでいて、少し気になったことがある。
この作品は、話は繋がってるが、八つの短編で構成されているわけだ。
一冊を通して重要な部分として山崎さんの次女の万理が抱える問題がある。
一つ一つの短編で解決とはいかないものの、前進はしているはずなのだ。
だが話が終わるたびに何と言うか、リセットされているような。
いや、リセットは言い過ぎにしろ、あのやり取りの後にまだそんな感じなのか、と思ってしまう。
ただ、考えようによってはこれはリアルなのかもしれない。
人間はそう簡単には変わらない。
いい話を聞いて、感動した気になっても、時間がたてば元通りと言うのは良くあることだ。
果たして作者がそこまで考えていたのかはわからないが。



評価:A+



なぜかイタリック体にできない。
なんでだろう?


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Edit / 2008.12.20 / Comment: 1 / TrackBack: 0 / PageTop↑
プロフィール

gaker

Author:gaker
福井晴敏と本多孝好が好きです。大好きです。
もう家に本を置く場所がありません。

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2008 11/13(木)開設

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