惑星のさみだれ 4〜7
カテゴリ: 水上悟志 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

「すきだ」

「しってる」



漫画感想第三回。
水上悟志の『惑星のさみだれ』

さあ、今回もネタばれ全開でお送りしようと思う。
反転も特にしない方向でいく。

物語も中盤で、盛り上がりが尋常じゃない。
敵である泥人形は非常に強力で、戦う獣の騎士たちが生身の人間である以上、被弾は死を意味する。
達人であった半月も、カジキマグロの師匠もあっさりと死ぬ。
ドラゴンボールのように死者が生き返ることもない。
だからこそ、手に汗を握る。
いや、ハッピーエンドは好きだけどね。
命がけの戦いで主人公側はだれも死なないってのも、ねえ?

さて、物語はいろいろと核心に迫っていく。
悪の魔法使い、アニムスの目的も明らかになる(それが真実かは分からないが)。
それは、アカシックレコードの掌握。
ん〜、いいね、アカシックレコード。
何か好き。
いやまあ、反則的な存在ではあるのだけど。

ほかには、さみだれと母親との距離が縮まったり。
夕日が方天戟を使ったり。
精霊アニマ(かわいい)が登場したり。
カジキマグロの騎士、秋谷稲近、通称師匠のことも明らかになったり。
幻獣の三騎士も出てきたり。
白道さんが告ったり。
それぞれの人物像も掘り下げられてきたり。
色々あった。
のだが、やっぱり、六巻のタローとハナコのエピソードの衝撃がやばい。

九番目の泥人形、ボエドロミオンは強力な泥人形だった。
さみだれも本調子ではないため、ジリ貧となった戦況を打開するためハナコがおとりとなって敵の気を引くことを提案する。
タローはハナコを守るため、ビビりながらも自分がおとりとなる。
しかし、ボエドロミオンが狙いに定めたのは、タローではなくハナコだった。
タローは身を呈してハナコを守ろうとするのだが……。

20091106224133.jpg

人間の体程度では泥人形の攻撃を防ぐことはできず、ハナコもろとも串刺しになってしまう。

タローの願いは「ハナコが致命傷を負ったときにそれを治すこと」
タローがかばわなくとも、ハナコは一度だけ死をまぬがれることができる。
もちろんタローにもそのことは分かっていた。
それでも、だ。
それでもタローは、惚れた女を守るため、飛び出さざるを得なかったのだ。
確かにそう、キルの言うとおり、無駄死にだ。
だが、ランスの言うとおり、日下部太郎は本物の勇者だった。

タローの死に際の攻撃でボエドロミオンは逃走した。
そして、再び現れたボエドロミオンを白道さんが幻獣の三騎士となりパワーアップした獣の騎士団(全員喪服ってのがまた…)が追いつめる。
そして、手負いの泥人形にとどめを刺したのは――、

20091106225422.jpg

カマキリの騎士、宙野ハナコの掌握領域「勇者の剣<クサカベ>」だった。
タローの名前とか、何だよもう、卑怯なくらい熱すぎる。

20091106230156.jpg

感情が希薄なハナコが、怒りと悲しみをむき出しにして大声で泣きわめきながら、タローの仇を打つのだ。
あまり目立たないが、キルのセリフも…。
ランスと仲悪かったのに…。

いや本当に、心を震わされてしまった。


こういうド直球の熱さが、『惑星のさみだれ』の魅力なのだが、もちろんそれだけじゃない。
結構多くのキャラクターが出てきているのに、しっかり全員書き分けて、キャラが立っていることもすごい。
また、伏線の回収もすごい。
回収のタイミングがいい。

魔法使いを退けた後、夕日はどういう決断を下すのか。
半月の遺志と技を継ぎ、子供たちのために笑顔を見せることができるほど人間として成長した夕日は、さみだれを止めるのか、さみだれに従うのか、それとも?
ただ、そう、さみだれだって「子供」なんだよな。
この辺りがキーなんじゃないかと思う。

盛り上がりまくりでやばい。
こんな面白い作品があまり知られてないのはもったいないな〜。
この辺まで来ると画力も安定してきてる。
そういえばもうすぐ八巻も出るっぽい。
ひょっとしたら十巻で完結だったりするのかな?
あと、白道さん可愛い。



評価:AAA
最高評価だよ、ちくしょう!!



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Edit / 2009.11.06 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
惑星のさみだれ 1〜3
カテゴリ: 水上悟志 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

ヒーロー、参ッ上ォ!!



漫画感想第二回。
水上悟志の『惑星のさみだれ』
ちなみに1巻から7巻まで大人買いして一気読み。

主人公、雨宮夕日は平凡な(そうでもないが)大学生だったが、ある日突然現れた喋るトカゲのロイに、地球の危機を告げられる。
が、別に世界を救いたくはない夕日なので、ロイは迷惑な闖入者でしかなかった。
そんな夕日が、敵である「魔法使い」の「泥人形」に襲われた時、彼を助けたのはお隣の女子高生、朝日奈さみだれだった。
まあ、ありがちな入り方だろう。
ジャンルとしてはファンタジーか、SF化。
余談だが、1巻の裏表紙には新感覚ご近所ストーリーとある(ご近所!?)。

だがここからは、ちょっとありがちではない。
彼女こそが、トカゲの騎士である夕日の守るべき姫だったのだが、さみだれの目的は、地球を滅ぼすもの「ビスケットハンマー」から地球を守ることではなく、地球を守った上で、自らの手で地球を破壊することだったのだ。
さみだれは、ヒロインにして、魔王なのだ。

さらに、職業正義のヒーローの犬の騎士、東雲半月が登場して、1巻は幕となる。
ここまでは、まあネタばれとは言えないだろう。
正直なところ、1巻は絵の粗さも目立つし、展開に違和感もある。
ただ、この作品は2巻以降、大化けする。
というわけで、以降はネタばれ満載でお送りする。


2巻は半月のための巻だ。
闘いぶりから、その存在感、そして退場まで。
いや、半月は男の中の男やで。
正義のヒーローにあこがれながら、自分がそうではないという自覚があり、それでもそうありたいと願う。
そして彼の大人論が素晴らしい。

大人が笑うのはな、大人は楽しいぜって子供にうらやましがられるため、人生は希望に満ちてるって教えるためさ


また、さみだれが地球を壊したい理由も発覚する。
それはそう、無理心中なのだ。
ただ、それでもさみだれは諦めきれていないのだろう。
あまりに明るい少女すぎる

半月の弟、カラスの騎士、東雲三日月が登場したところで、2巻は幕。
こいつがまたいいキャラだ。
ここまで2巻。

10対1で戦って、1人残らず全員倒せ


仲間の騎士も増えてくる。
馬の騎士、南雲宗一郎。ヘビの騎士、白道八宵。亀の騎士、月代雪待。鶏の騎士、星川昴。ネズミの騎士、日下部太郎。カマキリの騎士、宙野花子。フクロウの騎士、茜太陽。黒猫の騎士、風巻豹。そして、すでに故人だが、カジキマグロ(!)の騎士、師匠。
増えてくるというか、これで全部か。
そして、ああ、この巻も、半月の巻だ!!
半月の最後の願いが何だったのかが明かされる。
それは、「天才武道家東雲半月の技を雨宮夕日に渡す」こと。
くそう! いい男すぎる。
ヒーローだよ! あんたヒーローだよ!!

他には、ラスボスの魔法使い、アニムスも登場し、大きくストーリーが動き出す。
あと、白道さん可愛い。

ここまで3巻。


あまり有名な作品ではないと思う(多分)。
出会いはブックオフ。
なんとなくタイトルが気になって(惑星と書いて「ほし」と読ますなんて、ありがち過ぎて逆に少ないよね!)立ち読みした。
ここで一目ぼれ、というわけではない。
まあそこそこかな、というのが感想だった。
でも、気まぐれに大人買いしてやった。
社会人はこんな無駄遣いもできるのだ!!(無駄じゃなかったけど)

いやー、面白い。
何というか、そう、王道なのだ。
熱い、というのが一番適切か。

とりあえず3巻までの感想。
続きはまた今度。



評価:AA



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Edit / 2009.11.03 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
イン・ザ・プール
カテゴリ: 奥田英朗 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

第六十四回。
奥田英朗の『イン・ザ・プール』

近況報告だけしてまた失踪するのもアレなので、リハビリがてら書きます。
ちゃんと感想を書くのは本当に久しぶり。

精神科医、伊良部シリーズの第一作になるのだろうか。
読もう読もうとは思いつつ、読んでいなかった作品の一つだ。
伊良部という名前と、精神科医という肩書から、理系の変わり者なインテリをなんとはなしに想像していた。
森博嗣のS&Mシリーズの犀川創平や、東野圭吾のガリレオシリーズの湯川学のような、だ。
しかし、伊良部総合病院の地下にある、神経科で患者を待ち構えているのは、甲高い声の色白で太った、注射フェチのマザコン男である。
予想通りだったのは変わり者という一点だけだった。

さて内容だが、奥田英朗ということで、やはり安心して読める。
一癖も二癖もある患者たちが、さらに癖のある伊良部のもとを訪ねる形式の連作短編となっている。
プール依存症、陰茎強直症、自意識過剰の妄想壁、携帯依存症に、強迫神経症とかなりの粒ぞろい(笑)。
ちなみに看護婦は露出狂だ。

伊良部の施す治療もとても治療とは思えないモノばかりだ。
その割には患者たちはちゃんと症状が改善されているのだが。
ただ、続けて読んでいけばこれが、ちゃんと「治療」であることがわかってくる。
伊良部は患者と同じ症状になることで、患者に自覚を持たせるという感じか。
意図的にやってるのか若干怪しいが、まあ、たぶん、ちゃんと考えているのであろう。
さすがに陰茎強直症までは同じ症状になるというわけじゃなかったが(笑)

さて、登場する患者たちだが、そのほとんどの症状に心当たりがあるというかなんというか。
いや、別に私が鬱気味だというアピールをしたいわけではない。
何かに入れ込みすぎてしまったり、人に怒ることができなかったり、なんとなく視線を感じたり、仲間外れが怖かったり、心配しだすと止まらなくなったり、なんだか他人事の気がしないのは私だけではないと思う。
正気と狂気のライン、正常と異常の境なんてのは案外我々のすぐそばにあるということだろう。




評価:A



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Edit / 2009.10.27 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
お久しぶりです
カテゴリ: 雑記

ずいぶんと久しぶりの更新になってしまった。
いや、本当にお久しぶりです。

別に飽きたわけでもなく、ただ単純に時間がない。
それほど仕事が忙しいというわけでもないんだけどな〜。

本は読んでいる。
通勤時間を活用している。
座れないので、立ちっぱなしで読むのも慣れてきた。

そう、読んでいるのだが、感想が書けないな〜
面白いものもたくさんあったから書きたいんだけど、時間がとれない。

Op.ローズダストとか〜、ユニコーンも今読んでる。
ローズダストの「一晩で七割と三割がひっくり返る国」のくだりとかいろいろと思うこともあるし、すごい書きたいけどな〜。
ただ、読んで結構経ってしまったから、気合入った感想を書こうと思ったらもう一回読まなきゃだ。
福井晴敏で手を抜いて書くわけにはいかんし

というわけで、近況報告でした。



Edit / 2009.10.19 / Comment: 0 / TrackBack: 0 / PageTop↑
逆境戦隊バツ[×]
カテゴリ: 坂本康宏 / テーマ: 感想 / ジャンル: 小説・文学

ただ、愛のために


第六十三回。
坂本康宏の『逆境戦隊バツ[×]』

戦隊ヒーローものである。
レッドはもてないちびのオタク。
ピンクはSMクラブの女王様。
イエローはEDのデブだ。
あんまりといえばあんまりなヒーローだが、それもそのはず、彼らはその心の中のコンプレックスを力に変えて戦うのだ。

ここまで聞いて、ライトタッチのコメディーだと思われる方もいるだろうか。
実際、前半はそんな感じだ。
しかしその正体は、大人向けのハードな熱血戦隊ヒーローなのだ。

戦隊ヒーローもののお約束はきっちり抑えてきている。
ちょっとダサい必殺技のネーミング。
敵か味方か謎のブラック。
そしてラスボスも……、定番だろう。
でもそれがいいのだ。
奇をてらうばかりがいいわけじゃない。

いやー、本当に子供のころに見たヒーローを思い出して懐かしくなった。
ダイレンジャーとかジュウレンジャーとかその辺の世代だ。
クライマックスは胸が熱くなることうけおいだ。

また、挿絵もいい。
あまり小説に挿絵があるのは好きじゃないが、これはいい。
すごく渋い。
おっさんの描写がいいんだな〜。

ちなみに、主人公達は、最初こそ金のために戦うが、その目的は家族、愛する人を守るために変わっていく。
うん、ヒーローの鑑だ。
ヒーローが戦う理由はいつだってただ一つだ。
――ただ、愛のために。



評価:A+



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Edit / 2009.08.02 / Comment: 1 / TrackBack: 0 / PageTop↑
プロフィール

gaker

Author:gaker
福井晴敏と本多孝好が好きです。大好きです。
もう家に本を置く場所がありません。

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2008 11/13(木)開設

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