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小説・震災後
カテゴリ: 福井晴敏 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

人間はいつだって"結果"を生きているのではなく、"過程"を生きているのだから


第百五十三回
福井晴敏の『小説・震災後』

2011年3月11日、日本を震撼させた未曾有の大地震、東日本大震災。
それを境に多くの人の人生が変わったように、平凡なサラリーマンであった野田圭介の人生もまた、変わった。
傷ついた心、原発事故、震災後の日本人の姿、そして未来。
祖父・父・息子の三代を通してそれらを描き出す。

まず野田と言う名字に引っかかる。
私は確かにこの名前を知っている。
福井晴敏ファンなら思い当たる人物がいるであろう。
無論、今の首相ではない。
さらに、もう一人嬉しい人物が出てくる。
成る程、やはり福井晴敏は一貫して一つの繋がった世界を描いてるのだな。
ファンからしたらこういうのはやっぱり嬉しい。
しかしふと思ったのだが、『Op.ローズダスト』の事件はどうなっているのか。
確かお台場が凄いことになったはずだが、作中では特に触れられていない。
ローズダストの年代設定はいつだったか。

他の福井作品を読んでおくと野田の父親の台詞の持つ重みが違ってくる。
ああ、あの事を言っているのだな、とか、台詞の裏に隠された意味がわかって、また以前の作品を読み返したくなる。

「脱原発」という言葉に、どこか違和感というか、無責任さのようなものを感じていた。
だって原発を全部止めたら、電力が足りないのだろう?
ただでさえ不況なのに企業の活動を制限してまで節電してしまっては不景気に拍車がかかるではないか。
代替として語られる、クリーンなエネルギーとやらはまだ実用の段階には達していない。
今作を読んで、これらのもやもやした気持ちに少し整理がついた。
そうだ、「脱原発」という言葉は、「反戦」という言葉によく似ている。
どこか上滑りする綺麗事。
そう、「あの戦争」が残したのが、戦争は悲惨だという馬鹿でも分かる教訓だけではないはずであるように、原発事故から我々が学ぶべきは、原発は危険だという馬鹿でも分かる事実だけではないはずだ。

節電、エコ、脱原発。念仏みたいに唱えてりゃ、それで未来への責任を果たせるなんてことは金輪際ありません。

しかし、野田の父親は「脱原発」と「反戦」を同じ棚においてはならないと言う。
「脱原発」はいずれ為されなければならないことだ。
ただそれは今すぐではなく、「未来」の話だ。

相変わらず根底を流れるテーマはぶれない。
そして人物に血を通わせるのがやはり上手い。
PTA会長の描き方が良いと思う。
この手の人物は、ただのヒステリックなおばさんとして描かれることが多い。
今作でも途中までそうだったのだが、いやあ、福井晴敏はきちんと一人の人間として描くのだな。

許されないのは、不可能な綺麗事を可能だと信じる人間ではなく、不可能だと薄々気付いていながら綺麗事だけを唱える人間だ。

色々と心を揺さぶられる作品だ。
福井作品のテーマが収斂されていると言って良いだろう。
大量破壊兵器も特殊工作員も出てこない。
それでも、これは紛れもなく福井晴敏の作品だと言える。
是非、多くの人に読んでいただきたい。
この国で生きている人間全員が、無関係ではありえないのだから。
あ、でもその前に既存の作品を読んだ方が物語の深みが増すので、そうする事をお勧めする。
いやもちろん単体で完成された作品ではあるのだが。


評価:AA+


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(2012/03/06)
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Edit / 2012.03.19 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
機動戦士ガンダムUC 10 虹の彼方に(下)
カテゴリ: 福井晴敏 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

「人の一生は短い。それひとつでは意味をなさない一瞬の“光”だ。だから人を愛せ。絶望する間に、今できる最善のことを見つけろ。そうして連なり、響きあった時に“光”は初めて意味をなす」

「灯して、繋げろ。可能性の“光”を」


第八十三回。
福井晴敏の『機動戦士ガンダムUC 10 虹の彼方に(下)』

とうとう最終巻である。
バナージ達の長かった戦いも終わりだ。
そう思うと感慨深いものがある。
ネタバレ全開で行くのでそのおつもりで読んでいただきたい。

バナージ達はとうとうラプラスプログラムの示す最終座標。
ラプラスの箱のありか、インダストリアル7のメガラニカにたどり着いた。
ユニコーンで中を進むとビスト財団宗主の氷室への道が姿を現した。
その道の先で、ビスト財団宗主サイアム・ビストと対面し、ラプラスの箱の真実を知る。
それは、現在の宇宙世紀憲章には存在しない第七章第十五条。
その中でもとりわけ、

二、将来、宇宙に適応した新人類の発生が認められた場合、その者たちを優先的に政府運営に参画させることとする。

という一文である。
これこそがビスト家を百年もの間縛ってきた呪いである。
そして祈りでもある。

蓋を開ければ拍子抜けといってもいい。
バナージが言うように、“たったそれだけのこと”なのである。
この辺り、というかラプラスの箱の存在そのものが『Twelve Y.O.』のBB文書を思い起こさせられる。
だが、ラプラスの箱はBB文書と違い、たったそれだけでありながら同時に戦争の引き金へともなりかねない大きな力を持つ一文でもある。
宇宙に適応した新人類というのは誰でもニュータイプのことだと考えるだろう。
だが宇宙世紀憲章ができたのはニュータイプと呼ばれる存在が生まれる79年前に作られたものだ。
だが、参政権を持たないスペースノイドとスペースノイドを政府運営に参加させたくない連邦政府という現在の状況では、新たな戦争の火種となりかねない。
本来、この条文は1000年、2000年先の未来へ向けての祈りだった。
だが、ジオン・ズム・ダイクンがニュータイプ論を唱え、実際にニュータイプと呼ばれる人々が現れたのは、百年もたたぬうちだった。その時からこの条文は祈りでありながら呪いと化したのだ。

「でも、ひとりの人間としてなら。あなたがいて、父がいて、自分がいる。世代を重ねて、少しでも前進してきた人間のひとりとしてなら……答えられます

バナージはラプラスの箱を開けることを決意した。
サイアムは全世界へ向けて通信をジャックして放送する準備を整えていた。
しかし、ここでマリーダがとどめを刺しきれなかったフル・フロンタルがメガラニカに侵入していることが分かる。ミネバが全世界に向けてラプラスの箱の真実を伝え終わるまで守らなければならない。
フロンタルの正体も明らかになる。
赤い彗星――シャアの再来として、器としてシャアに似せて作りだされた強化人間。
それこそがフル・フロンタルの正体であった。

フロンタルと激しい白兵戦を繰り広げるバナージ。
しかしバナージがフロンタルを見失った隙に、ボロボロのシナンジュに乗り込むフロンタル。
ボロボロとは言え人間とMSでは話にならない。
そこに助けに入ったのはガエルだった。
バズーカでシナンジュを牽制するも、ビームライフルの一撃で消滅してしまう。
激昂してユニコーンを“呼ぶ”バナージ。
ユニコーンはバナージに答えて、バナージの元へ現れる。
この辺はバナージが相当強力なニュータイプであることを描いている。
しかしボロボロのシナンジュを仕留められないバナージは次第にマシーンに呑まれていく。
いや、それでフロンタルを倒せるならよしと考える。
だが、

――それは違う、と教えたろう? バナージ。

とマリーダやダグザ、ギルボアやカーディアスの思惟がバナージに語りかける。
そこにリディのバンシィとトライスターの面々が助けにくる。
不覚にも挿絵のWラストシューティングは格好いいと思ってしまった。
いや全然ラストじゃないけど。
そしてユニコーンのビームサーベルでシナンジュは千々に引き裂かれる。

これで大団円と行きたいところだがまだコロニーレーザーがある。
これに対しバナージは何とありったけのユニコーンのパーツを周辺宙域にばらまきサイコ・フィールドのバリアーを張ると言う。
さらにこれにアルベルトが持ってきていたサイコフレームも足し、バンシィも協力してバリアーを張る体制を整える。
そんな危険なまねはやめろ、皆生きていればそれでいいというミコットに対しバナージは、

(おれは、父さんのことを何も知らなかった。ずっと一緒にいたのに、母さんのこともわかっていなかった。なんにも知らないで、ずっと自分がずれているような気がしていた。でも、わかったんだ。父さんも母さんも、よかれと思っておれを生み育ててくれたんだってことが)

(それがわかって、とても安心した。いまの自分を受け入れて、未来って言葉の意味も考えられるようになった。多分、それと同じことなんだよ。百年前、宇宙世紀を始めた人たちは、増えすぎた人間をただ宇宙に棄てたんじゃない。できる限りの祈りを込めて送り出したんだって、知ることができれば……)



ミネバもメガラニカに残る決断をした。
もちろんジンネマンらは反対するが決意は揺るがない。

(自信があるのでしょう? やってみせなさい。そして必ず帰ってきて。約束を違えることは許しません)

熱いセリフだ。

一方コロニーレーザー側ではアルベルトが標準内にいることを知りマーサが動揺する。
しかし、マーサはレーザーを打つように言った。
ここでもまた身内が身内を殺す決断をする。
ビスト家の呪いか。
しかしリディが現場にいることがローナンに伝わった時にはもう手遅れだった。
ついにコロニーレーザーは発射される。
射線上にあるものを消し去りながらメガラニカに向かう不可視の光。
それを受け止めた時バナージは逆行する時間を見た。
バナージの“我”が“全体”に再構成されていく。
バナージは未来をも見る。
サイアムが言った通り変わらず戦争と再生を続ける人類の未来を。
そしてバナージは世界を見た。

結論からいえば、バナージはコロニーレーザーを止めることに成功した。
そしてバナージはフロンタルが予言したとおり、究極の感応の末、ユニコーンと一つとなり、同時に“全体”となり虹の彼方へ行ってしまった。
ミネバの放送が響く中、リディの呼び掛けに応じないバナージ。
すでに肉体を必要としない次元に到達してしまったのだ。

「……冗談じゃない。認めない。こんなのが人の進化の終着点だなんて、おれは認めないぞ」

バンシィまで感応しユニコーンに追随し始める。
しかしリディは自らの思惟でそれを止め、ユニコーンを追いかける。
リディ、熱いな~。

アンジェロが生きていたのは意外だった。そしてそこに流れ着くフル・フロンタルの死体を載せたコックピット。
少しできすぎだが、いいだろう。

バナージは、人々が響きあい引き寄せる未だ来ぬ時間を見て、それに加われない自分にずれを感じた。
そしてカーディアスやマリーダの思惟が語る。

“それでも”と言い続けろ、と。為すべきではなく為すべきと思ったことを為せ、と。

そこで初めて振り返ったバナージは肉の体に戻ることを決める。
そして行くべき場所はもちろん……。


いや~、面白かった。
最終巻の密度の濃さ、熱さはすごい。
読みふけって電車で降りそびれてしまった。
ただ一つだけ残された疑問がある。
La+の意味は?
何かの略称じゃなかったのか?
意味なんてなかったのか?

福井晴敏はいわゆる大衆に絶望しているのかもしれない。
多分そうだろう。
大衆の愚かさは複数の作品で語られている。
だがそれでも人の持つ善意を信じているのだろう。
だから福井作品は重いかもしれないが暗くはない。

アニメ版も見たいのだがツタヤでずっと借りられている。

そう言えばユニコーン関連で検索してくる人結構多いけどコメントがないな~。
皆さん恥ずかしがらなくてもいいんですよ~(笑)

評価:AAA
作品全体としてみたらAA+かな。
ちょっと遊びすぎです。


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Edit / 2010.10.12 / Comment: 14 / TrackBack: 1 / PageTop↑
機動戦士ガンダムUC 9 虹の彼方に(上)
カテゴリ: 福井晴敏 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

「……約束しなさい。必ず戻る、私を独りにしないって」


第八十二回。
福井晴敏の『機動戦士ガンダムUC 9 虹の彼方に(上)』

さあ、いよいよクライマックスだ。
ラプラスの箱の最終座標も発覚し、全勢力がそこを目指す。
当然激しい戦いが繰り広げられる。
しかしネェル・アーガマの戦力は少なく、数にして12倍のMSを相手にしなければならない。
さらに、マーサとローナンは、リディの駆るバンシィがユニコーンの破壊に失敗した場合、コロニーレーザーでラプラスの箱を破壊する計画を立てていた。

バナージとミネバが甘酸っぱい。
前巻ではぎりぎりで失敗に終わったキスも今回は成功する。
青春である。

そしてマリーダが可愛い。
好きな食べ物を聞かれて、

「アイスクリーム……かな」

このギャップ。
だが、この戦いが終わったらおいしいアイスクリーム屋にみんなで行く約束はいけない。
そのパターンはやばいパターンだ。
後が不安になる。

いよいよ最終決戦が始まる。
武器という武器を全身に装着したフルアーマーユニコーンの八面六臂の戦いぶりはめちゃくちゃスカッとする。
そしてNT-Dの稼働限界を迎えたユニコーンのピンチに駆けつけるトライスター。
熱い展開が続く。

そして、雑魚との戦闘は終わり、敵のエース級がやってくる。
まずはアンジェロの駆るローゼン・ズールだ。
しかもアンジェロはサイコ・ジャマーという切り札を用意していた。
強制的にNT-Dを解除され、まともに戦えないバナージ。

その頃ネェル・アーガマもピンチを迎えていた。
そしてそのピンチを救ったのはジンネマンだった。
バナージのピンチもバナージならば切り抜けると断じるジンネマン。
……この展開も『終戦のローレライ』で見たな。
いやもう何も言うまい、熱い展開であることには間違いないのだ。
面白いか面白くないかで言えば間違いなく面白い。

一方バナージはサイコ・フィールドを発生させ、サイコ・ジャマーを無効化する。
そしてローゼン・ズールを圧倒し、マリーダにそうしたように、バナージはアンジェロを識った。
しかし過酷な過去をバナージに知られたアンジェロは自害することを選んだ。
人の心に分け入ることが必ずしもいいとは限らないということか。
そして、そのことでバナージを責めるフロンタル。

(君が壊した)

(不遜な力だ。資格もなく、他人の心に押し入るのは)

そして、シナンジュと戦闘を開始するバナージ。
互角の戦いを繰り広げるバナージはフロンタルをも識ろうとする。
しかし、フロンタルの中には何もなかった。
完全な虚無。
自らを器と化した故の無。
その虚無に呑み込まれかけたバナージを救ったのはマリーダだった。
そして、シナンジュの相手を引き受けバナージを先へと進ませる。
このシナンジュ対クシャトリヤが最高に熱い。
ファンネルを使い果たしたクシャトリヤは、自らの四枚羽根を切り落としファンネルとして使用し、シナンジュを撃破する。
いや、完全に撃破した描写はなかった。
ここでフロンタルが死ぬとも思えないし、ボロボロになりながらもおそらく生存しているのだろう。
最後にそれっぽい描写もあったし。

一方インダストリアル7に向かうバナージを阻んだのは、リディの駆るバンシィだった。
しかし、バナージの駆るユニコーンに翻弄される。
バナージの説得にも耳を貸さず、本音を言い当てられて逆上する。
しかし、大量のサイコフレームとともにアルベルトが到着するとサイコフィールドが発生し、バンシィもNT-Dを発動させる。
ミネバの説得も逆効果となりリディはマシーンに呑まれていく。
激しく切り結ぶユニコーンとバンシィ。
そして、ネェル・アーガマから届くリディへの思惟がリディをいらだたせる。
完全にマシーンに呑まれたリディはビームマグナムをネェル・アーガマのブリッジに向け撃った。
それを体で止めたのは、マリーダの駆るクシャトリヤだった。
爆散するクシャトリヤ。
アイスクリームの時に感じた不安は当たってしまった。
怒りにまかせてバンシィに銃口を向けたバナージを止めたのは、マリーダの思惟だった。

――彼も苦しんでる。おまえもわかっているはずだ。

「ひどすぎるよ、こんなの。なにもいいことなかったじゃないか、あなたは。戦って、傷ついて、メチャメチャじゃないか……! やっと……やっと、自分の人生を生きられたかもしれないのに……」

――この虹の彼方に、道は続いている。

マリーダ……。本当にこれからだったのに。
その後マリーダの思惟は、彼女にかかわった人々のところを飛び回り、最後の言葉を残していく。
リディのところにも、だ。
これでもうリディは敵ではなくなった。
やはり最後の敵はフロンタルか。
トライスターのナイジェルがインダストリアル7の方向へ流れていく赤いMSの残骸を目視しているし。

ここで9巻は終わりだ。
次巻はいよいよ最終巻。
長かった物語もいよいよ完結だ。
ラプラスの箱の中身がとうとう明かされる。


評価:AA+


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Edit / 2010.10.09 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
機動戦士ガンダムUC 8 宇宙と惑星と
カテゴリ: 福井晴敏 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

「私も、信じたい」


第八十一回
福井晴敏の「機動戦士ガンダムUC 8 宇宙と惑星と」

いよいよ物語も終盤に差し掛かってきた。
展開も早くなってくる。

ネェル・アーガマに乗り移ったジンネマンらガランシェール隊の面々。
連邦、ネオジオンの壁を取り払い協力してラプラスの箱を目指す。

一方、リディに助けられて命を取り留めていたアルベルトだが、何とリディをバンシィのパイロットとしていた。
ニュータイプや強化人間でなくても乗れるものなのか。
だがリディもニュータイプであることを匂わす描写もあった気がする。
しかしこれで、ビスト家バナージとマーセナス家のリディの対決が避けられないものになったと言っていいだろう。
リディは完全にバナージの敵になったのだ。

そしてバナージとミネバは、ラプラスプログラムが示した次の場所、<L1ジャンクション>へと向かう。
そこで、最後の座標。
ラプラスの箱のありかが示された瞬間、ユニコーンを襲ったのは、袖付きでも連邦でもなく、ジオン共和国のMS部隊だった。
ミネバが同乗しているためユニコーンの全力を引き出せないバナージは苦戦する。
この混乱に乗じてジンネマンらガランシェール隊がネェル・アーガマを制圧する。
一度は連邦とネオジオンが強調できるかもしれないという可能性が示されただけにこの裏切りはバナージに大きなダメージを与えた。
そしてそこにフル・フロンタルら袖付きが現れる。
こうなってはもう抵抗の手段もなく、バナージは投降する。
ネェル・アーガマの乗員全員を人質に取られ、それでも座標を吐かないバナージに、フロンタルは吐かなければ躊躇なく人質全員を殺すと宣言する。
もちろんそれは単なる脅しではなく、どうしようもなくなった時、ミネバが口を開く。
箱の最終座標はフロンタルが箱をどう使うかを聞くことと引き換えに渡すという。
そこから始まる、サイド共栄圏の設立というフロンタルの演説は『終戦のローレライ』の浅倉大佐の演説を彷彿とさせ……、ちょっとまった。
いくらなんでもローレライを彷彿とさせすぎだ。
連邦をアメリカ、ジオン共和国を日本に置き換えればそのままローレライだ。
しかも三巻連続で彷彿とさせられている。
意図的なのか、引き出しが少ない故なのか。
わからないが、やっぱりやりすぎ感が漂う。

そして結局フル・フロンタルはシャアだったのか。
明言はされていないが、ミネバのセリフなんかはまさにその事実を指している。

「私の知っているシャア・アズナブルは、本当に死んだな」



もはや八方塞の状況だったがミネバの機転、ガエルとエコーズの活躍で反撃のチャンスを得る。
ユニコーンへと戻ったバナージだが、すでにシナンジュに乗り込んだフロンタルに動きを封じられる。
箱を「みんな」のために使うというバナージに対し、一人の人間がすべての意思の代弁者にはなれないというフロンタル。
そして、バナージの言う「みんな」の中にはバナージはもう戻れないという。
それはバナージが心の奥底で恐れていた言葉だった。
そして共に来いという、フロンタルの魔性に引き寄せられた時――

――バナージ。“それでも”と言い続けろ。


そこに現れたのはマリーダの駆るクシャトリヤだった。
この展開は熱い。
シナンジュやローゼン・ズールのコックピットに狙いを定め動きを封じるマリーダ。
そして同乗するミネバの説得によりネェル・アーガマを離れていく共和国軍の兵士たち。
状況は一気にひっくり返ったかと思われた。
ジンネマンがマリーダにファンネルのコントロールを解くように命令するまでは。
強化人間であるマリーダはマスターのジンネマンの命令に逆らえない。
しかしマリーダは――

(……お父さん)
 ぽつりと呟かれた声が無線ごしに耳朶を打ち、ジンネマンはマリィの顔に当てた指を痙攣させた。
(わがままを、許してくれますか……?)

「……赦す」
 まだ自分にその資格があるのなら。写真を握りしめ、片膝をつく<<クシャトリヤ>>に滲んだ目を向けたジンネマンは、口元に近付けた無線に残りの言葉を吹き込んだ。
「心に、従え。それが、おれからの最後の命令だ」


このマリーダとジンネマンのやり取りがたまらない。

そしてマリーダはビームサーベルの一線で、ミネバをとらえたローゼン・ズールの腕を切り飛ばす。
さらにシナンジュに弾幕を張りユニコーンを援護する。
ミネバの保護に成功したバナージに対しフロンタルは、決着は箱の前でと言い残し、去る。

最後に、邪魔をする共和国軍の戦艦二隻をネェル・アーガマのハイパーメガ粒子砲で蹴散らし、最後の座標、インダストリアル7に向かう。

一方バンシィもユニコーンを仕留めることだけを考えインダストリアル7へと向かう。
八巻はここで幕となる。
今回は白兵戦の描写が多かった。
これも迫力のある描かれ方がされていて読んでいて素直に面白い。

さていよいよ物語もクライマックス、残り二巻だ。
一気に読んでしまおうと思う。


評価:AA+


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Edit / 2010.10.07 / Comment: 0 / TrackBack: 1 / PageTop↑
機動戦士ガンダムUC 7 黒いユニコーン
カテゴリ: 福井晴敏 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

「違う! 現実を現実と認めるだけの存在なら、人間はとっくの昔に滅びてた。理不尽と戦って、少しでも前に進んできたのが人間でしょう!? あなたは自分の絶望を押しつけてるだけだ!」


第八十回
福井晴敏の「機動戦士ガンダムUC 7 黒いユニコーン」

前巻でバンシィに敗れ、マーサ陣営に捕獲されたバナージとユニコーン。
さらにマーサは、ミネバをもその掌中に収めた。
しかし、バナージは、ラプラスプログラムが示した次の座標を黙秘し続ける。
また、ミネバとマーサの女の戦いも見ものである。意外にもミネバが優勢だった。

あなたは、あなたが言うような女ではない。もちろん男でもない。女の残酷さを、男の言葉遣いで押し通しているだけ。中途半端さを武器にしている狡い人――


一方ジンネマンは、バナージとユニコーンを奪還するために、ジオンの残党と手を組みトリントン基地を襲撃する。
スナイパーの司令が渋くていい味を出している。
有志に呼び掛ける言葉なんかは、『終戦のローレライ』の絹見艦長を彷彿とさせる。

ジンネマンの助けを得て脱出したバナージはユニコーンに乗り、リディの駆るデルタプラスと戦うこととなる。
これもビスト家とマーセナス家の因縁か。
一度は背中を預けて戦った二人だが、激しく切り結ぶこととなる。
決着はつかなかったが、二人は完全に決裂してしまう。
その後バナージはミネバとマリーダを助けるために空へ向かう。
そしてマリーダの駆るバンシィと対峙する。
この対決が熱い熱い。
サイコフレームの共振とかサイコフィールドとか。

ジンネマンに助けられたミネバはリディと共に行くことを拒み、バナージを信じて、ガルダから空へ身を投げる。
ミネバの意思を感じたバナージは空中でミネバを救出する。
ここで一巻の、ミネバとバナージが手を伸ばしあうシーンと被せてくるのは上手い、そして熱い。

そしてマリーダもジンネマンが救出することに成功する。
ジンネマン八面六臂の大活躍である。

その後、ユニコーンを背に乗せたまま宇宙へあがるガランシェール。
その行く先にはブライトが手をまわしたネェル・アーガマが待っていた。
大気圏上で、接触するためにフックを打ち出したネェル・アーガマだが、あと少しの所で届かない。
そこでガランシェールとフックをつないだのはユニコーンだった。
本来戦艦をMS一機で支えられるはずはないのだが、サイコフレームから虹色の燐光を発したユニコーンが支え切り、フックとガランシェールをつなげる。

「<<ユニコーンガンダム>>は、伊達じゃない……!」


またちょっと遊びすぎ感があるが、まあ名シーンだ。

一気に展開が速くなってきた7巻。
このまま一気にラストまで突っ走るのだろう。
残り3巻楽しみである。


評価:AA+


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Edit / 2010.10.05 / Comment: 0 / TrackBack: 1 / PageTop↑
プロフィール

gaker

Author:gaker
福井晴敏と本多孝好が好きです。大好きです。
もう家に本を置く場所がありません。

リンクもトラックバックも昔の記事へのコメントも全部大歓迎です。

2008 11/13(木)開設

評価基準
AAA:凄く凄い
AA:凄い
A:とても面白い
B:面白い
C:暇つぶしには
D:ん~、微妙
E:読み進めるのが苦痛
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